637.経営状況チェック 棚卸資産

2023年12月8日

『棚卸資産』とは、これから売る商品の在庫だ。

会計上、多くの棚卸資産科目が用意されているが、一般事業であれば「商品」や「製品」だけとなる。

問題は「棚卸資産が多い」とはどういうことを示しているのか、である。

 

多くの商品などを抱えていれば在庫切れを起こすことがないので、安心して販売できると考えられそうだ。

しかし、本当はそうではない。

本当は「売れ残りが数多くある」と理解することの方が正しい。

過剰在庫は「売れ残り商品が数多くある」と理解すべし!

 

数多くの在庫を抱える場合でよくあるのが、何かブームのようなものに乗っかかり、

飛ぶように売れるので多くの在庫を抱えるというパターンだ。

しかし、ブームはそんなに長くは続かず、静かに終息のときがくる。

一通り行き渡るか、飽きられるか、あるいは環境が変わればそのブームは終わる。

最近の出来事では、コロナ禍におけるマスクや衛生商品の販売を思い浮かべればよく理解できる。

ブームなどで特定の商品が売れ続けることはあり得ない!

 

そうすると、必ず最後は数多くの商品を抱えて残ることになり、ひどい場合は資金繰り悪化による倒産へと結びつく。

そのような現実を数多く目の当たりにしてきたが、そこにはある共通した「間違い」がある。

その間違いとは、「販売目標を設定していない」ということだ。

販売の共通した間違いは「販売目標」を設定していないこと!

 

ブームなどに乗るのは販売の機会だから、決して悪いことではない。

問題は備えてむやみやたらに仕入をしてしまうことだ。

ブームは静かに気がつけば終わっているので、最後は数多くの在庫を抱え込んでしまうことになる。

したがって、そのブームでの目標利益から逆算した販売目標を設定し、それに基づいた仕入をすることが大切だ。

それさえすれば、そんなに大きな痛手を負わなくて済む。

現実的には仕入した以上にまだ売れることもあるかもわからないが、

それは目標とした利益を達成しているので、「それで良しとする」という考え方が大切だ。

そうではなく、儲かるからやたらむやみに仕入し販売しようとすることを、一般的には「欲に目がくらんでいる」という。

正しい販売は、たとえブームに乗ったとしても、この機会での目標利益と販売目標を設定し、それに準じた仕入れをすることだ。

それ以上売れる場合は「販売終了」とし、お客様に感謝とお詫びをする。こんな姿勢が正しいと思われる。

仕入は目標利益に基づいた販売目標に準して行う!

 

では、どうやって在庫である『棚卸資産』をチェックすればよいのだろうか。

 

1 基本は「実地棚卸」を行う

まず、しなければならないのは、棚卸資産の実地調査だ。 そのことを「実地棚卸」という。

これによって商品や原材料の保管状況を把握し、在庫商品の劣化を防ぐとともに、仕入の調整を行い、商品の売れ筋も掴む。

なお、実地棚卸は「月末実地棚卸」と呼ばれるように、毎月1回、月末に行えばよいように思われているかもしれないが、

それはきちんと在庫管理ができている事業所での話であり、そうでない場合はもっと頻繁に行う必要がある。

月末実地棚卸だけでよいのは在庫管理がしっかりできている場合だけ!

 

2 仕入の調整

次は実地棚卸を基にした、仕入の調整だ。

むずかしければ仕入を細かく行うように改め、仕入回数を増やすことによって仕入調整を行うのがよい。

 

3 売上に対する棚卸資産の量を計る

3点目は、売上に対する棚卸資産の量を計るということだ。

一般的には『棚卸資産回転期間』と呼ばれるが、何日分の売上高に相当する在庫を持っているのかということだ。

これは「棚卸資産÷平均日商」で計算できるが、気をつけておくことが一つある。

それは、棚卸資産は原価で計上されているが、平均日商は売価なので、『棚卸資産回転期間』は実際より短く計算されてしまう

ということだ。

棚卸資産回転期間は実際よりも短く計算されていることを認識する!

 

同じ業種であっても、優良企業ほど棚卸資産回転期間は短く、

棚卸資産回転期間は黒字経営の『KFS(Key Factor for Success)』とも言われる。

生鮮食品業などを除く一般企業であれば、長くとも14日まで(これでも売上原価が50%であれば実際は28日分になる)、

できれば7日程度には近づけたいものだ。

棚卸資産回転期間を短縮することは黒字経営の『KFS』!

 

 

 

このような棚卸資産の見方や考え方をし、仕入調整を実行すれば、資金繰りも良くなり、売上原価も下がるので

安定した経営ができるようになる。

大切なことは、利益目標に基づいた販売計画を策定し、それに準じた仕入れを行うことである。