627.会計の基本『簿記』⑦
2023年9月15日
■前回の復習
前回から簿記の話に入り、その第1回目として『現金』と『預金』について説明しました。
現金も預金も身近な勘定科目ですので、簿記的にはそんな難しい話ではないと思います。
しかし、気をつけなければならい点もいくつかありました。
①現金は「手元に多く置いておかない!」 多くなった場合は銀行に預ける習慣を身につける。
②預金は「使途目的別に内訳管理を行うことが重要!」 それによって資金繰りの厳しさを敏感に感じながら経営ができる。
③手元資金有り高の目標は売上2~3カ月分ではなく「1年程度を目標に現預金を蓄える!」 それが経営の安全性につながる。
このような考え方の会計を『管理会計』と呼び、経理事務を経営管理業務へ飛躍させる!
そうすると、会計事務所などに頼り切った経理姿勢から、自立した経理姿勢に変わり、経営に資する会計に変わります。
今回は『売上債権』に関する「簿記」について、考えてみましょう。
第7講 簿記 売上債権編
『売上債権』とは、企業間取引において代金決済を繰延べる取引形態によって発生する「売上にかかる債権」のことをいいます。
そのような取引を「掛取引」といいますが、掛取引においてはしっかりと債権を回収する姿勢が大事です。
掛取引はしっかり債権を回収する姿勢が大事!
つまり、売上債権は、商品やサービスを販売した際に得た対価である売上代金が、『未回収』であることを表しており、
決して財産とは違いますので、勘違いしないことが大切です。
また、売上債権には、『売掛金』『受取手形』『電子債権』などの種類があります。
①『売掛金』とは、掛取引の段階では売上代金が回収されていませんので、売掛金という売上債権として資産計上します。
②『受取手形』とは、決済日が予め記載されていますので、決済日に自ら銀行に取立て依頼をしなければなりません。
仮に、決済日を過ぎて3営業日が過ぎてしまうと取り立てができなくなりますので、注意が必要です。
受取手形は決済日から3営業日を過ぎると取り立てができなくなるので要注意!
しかし、代金を約束手形で回収するという商慣行は古い慣行であり、極力、受取手形では回収しないようにするべきです。
③最近は債権も電子化が進んでおり、約束手形に代わってファクタリング債券のような「電子記録債権決済」も浸透しています。
なお、売上債権は何度も言いますが、現預金化するまでは「資金」ではありませんので、回収方法や期日については慎重に検討する
必要があります。
売上債権の回収方法としては「現金回収」「銀行口座振込回収」「受取手形回収」「電子記録債権回収」などがありますが、
私たちは基本的には、「銀行口座振り込みによる回収」にすべきかと思います。
また、よく耳にする『売上債権回転率』とは、売上高に対する売上債権がどれくらい早く回収されているかを示す目安ですので、
基本は売上債権回転率は高ければ高いほど良く、この回転率の良し悪しが『資金繰り』に直結します。
売上債権の回収の速さが資金繰りの良し悪しに直結する!
(1)売上債権の仕訳
基本的には次のような流れとなります。
①掛で売り上げた
借方:売掛金 / 貸方:売上高 ←この仕訳には『仮受消費税』が発生します。
A得意先 A得意先
新規売上
ポイントは、売掛金は得意先別に集計し、売上高も得意先別に集計するとともに、既存売上か新規売上か集計させることです。
②口座振込があった
借方:預金 / 貸方:売掛金
運転資金 A得意先
この仕訳によって、A得意先の売掛金は消込され、資金使途目的のいずれかの預金内訳項目(注)に入金されることになります。
注:資金使途目的の預金内訳項目が不明の方は、前回のコラムを参照してください。
②’受取手形で回収し、決済日に取り立てた
借方:受取手形 / 貸方:売掛金
A得意先 A得意先
この仕訳によって、A得意先の売掛金は消込され、受取手形にA得意先の残高が移動します。
借方:預金 / 貸方:受取手形
運転資金 A得意先
この仕訳によって、A得意先の受取手形は消込され、資金使途目的のいずれかの預金内訳項目に入金されることになります。
このように受取手形を利用すると、掛売した売上債権の資金化が大きく遅れることとなります。
そのために多く企業ではすぐに割引し資金化するとともに、余計な『割引手数料』を支払っています。
そんな余計なコストをなくし、資金化を早めるためにも受取手形は相手先と交渉して使わないようにします。
(2)売上債権管理の仕方
経営者の中には売上債権が多くあると、安心される方がおられます。
確かに『売上債権』が多くあれば、資金化できる資産が多くあるとも考えられますので、その考え方にも一理はあります。
しかし、売上債権の残高は各企業によって決まっているのです。
あるべき売上債権の残高は各企業によって決まっている!
例えば、掛売りを翌月回収する企業であれば、理屈的には、月末には当月売上高とイコール分の売掛金残高しかありません。
これ以上の売掛金残高がある場合は、それは「未回収の売掛金がある!」と考えられます。
未回収の売掛金は放置しておくと、必ず不良債権の元になります。
したがって、売掛金残高には「限度額が各企業ごとにある」ということであり、決してそれ以上多くなることはありません。
このことは受取手形で回収している場合も同じです。
売上は翌月に請求し、その翌月末に受取手形で回収し、その受取手形決済期日が3カ月後という場合でも、
月末には、売掛金は当月売上高分、受取手形にはその前の3カ月売上高分しかないということになります。
売上債権には限度額がある!
そこで月末にはざっくりと売掛金と受取手形をそれぞれ平均月商と比べれば、そのことがチェックできます。
その結果が上記の場合であれば、売掛金は約1カ月分、受取手形が約3カ月分となります。
そのことを『売掛金回収サイト(回転率)』『受取手形回収サイト(回転率)』を呼び、平均月商の何カ月分あるのかを示します。
毎月、月末には売掛金と受取手形の回収サイトを確認しよう!