605.収益改善 売上を増やす
2023年2月18日
これまでをまとめると、収益改善に取りかかる前に次の条件整備をする必要があるということでした。
1.『マズローの法則』を参考にして社員の士気を高める。
2.高めた士気をより効果的に発揮させるために『選択と集中』を考える。
3.その選択を考える上では『パレート分析』を活用する。
マズロー・選択と集中・パレートによって全員のやる気を高め、資源の再分配を行い、それらを集中させるターゲットを決めます。
また、収益改善のための具体策も3つの面から考えられました。
1.資金の源泉ともいえる『売上高』を増やす。
2.自社の付加価値である『粗利益』を増やす。
3.次期の資金源泉である『繰越利益』を増やす。
今回はその中で「売上高の拡大策」について考えてます。
1 売上高は「既存売上高」と「新規売上高」に分けて考える
事業にはいろいろな業種業態がありますが、いずれの場合においても「既存売上高」と「新規売上高」というものがあります。
1.既存売上高とは、これまで上げてきた継続的な売上高のことであり、減らさないことがポイントです。
2.新規売上高とは、これまでにはなかった売上高のことであり、計画した通りに増やすことがポイントです。
※したがって「売上高計画」が必要なことはいうまでもありません。
では、どのように考え、それを実現すればよいのでしょうか。
2 「既存売上高」の維持・拡大政策
既存売上高とは「これまでの顧客に、従来の商品やサービスを継続的に販売する」ということです。
しかしともすれば、顧客は同業他社へ移ったり、廃業したりすることもありますので、
昨年までの売上高が見込めるとは限りません。
また逆に、新たな提案(価値付け)を行い、これまで以上の取引額になる場合もあります。
既存売上高は、同業他社へ移ることなく、常に新たな提案を行い、これまで以上の取引高になるように努力することが
ポイントです。
既存顧客にも常に新たな提案を行うことが大切です!
そのためにはどうすればよいのでしょうか?
大切なことは、「例年通りの売上は見込めるから」と高を括って既存顧客に何も働きかけをしないのではなく、
常に働きかけ、お客様へ当社は常にあなたのことを考えていますという想いを伝える姿勢です。
そこで、それを実行するために大切なことは、すべての既存顧客に同じように働きかけようとするのではなく、
ここでも『選択と集中』を行うことです。
「すべての既存顧客に同じように働きかける」ということは、すごくいいように聞こえますが、
言い換えると、単に訪問活動を繰り返しているだけで、実は何もお客様のことを考えていないということの裏返しなのです。
すべてのお客様に同じことを行うことは思考省略です!
では、「働きかける」とはどういうことなのでしょうか?
1.まず、それなりにそのお客様のための事前準備が必要です。
2.そして、訪問にもそれなりに時間をかけなくてはなりません。
言いかえると、お客様に時間を取っていただける活動になっていないと、
それはお客様にとって価値ある活動になっていないということの証です。
3.訪問後も事後活動をしなくてはなりません。
事後活動をしないということは、やりっぱなしと同じです。
このように「働きかける」とは、一人のお客様に相当の時間をかけることですので、だから『選択と集中』が大切なのです。
既存顧客に対する働きかけはそれ相当の時間をかけないと働きかけにはなりません!
そのことをアンゾフという経営学者は『商品・市場戦略』という戦略論の中で「市場浸透戦略」と言っています。
「市場浸透戦略」とは、
1.いまの市場で 2.従来の商品やサービスを 3.さらに浸透させ 4.既存売上高を伸ばす 考え方です。
これが売上を増やす基本となる考え方です。
現在の顧客の売上が増やせないのに、新しい商品やサービスを提供したり、新しい顧客を創造したりすることはできません。
だからこそ、同じ商品やサービスであっても常に新しい捉え方などを提案し、これまで以上に取引を伸ばす努力をすることが
大切なのです。
そうした活動の中で、さらに次の商品やサービスのアイデアも具現化され出し、「新商品・新サービス」につながって行きます。
売上高を増やす一番の基本は
「市場浸透戦略」によって前年維持あるいは前年数%程度の売上高を伸ばすことです!
3 新規売上高の拡大政策
もうおわかりかと思いますが、新規売上高を増やす方法は既存売上高の維持・拡大政策と連動しています。
新商品・新サービスのアイデアは、確かに突然湧き出ることもあるかもわかりませんが、
一番確実にアイデアが浮かぶ方法は、それまでの商品・サービスの工夫の積み重ね、その中でインスパイアするものなのです。
既存顧客との取引を維持あるいは拡大するためには同じことを繰り返しているだけではダメということは、誰でもわかります。
しかし、このことを頭の中だけではなく、体を動かして表に出して活動している企業は非常に少なくなります。
ほとんどの企業は「そんなことは当たり前」と思うだけで、実際には具体的な行動は起こしていません。
こんな当たり前である活動が、「新規売上高の拡大」となって姿を現わしてくるのです。
大切なことは頭の中で思い描くことではなく、行動を起こすことです!
アンゾフはこのことを『新商品開発戦略』と言っています。
新商品開発戦略とは、市場浸透戦略を通じて発想を得たアイデアをもとにして、これまでの顧客・客層などに対して、
新しい商品・サービスを提供することです。
だから市場浸透戦略が大事であり、基本戦略となるという意味です。
「新商品開発戦略」は市場浸透戦略の延長線上にある!
新規売上高の拡大政策にはもう一つの考え方があります。
それは、新しい得意先や客層を開拓するということです。
これはこれまで提供している商品・サービスや新商品・サービスで、新しい顧客や客層を開拓しょうとする考え方です。
前者が「商品」にスポットをあてた考え方ならば、後者は「市場」にスポットをあてた考え方です。
市場浸透戦略によって行った新たな提案で顧客を拡げるアイデアにつなげ、さらに新商品開発戦略で開発した商品・サービスを
新しい得意先・新しい客層を開拓するツールに発展させようということです。
商品・サービスに対する新たな提案と新商品・サービスが新規顧客・新規客層開拓につながる!
アンゾフはこのことを『新市場開拓戦略』と言っています。
新市場開拓戦略とは、むやみに新市場に突撃することではなく、これまでの実績にチョットした味付けを変え、
さらに新しく開発した商品・サービスも融合して、新しい顧客・新しい客層を開拓するという考え方です。
したがって、ここでもベースは市場浸透戦略が基本となっています。
「新市場開拓戦略」も市場浸透戦略の延長線上にある!
3 多角化経営
多角化経営とは、事業部制や分社により、新しい商品をもって新市場に取り組む経営のことを言います。
つまり、新商品開発や新市場開拓の発展系という言い方ができます。
ここでのポイントは事業部制や分社に関わらず、資金を別管理するにするということです。
本業が原因か分社が原因かわかりませんが、それによる経営の失敗事例は多く存在します。
その原因の多くが資金管理をごちゃ混ぜにしているために、足を引っ張っている状況に気付くのが遅れ、
気付いた時にはもう手遅れになってしまっているということです。
したがって、早い判断ができるためにも、資金管理は別々に管理することが大事です。
アンゾフはこのことにも触れており『多角化戦略』と言っています。
多角化戦略とは、商品・市場戦略が成功した証とも言えなくはありませんが、
それだけ組織も大きくなり、判断も一人では出来なくなりますので、リスクもそれだけ多く持つとも言えます。
したがって、多角化戦略には経営手腕も問われることになります。
「多角化戦略」は成功の証でもあるが、数段上の経営力も問われます!