607.収益改善 繰越利益を増やす

2023年3月12日

改訂:2023.03.18

収益を改善するためにはその前の条件整備として、次のことをする必要があります。

 1.マズローの法則等を参考にして、社員の士気を高める工夫

 2.選択と集中を考え直し、その高めた士気をより効果的に発揮させる状況を作る

 3.パレート分析などを活用し、選択すべき顧客・客層・商品などを考える。

マズローの法則と選択と集中、パレートによって全員のやる気を高め、経営資源の再分配を行い、それらを集中させる対象を

決めることが大切です。

また、収益改善策の具体策についても、次の3つの観点から考え、それらを組合わせして実行することが大切です。

 1.資金の源泉ともいえる「売上高」を増やすには?

 2.自社の付加価値である「粗利益」を増やすには?

 3.次期の資金源泉である「繰越利益」を増やすには?

今回は、その3番目である「繰越利益の拡大政策」について考えてみましょう。

 

1 繰越利益を増やすとは

「繰越利益を増やす」とは、言い換えると、次期の事業資金を増やすということです。

いまある事業資金とは、手元資金である現金と預金です。

仮にこれが1000万円あるならば、今期の営業活動でさらに利益を出し、当初あった1000万円に加わるということです。

逆にもしこれがが赤字で500万円の経常損失を出したなら、次期の事業資金は「1000万円ー500万円」となり、

500万円に減るということです。

必要となる事業資金は、たとえ設備投資をしなくても、必ず毎年多くなっていきます。

何故なら、原材料や経費は基本的に毎年上がりますし、また人件費も毎年増やさなければならないからです。

報道を聞いていると、コストが上がったり、人件費が上がったりすることが、何か特別なことであるような錯覚に陥りますが、

ごく当たり前のことなのです。

特に人件費は、家族構成の変化や教育費の高騰化、そして長寿化などによって、まずます上げなければなりません。

人件費が上げられないと職場の士気は下がり、余計に儲けられない経営体質になり、さらに従業員の離反という形で現れます。

繰越利益は人件費をアップさせるためにも経費アップに備えるためにも増収させること基本!

 

 

2 繰越利益を増やすには

繰越利益を増やすためには現在の粗利益を前提に考えるならば、人件費を上げても、それ以上のそれ以外の経費を下げて

繰越利益を増やすしかありません。

したがって、人件費以外の経費を下げて繰越利益を増やすには限界があります。

経費を下げて繰越利益を増やす考え方にはすぐ限界が来る!

 

逆に人件費を上げることによって従業員のプライドが高くなり、職場の士気も上がり、さらに従業員の成長意欲にもつながります

ので、生産性の向上と付加価値の向上という形で現れることが期待できます。

人件費アップは生産性向上(人のやる気)と付加価値向上(人の成長)という形で現れてくる!

 

問題はどうやって経費を抑えるかであり、どうやってやる気と成長を促すかです。

 

 

3 経費を抑え続けるには

経費の削減には限界はありますが、大切なことは削減した後もなるべく増えないようにするということです。

その要諦は目標を「行動」に置き換えることと、「競争」意識を活用するということです。

 

「では、今期から経費節減に努めてください!」では、なかなか経費は削減できません。

そこからさらに一歩推し進め、それ(経費節減)がどのような行動をすれば、結果経費節減につながるかを考えることです。

そしてその行動を目標にします。

例えば「コピーを減らしましょう」ではなく、外部に出さないものは「裏紙を使いましょう」とか、コピーカウンターを課ごとに

配布し課ごとの使用量がわかるようにする、などです。

 

競争意識を活用するとは、そのコピーカウンターの数値を折れ線グラフにして、課ごとに使用状況に競争意識を持たせるとか、

交際費については個人別のランク表を作成するとか、ガソリンの使用状況を営業車ごとにランク表にするとか、いろいろな競争意識

をちょっと遊び心も取り入れて行うことが大切です。

 

そうするとコスト意識が浸透し、その削減分は人件費や利益に回せるようになります。

 

 

4 やる気と成長意欲を促すためには

無限に繰越利益を増やす方法は、従業員のやる気と成長意欲を促し、生産性の向上と付加価値の向上に結び付けることです。

まず生産性の向上と付加価値の向上という芽を発芽させるためには「後出しじゃんけん」は避けることです。

一般的に「今期〇〇になったら給与(賞与)を上げます」という会社が多いように思いますが、

まず最初に経営サイドの本気度を示すためにも、たとえ少額でも昇給から始めることです。

それによって幾人かの従業員かもわかりませんが、やる気を芽生えさせてくれます。

その財源は、経費削減・在庫の圧縮・固定資産の処分あるいは役員報酬などです。

自分の身を切り本気度を示すことも大事です!

 

次に生産性の向上と付加価値の向上の道すじを描き、それを示すことが大切です。

生産性の向上と付加価値の向上の道すじとは、すなわち「経営計画」の策定です。

道すじを示すことによってどこが間違っているのかもハッキリわかるようになります。

間違いがわかれば是正することも可能になります。

生産性の向上と付加価値の向上には経営計画の策定が大事!

 

さらにマネジメントも向上させなくてはなりません。

少なくとも労働分配率はしっかりとらえ、しっかりとらえるためには一元的な労働分配率ではなく、

組織に応じた役員労働分配率、管理職労働分配率、一般社員労働分配率、非正規社員労働分配率などを抑えなくてはなりません。

労働分配率の管理は階層ごとに行い実情を知る!

 

そうすることによって経営の透明性が高まり、やがてやる気と成長意欲に満ちた組織となります。

そしてそれが生産性の向上と付加価値の向上の組織のスタート地点につながります。