626.会計の基本『簿記』⑥

2023年9月8日

■前回の復習

 前回はP/Lの読み方を紹介しました。

そのポイントは、P/Lで表されている「資金源泉」である売上高と「資金使途」である費用を比較するということでした。

そうすると、

①各構成比を円単位に置き換えて読むと、自社の収益構造が肌感で感じられる

②売上を上げるために使った費用をその使途目的別に見ると、P/Lのどこに問題があるのかわかる

③売上から限界利益までは『市場商品戦略』を表し、売上や粗利が伸びないのは『市場商品戦略』に問題がある

④限界利益から経常利益までは『業績管理』を表し、経常利益が伸びないのは『業績管理』の仕方に問題がある

⑤さらにP/Lのチェックポイントは

 1.継続売上高と新規売上高に分けて状況を知る

 2.直接原価と直接原価率の状況を知る

 3.限界利益の額と限界利益率を知る

 4.人件費は従業員人件費を中心に改善を探る

 5.処分可能利益の額と可処分利益率を知る

 6.処分可能利益後の経費は販売費と管理費に分けて、経費の執行状況を管理する

というものでした。

今回からはいよいよ本題の「簿記」について考えてみましょう。

 

 

第6講 簿記 現金・預金編

 まずは、簿記とは「自社の経営状況を正しく把握するための会計ルールである」ことを認識しましょう。

簿記とは自社の経営状況を正しく知るための会計ルール!

そのためには、ただ決算・申告のために、売上と費用と利益が把握できればよいという考え方を捨てて、

「経営状況の把握するために、ある程度、細分化して会計を行う」という考え方を持つことが大事です。

これが「経営に役立つ会計」の大きなポイントです。

会計は売上と費用を分ければよいというものだけではなく、ある程度細分化する必要がある!

 

(1)現金

 現金とは、少し大上段から見れば、資金運用の一形態です。

ですから、増加する場合は借方(左)、減少する場合は貸方(右)となります。

①現金が増加する場合の仕訳例

 借方:現金 / 貸方:流動資産(預金など)         例:預金口座から現金を引き出した

②現金が減少する場合の仕訳例

 借方:流動負債(未払費用、預り金など) / 貸方:現金   例:未払であった費用を現金で支払った、

                                 預りであった社会保険料や源泉税を現金で支払った

 借方:経費(事務用消耗品費、交際費など)/ 貸方:現金   例:事務用品を現金で購入した、手土産を現金で購入した

                                     ※この仕訳には『仮払消費税』が発生します。 

 現金に関する仕訳は身近ですから簡単だと思います。

しかし大事なことは「あまり多額の現金は手元に置いておかない」ということです。

多額の現金を手元に置いておくと、つい冗費が増えたり、公私混同になったり、また防犯上の問題にもつながります。

多額の現金は手元に置かない!

 

(2)預金

 預金も資金運用の一形態ですから、増加する場合は借方(左)、減少する場合は貸方(右)となります。

①預金が増加する場合の仕訳例

 借方:預金 / 貸方:流動資産(現金、売掛金など)  例:手元の現金が多くなったので預金に預けた、

                              売掛金が預金口座に振り込まれた

 借方:預金 / 貸方:流動負債(短期借入金など)   例:短期借入の融資が通り、預金口座に振り込まれた

 借方:預金 / 貸方:固定負債(長期借入金など)   例:設備購入のために長期借入の融資が通って口座に振り込まれた

②預金が減少する場合の仕訳例

 借方:流動負債(買掛金、短期借入など)/ 貸方:預金 例:買掛金を銀行振込で支払った、

                              短期借入返済を口座引落で支払った

 借方:経費(水道光熱費など)     / 貸方:現金 例:電気・ガス・水道代を口座引落で支払った

                                  ※この仕訳には『仮払消費税』が発生します。 

 預金に関する仕訳も身近ですから簡単だと思います。

しかし、経営状況や見通しを知るためには、チョットした工夫が必要となります。

それは「内訳管理をする」ことです。

 預金の内訳管理をするといえば、複数行に口座を開設している場合にそれぞれの銀行別に管理することを思い浮かべられるかも

わかりませんが、ここでの内訳管理はそういうことではなく、それぞれの銀行口座別に「使途目的別」の内訳管理をすることです。

例えば、次のようなイメージです。

 A銀行       合計残高300万円

  内訳:運転資金      100万円

     賞与資金      100万円

     設備資金      100万円

 B銀行       合計残高200万円

  内訳:消費税納付資金   150万円

     法人税納付資金    50万円

このように、あらかじめ必要な賞与資金、設備資金、消費税納付資金、法人税納付資金などの使途目的別に必要額を決めておき、

その額に達するまではその内訳に振替えて、あと残りを運転資金に振替えるようにします。

そうすると、実際の資金繰りが全然足りていないことがわかり、より堅実な資金繰り経営ができるようになります。

預金科目については預金残高を使途目的別に内訳管理することがポイント!

 

 また、目標とすべき『手元資金保有額』は「年商」程度を目標として考えましょう。

書籍を読むと月商3カ月分程度は持つようになどと解説されていますが、3か月分なんてアッという間に消えてしまいます。

そのことはコロナ禍の中で、多くの企業が学んだはずです。

いま、多くの大企業あるいは優良企業は、すでにそのようなマネジメントを実施しています。

私たちはそれらの企業よりもずっと財務基盤が脆弱なのですから、せめて目標として年商程度の手元資金を目標に経営すべきだと

思います。

手元資金の保有高目標は『年商分の資金を持つ』ということです!