632.会計の基本『簿記』⑫
2023年10月27日
■前回の復習
前回は「売上高」の簿記について、説明をしました。
ポイントは次のとおりです。
①売上高は、できれば毎年増収させることが経営の基本です。
なぜなら、経費等は年々値上がりします。まして人を採用すれば、なおさらです。
したがって、売上は「増収」であることが基本です。
②売上の会計処理は、勘定科目と部門別、取引先コードを活用して、商品業務別、継続・新規別、得意先別に管理します。
そうすることで、売上の問題点が浮き彫りになり、あらたな販売戦略を考えるときにも役立ちます。
③売上は回収できて初めて、画餅の資金から現実の資金に変わります。
したがって、売上活動は回収までがその活動です。
また、回収することは、お客様に対する責任でもあります。だから信用と責任ある販売ができるようになるのです。
このような考え方の会計を『管理会計』と呼び、経理事務を経営管理業務へ飛躍させます!
そうすると、会計事務所などに依存した経理姿勢から、自立した経理姿勢に変わりますので、経営に資する会計に変わります。
今回は、『費用』に関する「簿記」について、考えてみましょう。
第12講 簿記 費用編
まず、黒字経営を続けるための『新しい収益構造』を提案したいと思います。
現在、中小企業の赤字法人割合は3分の2といわれています。実に3社に2社が、採算割れとなっているのです。
こんなことは普通ではありません。
「この事業を起業したい!」と思ってやった結果が、3社に2社が赤字なんて、おかしい!と思われませんか。
こんなおかしなことはありません。そこで『新しい収益構造』の提案です。
(1)新しい収益構造
通常の損益計算書は、次のような収益構造になっています。
【通常の収益構造】
売上高 →最初に資金の源泉である売上が来ます。
△売上原価 →売上に対する全部原価が表示されています。
売上総利益 →売上から全部原価だけを引いた最大の利益です。「粗利」と考えても良いかと思います。
△販管費 →販売するために要した人件費や販売費、管理費の合計です。いわゆる「経費」です。
営業利益 →総利益から販管費を引いた、営業ベースの利益です。営業ベースの利益ですから「黒字」が常識です。
±営業外損益 →営業ベース以外の利益と費用です。通常は利息と金利です。
経常利益 →事業の経常的な利益です。通常は営業利益が黒字であれば、経常利益も黒字となります。
営業ベースが黒字で、経常ベースが赤字になっているのであれば、何か無理なことをしていると考えられます。
これが通常の「損益構造」ですが、大きな問題点は、本当の事業収益の状況がハッキリと見えないことです。
なにか、すりガラスを通して損益を見ているようで、儲かっていると思っていたのに赤字であったり、
チョッと今期は厳しかったなと思っていたのに黒字であったり、どこにどのような問題があるのかもハッキリわかりません。
そこで、もっと透明性を持たせて、自社の収益構造がクリアに見える構造が『新しい収益構造』なのです。
それには次のような収益構造に変換しなければなりません。
【新しい収益構造】
売上高 →通常の損益と同じ額とはなりますが、主要商品又は業務別に、それを継続と新規に分けて、かつ得意先別に
捉えられるようにします。いわゆる『商品市場戦略の成果』が示されるようにします。
△直接原価 →恣意的な原価は外し、直接原価だけにします。
そうすることで、自社で付けた『付加価値』がハッキリわかります。
限界利益 →売上から直接原価を引いた付加価値額とも言い換えられる『限界利益』が捉えられます。
△人件費 →役員報酬、従業員給料、そして法定福利費は役員と従業員に分けて管理します。
そうすると、役員の人件費と従業員の人件費がハッキリ把握できるようになります。
すると『分配率』も役員と従業員に分かてわかり、役員に偏りがちな人件費を自ら是正することもできます。
処分可能利益 →限界利益から人件費を引きいた利益は、事業として任意に処分可能な利益になります。
この利益をバランスをとって経費と利益に配分するわけですが、経営力で利益の最大化を目指します。
△固定費 →いわゆる製造から販売までの経費の集まりです。
この固定費は社内の利害関係が生じませんから、全社一丸となって冗費節減に取り組みます。
いわゆる『業績管理の成果』を表すことになります。
営業利益 →通常の損益計算書と同じです。
±営業外損益 →通常の損益計算書と同じです。
経常利益 →通常の損益計算書と同じです。
この『新しい収益構造』は、一般の会計ソフトでは自動作成できません。
したがって、会計ソフトの損益計算書を見ながら、エクセルで作成することになります。
自分でエクセルを使って作成するので自社の収益構造が掴めることになる!
(2)固定費の冗費節減する方法
上記の収益構造の中で、マネジメント力で成果が出せるところは「固定費の冗費節減」です。
固定費を抑えた分だけ利益が増えることになりますので、冗費節減は資金繰りの改善と内部留保の増額という形で、
成果が表れてきます。
では、どうすれば冗費が節減できるのでしょうか?
それは対象とする固定費科目を決めて、順位表を公表するのが一番効果的です。
いわゆる社内に競争意識と自己抑制意欲を芽生えさせて、冗費を節減するわけです。
冗費節減は順位表公表による社内競争力と自己抑制力で実現させます!
(3)費用に関する仕訳の基本
費用は、『資金使途』ですから、発生したなら左側の借方になります。
相手科目は『資金運用』である現金や預金が減るという形になりますので、右側の貸方になるわけです。
したがって、費用の仕訳は次のようになります。
資金使途の増加:費用科目 / 資金運用の減少:現金又は預金
しかし、人件費だけは少し特殊となります。
資金使途の増加:給料 / 資金運用の減少:預金 ←口座振込した給料の仕訳です。
給料 / 資金調達の増加:預り金 ←給料の中で自己負担する部分の社会保険料などです。
このような会計処理をすれば、売上の実態から付加価値の把握、人件費の分配、経費の削減まで、管理できるようになります。
このように会計は経営に活かせるものなのです!