599.2023年度の重要な制度改正事項

2023年1月8日

新年あけましておめでとうございます。

さて、新年2023年(令和5年)からは、経営に影響を与えそうな制度改正が目白押しとなります。

2023年最初の『企業経営コラム』はそんな重要な制度改正を日付順に追って紹介します。

 

1 今年2023年(令和5年)4月1日  中小企業に対する『時間外割増率猶予措置』が廃止される

 『働き方改革』の一環で2023年4月1日から月間60時間を超える時間外労働での法定割増賃金率が

 「50%以上」へ引き上げられます。

 ここでいう「時間外労働」とは、会社で定める所定労働時間ではなく、『法定労働時間』を超えるものです。

 この割増賃金率の引き上げは大企業ではすでに2010年から適用されていますが、

 中小企業は適用が猶予されていて、これまで「25%」に据え置きされていました。

 それがいよいよ今年4月1日から、その猶予期間が終わり、中小企業にも「50%以上」が適用されることになります。

 

 そうなると残業手当が一挙に増えることになり、ますます中小企業の経営を圧迫します。 

 したがって、基本給をアップするなどをして従業員士気を高めるとともに、作業効率を上げ、

 「月間60時間を超える時間外労働」を抑える工夫などが求められてきます。

 

 

2 今年2023年(令和5年)10月1日 『インボイス制度』が始まる

 インボイス制度の施行は、2023年最大の制度改正といっていいものです。

 その対応そのものも大事ですが、私たちにとってはどれほどの大きな影響をもたらすのか、

 いろいろ想像することはできても、予測することはできません。

 したがって、「経営態勢」を含めて準備する必要があります。

 

 なお、インボイスとは『適格請求書』と呼ばれる形式の請求書であり、

 売手が買手に対して正確な「適用税率」や「消費税額等」を伝えるものです。

 具体的には現行の「区分記載請求書」に、「登録番号」「適用税率」及び「消費税額等」の記載が必要となります。

 さらに売手である「登録事業者」は、買手である取引相手から求められたときにはインボイスを交付しなければなりませんので

 交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります。

 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、取引相手である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要となります。

 

 中小零細事業者にとって大事なことは、登録事業者になるのか、ならないのかという決断です。

 長い目で見れば登録事業者にならないと、B2B取引からは弾かれることになると思われます。

 なお、10月1日から「登録事業者」になるためは、本年度の3月31日までに所轄税務署へ登録申請が必要となります。

 

 

3 来年2024年(令和6年)1月1日 『電子保存』の義務化が開始される

 昨年2022年1月に改正された『電子帳簿保存法』ですが、

 2年間の電子保存猶予期間が終わり、来年2024年から義務化されます。

 その注意点は以下のとおりです。

 ①手書き帳簿は対象外

  手書きとは、たとえパソコンで作成したものであっても「手書きの追記」があれば、手書きとなります。

  よって、電子保存はできません。

 ②スキャン

  スキャンは「カラースキャン」であることと「現物大」であることが必須です。

  縮小スキャンしたものは電子保存はできません。

 ③紙の保存が必要になる場合

  上記の①②の書類や古い書類は、紙の原本で保存する必要があります。

 ④保存期間

  保存期間は「7年間」です。

  ただし、その間にデータ破損やパソコンクラッシュなどの可能性がありますので、復旧対策が必要です。

 

 

4 来年2024年(令和6年)10月1日 『社会保険の適用』が再拡大される

 社会保険の適用拡大は経営に大変大きな影響を与えます。

 来年2024年10月に改正予定の「加入条件」は以下のとおりです。

  1.従業員数が常時「51人」以上である事業所

  2.週の所定労働時間が「20時間」以上である従業員

  3.雇用期間が「2か月」を超えて見込まれる従業員

  4.賃金の月額が「88,000円」以上である従業員

  5.学生ではない(一部例外もあり)従業員

 昨年2022年10月に、従業員数は101人以上に改正されたばかりですが、来年には「51人以上」までに拡大されます。

 こうなってくると多くの中小企業者でも該当することになり、「法定福利費」の急増が見込まれます。

 したがって、いまから抜本的な経営改革が必要となります。

 

そのほかにも、日銀総裁交代による金融政策の転換や岸田総理は軍事費倍増を増税で賄おうと考えているという報道もあり、

ここ数年は厳しい経営環境が続くと思われますので、負けない経営をして行きましょう。

 

  2023年は「兎年」です。

  ウサギは跳ねる特徴があるため、景気が上向きに跳ねる、回復すると言われているそうですが、

  過去を振り返ると、2011年には東日本大震災、1999年には金融機関の再編成、1987年には地価の異常高騰など、

  どちらかといえば「飛び跳ねる」よりは「暴れまくる」という感じの多難な年であったように思います。

  今年がどのような一年となるのか、法改正などから見れば今年の兎年も多難な一年になるような予感もしますが、

  しっかり備えて、まずは守りを固めたいものです。