642.経営状況チェック 損益計算書
2024年1月12日
損益計算書とは、簡単いえば「いくら儲かったのか」「いくら利益があったのか」ということを示す販売に関する計算書だ。
それを『売上高』、『売上原価』、『一般経費』、『利益』というグループに分けて表示している。
そしてそれぞれの間の利益を4つの利益にして、表している。
売上高から売上原価を引いたものが『売上総利益』
売上総利益から一般経費を引いたものが『営業利益』
営業利益から営業外損益を足し引きしたものが『経常利益』
経常利益から特別な損益を足し引きしたものが『当期純利益』
という形でで表している。
これらの利益が俗に「4つの利益」と言われる利益概念である。
しかし、税務上で作成している損益計算書では少し不明なことろがある。
それは、商売や事業にとって一番重要な『付加価値』だ。
売上原価には商品や材料などの『直接原価』と、製造にかかる労務費や様々なそれ以外の製造原価である『間接原価』も含める
ことになっているので、一番重要な『付加価値』を見えにくくさせている。
そこで「管理会計」と言われる、付加価値がわかる『直接原価損益計算書(変動損益計算書)』が経営的に必要となってくる。
そのような『損益計算書』だが、そのように見ればよいのか考えてみよう。
1 売上は『増収』が基本
いろいろ報道などで「デフレからの脱却」とか言われており、あたかも費用が下がっているように言われているが、
これまでもこれからも、商売上ではなんなことはない。
いつの時代でも原価や人件費や経費は前年より上がる。
何故なら、事業には新規雇用をすることあり、また既存の従業員に対しても従業員を取り巻く環境は変化していくので、
毎年昇給を実施していかねばならない。
そのため回りまわって、原価も一般経費も毎年増えるし、もちろん何よりも自社の人件費も増やさなければならない。
それらを吸収するためには、金額は別にして『増収』が基本となるというわけだ。
したがって、売上は前年と比較することが大切であり、それらを折り込んでいる計画と比較することが大切となる。
売上高は毎年『増収』させることが、企業経営の基本!
2 売上状況は細部を見ることが重要
増収を図るためにも、売上高を合計で見るだけでなく、細部の状況を知っておく必要がある。
ひとつは事業特性に応じて、得意先別の売上を見ることであったり、あるいは商売・事業分野別に売上を見ることだ。
売上高は得意先別あるいは事業分野別に見ることが基本!
さらに、「増収」ということは、これまでの売上高にプラスするということであるから、
昨年からの継続的な売上(既存売上高)と増収にあたる新規の売上(新規売上高)に分けて見ることも重要となる。
それが順調なのか、あるいはそうでないのかを判断するためには、予め経営計画(予算)を作成しておき、それと比べることが
必須となる。
売上高は継続売上高と新規売上高に分けて管理することも基本!
このように、売上高を細部に分けて管理すると、いろいろなことが見えてきたり、対策も考えられたりするようになる・・。
どのようなことが見えるのか、どのような対策が思い浮かぶのかは経営者の『才覚』の問題!
したがって、売上高は前年と比較したり、予算と比較したりなどして、併せて得意先別や分野別に、また継続と新規に見ることが
基本となる。いまは、会計もパソコンで行う時代なので、これらも容易にできる時代だ。
3 売上原価は無駄を出さないことが大切
売上原価は「抑える」「削る」というより、「無駄を出さない」ことが大切だ。
原価を抑える、削ると考えると、品質にも影響を及ぼしかねないので、大切なことは「無駄を出さない」ことだ。
ここにも通常の損益計算書は問題を抱えており、損益計算書で計上する売上原価は、売上高に対する原価すべてとなっている。
しかも、仕入し過ぎたりしたものは売上になっていないので原価には含まれず、在庫である棚卸資産に計上されるので、
一見、『売上総利益』が順調に上がっっているように見えてしまう。
肌感覚では「どうも儲かっていない」と思っていても、いざ損益計算書を計算してみると、予想以上に利益が出ているときがある。
そんなときの原因が『棚卸資産』なのだ。
繰り返すが、損益計算書には売れ残りの仕入は原価に入らないので、思っている以上に儲かっていることになる。
但し、仕入代金は売れた物も売れ残った物も代金として支払うので、「儲かっていない」という感覚が残る。
したがって、売上原価は「抑える」よりも、「無駄を出さない」ことが大事になる。
そのためには、ないがしろにされている「実地棚卸」をしっかり行って、仕入を是正していくことが必要になる。
売上原価は「抑える」よりも「無駄を出さない」ことが大切!
4 付加価値を上げるとは、一体どういうことなのか?
現代は「高付加価値経営が重要だ」と言われる。
では、付加価値を上げるということは、具体的にどういうことなのだろうか・・。
付加価値である『粗利』は、「売上高ー原価」で求められる。
売上が増えれば、原価率は一定とすれば、結果、「粗利益の額」は増える。これもひとつの『高付加価値化経営』だ。
ふたつめは、原価が下がれば売上が同じでも「粗利益の額」は増える。
これは無駄な仕入をしないことでもたらされる。
これも立派な『高付加価値化経営』だが、しかしながら原価を抑えるには限度があるので、増える粗利には限界がある。
三つめの考え方は「売上単価を上げる」ということだ。
売上単価をあげれば、原価は同じなので、「粗利益の額」はグンと増える。
これは売上数量を増やすことが難しい世の中にあって、一番成果が上がる『高付加価値化経営』だ。
しかし、一般の経営者は「この時代にとても値上げなんて無理」と頭から否定し、考えようともしない。
が、しかしこの『高付加価値化経営』のポイントは、「値上げ」ではなく、「売り方」の問題なのだ。
新しい価値をお客さまに訴求して「粗利益の額」を稼ぐという考え方であり、決して安易な値上げではない。
一番一般的な方法は、これまでの商品・製品・サービスのセットによる、新しい訴求力のアップ(見せ方)とお得感の提供だ。
付加価値のアップには「売上拡大」「無駄な仕入排除」「単価アップ」の3通りの方法がある!
5 人件費を下げる、上げる、どっち?
高付加価値化の担い手は、誰なのだろうか?
よく戦略や戦術、仕組みなどによって高付加価値化は成し遂げられると思われがちだか、
実際、その戦略戦術や仕組みのうえで動くのは「人」だ。
やる気のない人の集団では、どんな立派な戦略戦術や仕組みを実行しても高付加価値化は実現しない。
したがって、戦略戦術や仕組みももちろん大切だが、そのうえで動く人の「やる気」がないとどんな作戦も成功はしない。
そう考えると、いまの中小企業全般にとっての課題は、やはり「人件費」となる。
この話題になると「とても今の状況では賃金を上げることなんてできない」という、経営サイドばかりの言い訳だ。
そうではなく、自社の現状における「最大の賃上げアップ」に取り組みべきだし、その姿勢を従業員に見せることが大切だ。
よく掲げられている『経営理念』や『経営方針』などを見ても、経営サイドからの視点のものばかりで、
そのほとんどで、従業員に対するコミットメントが見られない。
まずここから見直すべきで、全員の将来のために、そして顧客のために、さらに世の中のためにという視点から見直すことが
大切だと思われる。
人のやる気は『高付加価値化経営』への最高のカンフル剤だ!
6 一般経費は全員で思いっきり下げる
人件費を除けば、これらを削減することにはだれも反対はしない。
まして下げて生まれた財源が、人件費と繰越利益に回るのであれば、不満は出ない。
この経費削減で大事なことは、振り子を最大限に振るということだ。
あまり「経費削減、削減」というと、社内の活力に影響を与えるという意見もあるが、それは出てから対応すればよい問題で、
まずはわかりやすく浸透させるためにも、そんなスモークなことは考えず、すっきりと、はっきりと「経費削減」を宣言する
ことが重要だと思われる。
経費削減目標は「スッキリ」「ハッキリ」掲げることが重要!
このようなことを実行すれば「売上」も増収し、「粗利」は増え、全員に対する「分配」も増やせ、そして「経費」も削減でき
結果的に「営業利益」「経常利益」も『増益』できるようになる。
そして「繰越利益剰余金」である『内部留保』も増え、資金繰りも安定してくる。
このような企業経営を3年程度を目途にして目指したいものだ。
損益計算書に基づく経営は『高付加価値化経営』への道筋を示してくれる!