611.インボイス登録要否の検討
2023年4月15日
再更新:2023.04.23
『インボイス制度』開始まであと6カ月となりました。
当初はこの3月末までにインボイス登録申請をしないと10月からのインボイス発行事業者にはなれないとされていましたが、
登録申請状況を鑑みて直前の9月30日までに申請すれば、10月1日からインボイス発行事業者に見なすとなりました。
しかし取引先に迷惑をかけないようにするためには、なるべく早く登録申請するに越したことはなさそうです。
インボイス登録はするならば、なるべく早く申請しましょう!
2月末現在、インボイス事業者登録件数は240万件。
課税事業者数は315万件と言われていますが、その約76%が登録を済ませていることになります。
あと75万件ほどの課税事業者の登録も問題ですが、本当の問題は180万件とも言われている免税事業者の登録申請です。
そこでインボイス制度に登録申請しなければどうなるのかを考えたいと思います。
1 インボイス発行事業者にならないと相手取引先企業の仕入れ税額控除ができなくなる
インボイス発行事業としての登録申請をしなければ、相手取引先企業は仕入れ税額控除ができなくなります。
たとえば、課税事業者の仕入れ先から60万円(税込66万円)仕入れ、100万円(税込110万円)で売ったとします。
すると、消費税納付額は「仮受消費税10万円-仮払消費税6万円」で「4万円」となります。
また、損益は「売上100万円(税抜)ー仕入れ60万円(税抜)」で「40万円」となります。
これが免税事業者からの仕入れであったなら
消費税納付額は仕入れ税額控除ができません。なので「仮受消費税10万円ー仮払消費税0円」で「10万円」となり、
損益も「売上100万円(税抜)ー仕入れ66万円」で34万円となります。
つまり、仕入れ税額控除ができない分が利益として減り、その分が納付額として増えることになります。
免税事業者からの仕入れは
課税事業者にとって仕入れ税額控除分利益が減り、その分「利益」が減額する!
この救済措置として、6年間の経過措置期間が存在しますが、それを取引先企業が受け入れてくれるかという問題があります。
何故なら、そのために取引先企業の事務量が増えることになるからです。
経過措置があっても取引先企業の事務は増えるので受け入れられるかどうかわからない!
2 免税事業者であることが取引先企業にハッキリわかる
次の問題点は、免税事業者であることが取引先企業にハッキリわかってしまうことになるということです。
いままでは自社が課税事業者なのか免税事業者なのかは不明でした。
しかし、10月以降はインボイス発行事業者の請求書には「登録番号」が記載されていますので、
そうでない事業者の場合は請求書に「登録番号」の記載がないため、ハッキリと免税事業者であることがわかることになります。
それによって取引先企業からどう思われるか不安があります。
もしあなたが「ここはインボイス発行事業者ではないのか」と思うと同じようなことを相手取引先に思われるということです。
免税事業者からの請求書には「登録番号」の記載がないので
ハッキリと年商1千万円以下であることが判明する!
3 インボイス発行事業者になるということは課税事業者になる
3番目の問題は、インボイス発行事業者と課税事業者とは連動しているということです。
たとえ売上が1000万円以下であってもインボイス事業者になれば、消費税は納付しなければなりません。
一般的に小規模零細企業の経営は「苦しい」と言われ、現に赤字経営も多いようですが、
インボイス事業者になることによってますます経営が厳しくなるのかもわかりません。
しかしそれは、本来、別問題なのです。
消費税を納付するから経営が苦しくなっているのではなく、
もともと経営状態が苦しく、「消費税によって少し潤っていた」という表現が正しい表現です。
消費税納付分は顧客から受け取っているわけですから、消費税が経営状況を苦しくしているわけではありません。
そう本質を理解すると、問題はいまの経営そのものにあるわけです。
つまり、この「インボイス制度」の開始は、われわれ中小企業に対して経営の改革を行うことを促しているとも捉えられます。
インボイス制度は中小企業に対して経営の改革を促すことになる!
消費税は本来、消費者に成り代わって事業者が消費税を納付する仕組みです。
もうそろそろ、益税とかなんとか考えず、消費者から預かっている消費税は納付するという考え方に
発想を切り替える時期に来ていると考えるべきなのではないのでしょうか。