630.会計の基本『簿記』⑩

2023年10月14日

■前回の復習

 前回は固定資産、それも「リーズ資産」の簿記について、説明しました。

コピー機などのリースについては、通常とおり「費用科目:リース料/資産科目:預金」という仕訳でよいのですが、

殊、固定資産のリースについてはそうもいきません。なぜなら、生産性分析や資金使途分析に影響してくるからでした。

その基本は以下のとおりでした。

①リースで固定資産を取得したときは、「資産科目:リース資産/負債科目:リース債務」で計上する。

②そのリース料を支払ったときは、「負債科目:リース債務/資産科目:預金」でリース債務を減額させる。

 同時に支払う利息については、「費用科目:支払利恵測/資産科目:預金」で処理をする。

 さらに減価償却は、「費用科目:減価償却費/資産科目:減価償却累計額」で計上する。

③決算の時には、「資産科目:減価償却累計額/費用科目:減価償却費」でいったん戻し、

 「費用科目:減価償却費/資産科目:リース資産」でリース資産を減価償却費分、減算する。

こうすることで、固定資産の生産性分析や入替時期の検討や資金使途分析に資する会計となります。

このような考え方の会計を『管理会計』と呼び、経理事務を経営管理業務へ飛躍させます!

 

そうすると、会計事務所などに頼り切った経理姿勢から、自立した経理姿勢に変わり、経営に資する会計に変わります。

 今回は『負債』に関する「簿記」について、考えてみましょう。

 

 

第10講 簿記 負債編

(1)負債は流動と固定としっかり分けることが大切

 『負債』というと、すぐ借金を連想しますのでイメージが悪いですが、しかし『負債』はなくてはならない事業資金の一つです。

使い方によって、事業をサポートしてくれる「資金調達」なのです。

 その負債は、返済期間によって、『流動負債』と『固定負債』に分かれます。

その分ける責任は企業自身にあるわけですから、経理担当は厳格に返済期間によって、調達した資金が流動負債か固定負債か、

ジャッチしなければなりません。

 これを決算や申告ではどちらでも影響はないので、適当にしても良いと考えるならば、それは程度の低い税務会計レベルの

経理になってしまいます。

会計は決算や申告のためにするものではなく、経営のためにするものなのですから、本末転倒となります。

負債は流動負債と固定負債をしっかりジャッチすることが大切です!

 

(2)しっかり分けるとおのずと使い方が見えてくる

 上記のように返済の期間によってしっかり、流動負債と固定負債に分けると、自ずと気がついてくることがあります。

それは調達している資金によって、ゆっくり返済できるおカネと急いで返済しなければならないおカネがあるということです。

 つまり、ゆっくり返済できるおカネは長く運用してもよいし、急いで返済しなければならないおカネはそんなものに運用しては

いけないということです。

 このことに気がついてくると、会計資料を読む力がグ~ンとついてきます。

つまり、流動負債は必ず流動資産、もっと言えば当座資産に運用すべきと読めるようになり、

また、固定資産は必ず、自己資本と固定負債の中で運用されていなければならないと気づくようになります。

このことを「経営の鉄則」として認識し、堅持できるようになると、事業は安定した経営に移行できるようになります。

「流動負債は当座資産で運用し、固定資産は自己資本と固定負債内で運用する」

これが経営の鉄則!

 

(3)負債は正直である

 売上債権や棚卸資産は結果的に不良債権や不良在庫が残ることになり、それが粉飾にも結び付くという性質がありましたが、

負債はその意味で、非常に正確な性質を持っている債務です。

 つまり、帳簿以上の負債もなく、帳簿以下の負債もありません。

したがって、負債の中でも流動負債は近く返済期限が訪れますので、流動負債以上の現預金あるいは現預金同等物があれば、

その企業は資金が回っていくことになります。

ということから、常に、現預金と現預金同等物の合計(当座資産)が流動負債以上にあることを確認していれば、

企業経営は続けれることになります。

ただし、実際にはその他に給与等、人件費が必要ですので、プラス人件費を加味して判断することが大事です。

当座資産が常に流動負債+人件費以上あれば企業経営は続く!

 

(4)負債の仕訳

 負債は増えるときには右の貸方、減るときは左の借方ですから、仕訳自体は簡単です。

たとえは、掛けで仕入れた場合・・

 買掛金という負債が増えますので、右の貸方に『買掛金』です。

 では、左の借方は何かといえば、商品を仕入れた場合であれば、左の借方は『商品仕入』となります。

 つまり、費用科目:商品仕入 30万円 /負債科目:買掛金  30万円

そして翌月、その買掛金を支払ったとします。すると

 すると、負債科目:買掛金  30万円 /資産科目:預金   30万円

こうして買掛金は増減を繰り返すわけです。

もちろん実際の時は、買掛金は仕入先別に、預金は使途目的別に分けることをおススメします。

 

(5)預り金                 

 流動負債の中に『預り金』という科目があります。

預り金は社会保険料の預りや源泉所得税の預りなどで使用する場合が多いと思われますが、

少なくとも次の程度は内訳管理として設定しておきたいものです。

①預り健康保険料

②預り厚生年金保険料

③預り市区町村税

④預り源泉所得税

 

 同様に(今回のテーマではありませんが)、

人件費科目の『法定福利費』も、会社が法定福利のために負担している項目については内訳管理しておきたいものです。

①健康保険料

②厚生年金保険料

③雇用保険料

④労災保険料

⑤児童手当拠出金

⑥一般拠出金

そうすると、事業者としての自覚も促されることになります。

 

管理会計は経営のためだけでなく、経営者としての責任の自覚を促すものでもあります!