639.経営状況チェック 流動負債

2023年12月22日

『流動負債』とは「事業資金調達」のひとつで、1年以内に返済しなければならない「他人資本」を指す。

主な流動負債には、買掛金・短期借入金・1年以内返済長期借入金・未払金・未払費用・預り金・仮受消費税など、

数多くの勘定科目が設けられている。

このことは、それだけ短期返済の事業資金は調達しやすく、かつさまざまな手段があることを示している。

そしてそられを正確に把握するためには、経理で流動負債と固定負債を「1年返済基準」できちんと分けることが重要であることは

これまでも何度も説明しているとおりだ。

流動負債を正確に把握するためにも『1年返済基準』で流動負債と固定負債にしっかり分ける!

 

では、そんな事業にとって資金調達がしやすく、短期間に返済しなければならない『流動負債』を、どのようにチェックすればよい

のか考えてみよう。

 

 

1 基本は返済原資とのバランスを見ること

『流動負債』は事業資金調達のひとつだが、短期間で返済しなければならないことは、既に述べた。

したがって、常に「返済原資とのバランス」を管理、チェックする必要がある。

では、その「返済原資」とは、何か?

それは比較的、確実に資金(キャッシュ)化できる『流動資産』となる。

広義的には、流動資産であることは確かなのだが、しかし流動資産の中には、返済原資として当てになる流動資産と、

あまり当てにならない流動資産とがある。

たとえば、『その他流動資産』・・。

その他流動資産は、前渡金や立替金、仮払金、仮払消費税などのことだが、いろいろなしがらみがある場合も多く、

返済原資としてはあまり当てにすることはできない。

たとえば、『棚卸資産』・・。

棚卸資産は、ます、すべて売れるかどうかはわからない。

そして、売れるまでに時間もかかる。

さらに売れてもキャッシュになるまでにまた相当の時間がかかる。

そうなると、返済原資として当てになる流動資産とは言い切れない。

そう考えると、資金化できる資産として当てになる流動資産は、売上債権と現預金である『当座資産』ということになる。

しかし、さらに考えると、売上債権の中にも「不良債権」となる債権があるかもわからない。

そうすると、一番返済原資として当てになるのは『現預金』ということになる。

 

このように、流動資産の中にも資金化できるグレードが3つに分けられることがわかり、

それぞれと流動負債を比べて、管理することが望ましいということになる。

『流動資産』の中にも資金化できる資産としては「3つのグレード」がある!

 

そのそれぞれのグレードと流動負債の比較を、『流動比率』『当座比率』『手元資金比率』と呼ぶ。

『流動比率』は「流動資産÷流動負債」で求められる、一番グレードが低い「返済能力」を示す。

したがって、一番当てにできない返済能力なので、少なくとも流動比率は常に200%以上にはしておきたいということになる。

『流動比率』は常に200%以上程度が望ましい!

 

第二のグレードである『当座比率』は、「当座資産÷流動負債」で求められ、かなり確実な返済能力にはなるが、

得意先に万が一のこともあるかもわからない。

したがって、この場合でも150%程度は保っておきたいものだ。

『当座比率』は常に150%程度が望ましい!

 

そして、一番確実なグレードである『手元資金比率』は「手元資金÷流動負債」で求められ、100%あれば「安心」ということに

なる。

しかし、手元資金はさまざまな用途で使うので、保守的に考えれば100%以上にはしておきたいということになる。

『手元資金比率』は常に100%以上が望ましい!

 

なお、これらの判断基準は企業経営共通の絶対的なものではないので、各社の状況で経営者が考えるべきものである。

流動負債は『流動比率』『当座比率』『手元資金比率』で管理することが望ましい!

 

 

2 流動負債の管理を行う上で大切なこと

流動負債を管理を行うえで大切なことは、次の2つだ。

①なるべく流動負債は少なくする!

②なるべく手元資金を高めておく!

 

では、流動負債をなるべく少なくするにはどのようにすればよいのか?

一般的には次のようなことが考えられる。

 ①買掛金を少なくする

  買掛金を少なくするためには、「在庫管理」が重要になる。

  在庫管理をしっかり行うためには、実地棚卸を必要に応じて行うことが重要となる。

  つまり、在庫が重要な企業はしっかり自分の目で行うことが大切だ。

 ②未払金や未払費用を少なくする

  未払金や未払費用を少なくするためには、経費を抑えることが肝要だ。

  経費を抑えるためには、高い社内モラルが必要となる。

  そのためには社長と社員とのコミュニケーションや透明性の高い経営、納得感が持てる人件費などが重要となる。

流動負債を抑えるためには適正仕入と冗費節減がポイント!

 

では、返済原資である手元資金をなるべく高めるにはどうすればよいのか?

一般的には次のようなことが考えられる。

 ①その他流動資産を少なくする

  その他流動資産を少なくするためには、特に中小零細企業の場合は社長の意識ひとつに掛かっている。

  その他流動資産のその発生原因はほとんどの場合社長にあることが多く、社長自らの意識改革が必要となる。

 ②棚卸資産を抑える

  棚卸資産を抑えるには、在庫管理に基づく無駄な仕入れをしないことが重要だ。

 ③売上債権は期日通りに回収する

  売上債権を期日通りに回収するためには、経理と営業の連携が重要だ。

  そしてその最終切り札が、社長となる。

返済原資の手元資金を高めるには債権期日回収、在庫の圧縮、その他流動資産の削減がポイント!

 

 

 

           このような見方や考え方で、流動負債を管理すれば、安定した経営ができる。

           大切なことは、会計資料を見ながら、経営者自らの知恵で考えてみることだ。

           それが自社の経営ノウハウにつながる。