647.直接原価P/Lの詳細 変動費・固定費

2024年2月18日

直接原価計算するうえで大事なことは、変動費と固定費の分け方だ。

それによって、限界利益や限界利益率あるいは労働分配率や損益分岐点など、多くの分析結果が違ってくる。

変動費と固定費の分け方には、その他にその中間の「準固定費」などを設ける場合もあるが、シンプルに考えることがポイントだ。

シンプルに考えてこそ、わかりやすい直接原価計算損益計算書になるからだ。

変動費・固定費はシンプルに考える、それがわかりやすい直接原価計算損益計算書をつくる!

 

 

1 変動費とは

そもそも「変動費」とは、直接原価のことだ。

直接原価の大きな特徴として、売上が増えれば直接原価も増え、売上が減れば直接原価も減少するという、

売上高と比例することが一般的によく説明されている。

しかし、それに加えてもう一つ直接原価には大きな特徴がある。

それは、直接原価は売上高ごとにかかる原価が分けられるという特徴だ。

この二つの点を考えて、ざっくりと自社の変動費を考えることが重要だ。

そうすれば、わかりやすい直接原価計算損益計算書が作成できるようになる。

変動費とは、売上高の増減と比例し、売上高ごとにその原価が分けられることが特徴!

 

 

2 間接原価とは

直接原価に対して「間接原価」というものがある。

結論から言えば、間接原価のほとんどは「固定費」に分類される。

間接原価のほとんどは固定費である!

(1)賃金

間接原価とは、売上一つ一つに対していくらかかったかは分からないが、売上全体にかかっている原価のことをいう。

その代表的なものは「労務費」であり、製造にかかる賃金だ。

しかし、賃金は製造したものが売れようが売れまいが、支給しなければならない。

「売れなかったから今月の賃金は支給しない!」というわけにはいかない。

飲食店のアルバイトなども同じで「今日は売上がなかったからアルバイト代はナシね」というわけにはいかない。

したがって、賃金などの「労務費」は、直接原価計算では変動費ではなく、固定費に分類する。

製造原価の労務費は固定費!

(2)外注加工費

製造経費の中で、独立した形で「外注加工費」というものがある。

外注加工費とは、自社で加工することが出来なかったり、あるいは生産量が多くて追いつかないときに出す、外注の費用だ。

これは売上高や生産量に比例して増減する側面があるので、「変動費」として捉えることも多いようだが、果たしてそうだろうか。

本来、外注加工費とは、社内の人件費にカウントされるものであり、事情があって他社に委託しているだけとも考えられる。

そうすると、外注加工費は変動費ではなく、「固定費」の中の人件費として捉えるべきものという考え方も成り立つ。

外注加工費は本来、社内従業員で行うものを、事情があって外注しているだけだから固定費!

 

直接原価計算損益計算書を作成する場合、変動費か固定費か迷う場合は、変動費を厳格に捉えることが大切だ。

そしてそれ以外のものはすべて「固定費」と捉えた方が、より真の姿を伝える直接原価計算損益計算書に仕上がる。

したがって、変動費を厳格に捉え、それ以外は固定費にするという考え方にする。

直接原価計算損益計算書作成は変動費を厳格に捉え、それ以外は固定費にする!

 

このように考えていくと「変動費」として基本的に数えられるものは、「商品仕入」と「材料費」ということだけとなる。

これがベースだと思われるが、しかし企業にはいろいろな状況があるので、考慮したうえでそれらも変動費とするなら、

それはそれで構わない。

このように融通性があるのが『管理会計』の特長であり、制度会計はその主旨からは融通性は認められない。

融通性あるのか管理会計、制度会計は融通性はその性格から認められない!

 

 

3 変動費・固定費の考え方による直接原価計算損益計算書の違い

では、最後に変動費・固定費の捉え方で、どのように直接原価計算損益計算書に違いが出てくるのか、確認してみよう。

 <例題> 売上高60,000千万円、商品仕入5,000千円、材料費12,000千円、労務費8,000千円、外注加工費6,000千円、

      その他製造経費4,000千円、人件費15,000千円、その他経費12,000千円の場合

 

 A直接原価計算損益計算書作成の条件

 ・変動費は商品仕入、材料費、労務費、外注加工費の4点とし、それ以外は固定費とする。

  変動費=5,000千円+12,000千円+8,000千円+6,000千円=31,000千円

  固定費=4,000千円+15,000千円+12,000千円=31,000千円

  限界利益=売上高ー変動費=29,000千円

  営業利益=限界利益ー固定費=△2,000千円

  限界利益率=29,000千円÷60,000千円×100=48.3%

  損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=64,182千円

  損益分岐点比率=64,182千円÷60,000千円×100=107.0%

  経営安全率=100-損益分岐点比率=△7.0

  労働分配率=15,000千円÷29,000千円×100=51.7%

 

 B直接原価計算損益計算書作成の条件

 ・変動費は商品仕入と材料費だけとし、それ以外は固定費とする。

  変動費=5,000千円+12,000千円=17,000千円

  固定費=8,000千円+6,000千円+4,000千円+15,000千円+12,000千円=45,000千円

  限界利益=売上高ー変動費=43,000千円

  営業利益=限界利益ー固定費=△2,000千円

  限界利益率=43,000千円÷60,000千円×100=71.7%

  損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=62,762千円

  損益分岐点比率=62,762千円÷60,000千円×100=104.6%

  経営安全率=100-損益分岐点比率=△4.6

  労働分配率=(8,000千円+6,000千円+15,000千円)÷43,000千円×100=67.7%

 

営業利益は同じでも、これだけさまざまな経営分析に違いが出てくる!