636.経営状況チェック 売上債権

2023年12月2日

『売上債権』とは、「売掛金」「受取手形」などのことを指す。

現金商売でない限り、販売代金をその場で受け取らないので後日請求書を発行し、一旦、売掛金という『債権』になり、

翌月末やそれ以後に代金を回収することになる。

仮に、代金を手形で受け取れば受取手形という『債権』に変わるが、さらに代金受け取りは先のこととなる。

つまり、代金を回収するまでの間は売掛金や受取手形と姿は変われど、相手取引先企業に「おカネ」を貸していることになる。

売上債権とは資金運用の一つだが、得意先におカネを貸している状況のことを指す!

 

この『債権』状況を正しく試算表や決算書で捉えるには、回収見込みが立たない売上債権は「長期貸付金」に振替えるとか、

あるいはもう見込みがない場合は「貸倒償却」にしないと、正しい『債権』状況は掴めない。

このことは大事なことなので、厳正に会計処理をしなくてはならない。

正しく売上債権を捉えるには債権状況に応じて長期貸付金に振替えたり、貸倒償却をする!

 

では、このような『売上債権』をどのように見ればよいのか?

まず、その前に次のことを理解しておかねばならない。

 例えば、毎月100万円販売していて、翌月末までに回収するという場合は…

月初めの売掛金残高は、前月の売上高とほぼ同額になっているはずだということだ。

つまり、この場合毎月100万円販売し、翌月末までに回収し、さらにまた100万円販売ているので、

毎月100万円の売掛金が残っているはずだ。

 あるいは、翌々月末までに回収するという場合は…

月初めに前月分と前々月分の売掛金、合計200万円があるはずだということになる。

 

仮に、それ以上の売掛金があるならば、それはそれ以前の回収していない「売掛金」があるということを示している。

それが日常的にルーズになっていると、たとえ『流動資産』に売掛金が表示されていても、その全額が支払原資なるのかどうか

わからないということなる。

そんな状況で「流動負債より流動資産が多くあるから、経営は安泰」と思っていると、とんでもないことが起こることにもなる。

だから先ほど説明したように、回収見込みが立たない売掛金は『固定資産』である「長期貸付金」に振替えるとか、

あるいは「貸倒償却」にするとかなどの会計処理をしなければならない。

まず、売掛金は回収できる売掛金だけにすることが大事!

 

そのうえに、売掛金を受取手形で回収するということは、さらに資金化できる期日は先延ばしすることになるので、

受取手形による回収は資金繰りを厳しくさせる。

また、それを避けるために「割引」すると、不要な「割引手数料」が発生する。

したがって受取手形による回収はなるべく避けた方がよい!

 

これが『売上債権』に関する常識なので、そのうえで売上債権をどのように管理すればよいのか考えてみよう。

 

 

1 基本は「期日とおりに売掛金を回収する」

なかなかこのことが出来ていない企業が多いが、これはお互いに守らなければならない『ビジネスの基本』だ。

なかには多くの売上債権があることで安心している経営者もいるが、それは逆だ。

つまり、『不良債権』という病気に罹っている売上債権が多いということ恐れがある。

売上債権にはそれぞれの企業の売上規模と約定に応じた適正量というものがある。

多額の売上債権がある場合は不良債権になる可能性ある債権を抱えているということと同じだ!

 

そのチェック方法として、毎月『売上債権回転期間』をチェックしておきたい。

この「毎月」というのがポイントだ。

なぜなら、病巣が広まってから治療するのは大変なことだからだ。

『売上債権回転期間』とは、何日分の売上高を売上債権として持っているかということだ。

適正量は、翌月回収するルールであれば、必ず「30日前後」になる。翌々月回収ルールなら「60日前後」だ。

この『売上債権回転期間』は売上債権を平均日商で割れば求められる。

不良債権という病巣が広がらないように毎月『売上債権回転期間』をチェックする!

 

2 未回収売上債権が溜まらないようにすることが大事

そうならないようにするためには、きちんと請求書を期日に発行することが大事だ。

この一見当たり前のことに見えることが、多くの中小企業では意外と出来ていない。

中小零細になればなるほど、請求書の期日発送をしていない。

だから、請求漏れも多く発生することになり、請求発行業務がルーズになっているところが多い。

たとえ一人企業であっても、これは第一優先業務になる。

そんなことを日常的にやっていると、得意先に発行した請求書を放置されるようになる。

請求書は「定期発行」が基本!

 

3 得意先に支払いを溜めさせない

多くの企業あるいは担当者は、得意先に支払いを督促することは「失礼」のように考えている。

これは本当にとんでもない勘違いだ。

「お支払いを確認させていただく」ことは親切であり、また自社の責任でもあり、信用でもある。

支払を溜めさせてしまうと、得意先は一度に支払えなくなる。

また、溜めさせてしまうから、得意先はほかにおカネを使ってしまう。

そうなると、回収もごちゃごちゃになり、いつのものがいくらあるのかさえ、わからなくなる。

そうなると、「すみません、いくらかお支払いくださいませんか?」と、いつのまにか主客転倒となってしまい、

常にお願い口調となってしまう。

そんな苦労を得意先にかけないためにも、催促というのは「お支払いをお忘れではないでしょうか?」と

『親切』に声掛けをしているわけです。

逆のことを考えてみよう…

支払いを忘れていて何も連絡がなければ「この会社は親切だ」「この会社はしっかりしている」とかあなたは思いますか?!

誰もそうは思いません。

お支払を確認することは『親切』であり、会社の『責任・信用』だ!

 

 

 

このような売上債権の見方や考え方、そして実行すれば、資金繰り状況も良くなり、取引先からの信用を得るようになる。

また「信用」は、売上アップの根本でもある。

大事なことは「お客様に債務を溜めさせない」ことだ。