640.ペーパーレス化猶予期間2023年で終了!
2023年12月30日
2023年度、最後の「経営会計コラム」は『電子帳簿保存法』をお届けする。
『電子帳簿保存法』は、これまでも何度も改正されているが、
いま騒がれている理由は、ペーパーレス化の猶予期間が2023年末で切れることだ。
2024年1月1日からはペーパーレス化しなければならない。
今回の改正には「罰則規定」があると言われているが、それは『会社法』との関わりにおいて、そうとも読み取れるという話だ。
『電子帳簿保存法』の改正法自体にそういう記載があるわけではない。
今回の電子帳簿保存法改正の目的は、IT時代に即したペーパレスの帳簿保存を促進することであり、
ついては、企業における事務の効率化と行政指導の効率化にも寄与させるということだ。
その主旨から考えれば、膨大な書類がある大企業はともかくとして、中小零細企業に関しては罰則規定は馴染まないと思われる。
ペーパーレス化において『罰則』もあるとも言われているが、改正法自体にはそんな記載はない!
それはともかく、中小零細企業もIT化の流れに即して経営の在り方を変えて行くと素直に考えれば、前向きに捉えたいものだ。
ともあれ、そんな主旨で改正されている、今回の『電子帳簿保存法』を見ていこう。
しかしそのような中で、あまり報道や関係団体企業などの情報に踊らされないことも、毎度のことだが大事だと思われる。
電子帳簿保存法改正に関する報道や関係団体企業の情報にあまり踊らされない!
1 『電子帳簿保存法』2023年末で「猶予期間」が終了する
2023年末でペーパーレス化の導入猶予期間が終了する『電子帳簿保存法』だが、来年2024年から本格運用が開始される。
ほぼすべての事業者が対象となる改正なので、事業者にとっては無視できない法律だ。
しかし、まだこの『電子帳簿保存法』の理解が浸透していないと思われるので、どのような法律なのか、あらためてそのポイントを
見てみよう。
2 ポイント1”ほぼすべての事業者が対象”
『電子帳簿保存法』は、事業の取引書類をデジタル化を促進することで、経営の効率と透明性を高めるための法律だ。
したがって、ほぼすべての事業者が対象となり、要件を満たした書類の電子保存が必要となる。
具体的には、法人や個人事業主などの事業者は、経理帳簿や契約書などの書類を電子データとして保存することが必要になる。
①パソコンで作成した仕訳帳、総勘定元帳、貸借対照表、損益計算書など、そのまま電子データとして保存する。
②郵送などで受領した見積書や契約書、請求書、領収書などは、スキャナーして電子データとして保存する。
③メールなどで受領した見積書や契約書、請求書、領収書などは、そのまま電子データとして保存する。
電子帳簿保存法の対象事業者は、法人・個人の事業者すべてである!
3 ポイント2”対象となる書類は経理書類”
『電子帳簿保存法』の対象となる書類は、作成した帳簿や会計資料、受領した証憑書など、経理に関連する資料全般となる。
そのほかにも、取引の証拠となる契約書や見積書、注文書、納品書なども対象となる。
電子データによる保存が義務づけられるので、これらの書類は電子データにしたうえで、適切な方法でハードディスクに
保管しなければならない。
さらに電子データだけではなく、紙の書類はスキャナーして保存する場合も要件を満して保存する必要がある。
そのために、下記の3点が緩和されている。
①スキャナーする期間は、3営業日以内から、最長2カ月と7営業日以内に延長された(*)。
*2カ月と7営業日が過ぎた場合は、紙のままで保存しなければならない。
②それらを検索する検索キーは取引年月日、取引金額、取引先で検索できればよいようになった。
③電子帳簿保存をすれば、紙の帳簿の「7年間保存」義務はなくなった。
電子保存期間は、法人の場合は基本7年間、最長10年間、個人事業の場合は基本5年間、最長7年になっている。(*)
*最長10年間とは、欠損が生じた年度があった場合などに、最長10年間になるという意味である。
これらによって紙保存コストや事務コストが大幅に改善されるとは言われているが、まだ保存要件が複雑であり、
これからもさらに改正が求められるであろう。
対象となる書類は、経理で扱うすべての書類と考える!
4 ポイント3”保存の要件”
電子帳簿保存法の保存要件は、次のとおりだ。
(1)真実性の要件
データの作成、訂正、削除が記録され、記録が改ざんされていないことを示すことだ。
当然のことと思われる。
(2)可視性の要件
保存した電子データは、取引日や金額、取引先で検索できなければならない。
ちょっとこれが難儀だ。
(3)その他
スキャナーして保存する場合には、解像度やカラー画像など、いくつかの要件を満たす必要がある。
スキャナーは”カラースキャナー”が要件だ!
5 ポイント4”罰則規定等”
2023年末までは『電子帳簿保存法』改正法に対する対応の猶予期間だったが、2024年からはその猶予が終わる。
そこで、2024年になっても『電子帳簿保存法』への対応をしなければ場合、次のような罰則やリスクが生じる可能性が
考えられる。
(1)重加算税10%が加算される!?
『電子帳簿保存法』の改正によって、電子データに改ざん、不正、申告漏れがあった場合には、課税額に重加算税10%を加えた
ペナルティが厳罰化されている。
(2)青色申告が取消しされる!?
『電子帳簿保存法』に違反した場合には、さらに青色申告の承認を取り消される可能性も考えられる。
青色申告は、税制上の多くの優遇が得られている制度だが、しかし『電子帳簿保存法』に対応しない場合には、不正や改ざんも
疑われてしまうこともあるので、税務署からの青色申告の承認が取り消され、多くの特典を失うリスクもある。
(3)100万円以下の罰金!?
『電子帳簿保存法』に対応をしない場合は、会社法に違反していることにもなる。
したがって、会社法によって罰金が科せられる可能性もある。
会社法「第九百七十六条(過料に処すべき行為)」では、100万円以下の罰金が科せられることが定められていることから
その可能性もある。
もちろん、『電子帳簿保存法』に対応しないからといって、直ちに罰則を受けるわけではない。
再三の税務署からの注意や指示に応じない場合や、内容が悪質な場合など、そのような判断が税務署された場合には、
その可能性もあるということだ。
しかしまだ具体的な罰則対象は決まっていないので、よほどのことが無い限り、現実的に罰則されることはないと思われる。
法律の精神を理解して要件を満たした適切な電子データの保存を心がけることが大切!
6 電子帳簿保存法の対象とならない事業者とは?
『電子帳簿保存法』は再三いうが、原則すべての法人企業・個人事業主が対象となる。
企業の規模や売上規模、業種などによっての条件の違いはない。
しかしながら、法律でデータ保存が義務化されているのは、電子取引で授受した『国税関連書類』だけだ。
したがって、電子取引を一切行っていない企業や事業者は書類を電子データ保存する必要がないということになる。
しかし電子取引を一切行っていない企業や事業者はほとんどないと思われるので、
理屈の上では対象外となる事業者は存在するが、現実的にはほとんどないと理解すべきである。
電子帳簿保存法の対象とならない事業者はほとんどない!
いよいよ2024年1月1日から改正電子帳簿保存法によるペーパーレス化が始まる。
まずは前向きに捉えて、ペーパーレス企業に取り組みことが大切だ。