672.経営を強くする まとめ

2024年8月23日

 9回に分けて、経営を強くするために、どのようにBSを読めばよいのか、説明をしてきた。

P/Lはあくまでもその期の経営成績を示すものであり、営業成果を見るには重要な資料ではあるが、財政状況は教えてくれない。

しかし、B/Sは事業の財政状況を示しているので、それを読みこなすことで経営の状況や問題点がわかる。

したがって、経営を強くしていくためには、B/Sが読めなければならない。

最後に9回分をまとめるので、もし不明な点があれば、その回のコラムを参照してほしい。

 

第1回 BSとPLの違い

 ①B/S重視の経営は非常時の経営のときであり、P/L重視の経営は平時の経営のときである。

  現在は円安でコストが上がり、昇給や社会保険の拡大で人件費も高騰などで非常時の経営のときである。

  したがって、B/S重視の経営をしなければならない。

 ②B/Sを読みこなすとは、経営分析というインジケーションを理解して経営の舵取りをすることである。

 ③B/Sは経営の健全性を示しており、P/Lは営業成績の収益状況を示している。

 ④経営の健全性を保つためには、バランスよく資金調達し、その資金調達に準じた資金運用をしなければならない。

 

第2回 資金とは何か

 ①経営環境や経営状況が厳しくなってくると、一番重要なのが『資金』である。

 ②資金が続けば、赤字経営であっても事業は継続できるが、たとえ黒字経営であっても、資金が途切れれば事業は継続できない。

 ③その資金とは、現金と預金の『手元資金』のことであり、少し拡大解釈すれば『当座資産』となり、最大の拡大解釈は『流動

  資産』である。

 ④資金残高の吟味は日常生活感覚で捉えればわかり、具体的には『平均月商』との比較であり、『流動負債』との比較である。

 ⑤資金の補足事項として、借入金、設備投資資金、売買の運転資金などもチェックすることが大切である。

  借入金は平均月商や年間営業利益などと比較すれば、その妥当性がわかる。

  設備投資は自己資本や固定資本などと比較すれば、その妥当性がわかる。

  売買に関する運転資金は要調達高や要調達率を確認しておくことが大切である。

 

第3回 資金繰りの改善方法

 ①具体的な資金繰り改善は他社の真似ではできないので、結局、自分の頭で自分のやり方を考えるしかない。

 ②改善は過去の否定につながるので、自身を含め、必ず社内に抵抗を引き起こすものであることを知っておく。

 ③改善策は各分析の算式の中にあり、あとは具体的にどういうやり方でそれをやるかという問題である。

 ④資金の改善策は次のようにまとめられる。

  資産に関する改善策には、売上債権の期日回収、在庫の適正化、遊休有形固定資産の処分などがある。

  負債に関する改善策には、買入債務の抑制、未払の削減、借入のリスケなどがある。

  純資産に関する改善策には、黒字経営の積み重ねることである。

  損益に関する改善策には、増収、原価の抑制、固定費の削減などがある。

 

第4回 資金繰り改善のポイント

 ①経営改善の最重要課題は資金繰りの改善である。

 ②資金繰りの改善とは、手元資金と当座資産を十分にすることである。

 ③資金繰り改善のバロメーターは、売上高、流動負債、銀行借入金、負債、固定資産、運転資金の6項目である。

 ④他社の真似や成功事例では改善できないので、自社の頭で自社の方法を考える。

 ⑤資金繰り改善の対処項目は次の10項目しかない。

  手元資金を増やす、売上債権を保有すべき額以上に増やさない、棚卸資産を減らす、固定資産を減らす、流動負債を減らす、

  銀行借入金の月次返済額を減らす、固定性資金を増やす、純資産を増やす、売上高を増やす、営業利益を増やす

 

第5回 キャッシュフロー計算書とは

 ①難しそうに聞こえるが、キャッシュフロー計算書とは結局、現預金有り高の計算書である。

 ②中小・零細企業にとって大事なことは、日次資金繰り実績・期末予測表である。

  事業の資金繰り実績はほとんど毎期大きな変化は無いので、前期の現預金出納帳を元に更新・追加・削除すれば簡単にできる。

 

第6回 資金管理項目の読み方

 ①手元資金は平均月商の何カ月分を保有しているのか毎月確認する。

  コロナ禍のように環境が激変することがあるので、少なくとも3カ月分の保有を指針とする。

 ②流動負債は翌月支払額を算出し、手元資金と比較して毎月確認する。

  その他にも給与などの支払があるので、2倍程度の手元資金を保有することを指針とする。

 ③銀行借入金は総額を平均月商や年換算営業利益と比較する。

  平均月商ならびに年換算営業利益の5倍程度以内の借入金が限度であることを指針とする。

 ④設備投資額である固定資産は自己資本と比較する。

  固定資産は自己資本の2倍程度を指針とし、超えている場合は固定資本以内かどうか確認する。

 ⑤売買に必要な運転資金である、要調達運転資金は手元資金と比較する。

  常に手元資金が要調達運転資金の2倍程度あることを指針とする。

 

第7回 設備投資である固定資産の読み方

 ①固定資産は年換算売上高と比較して、回転率を確認する。

  回転率は業種や業態で大きく違うので、前年比較や業界比較などをして、設備の操業度をチェックする。

 ②固定資産の財源を確認する。

  自己資本との比較である固定比率や固定性資本との比較である固定長期適合率を把握し、追加設備投資の余地を知る。

 

第8回 資金調達の読み方

 ①総資本に対する自己資本比率を確認する。

  自己資本比率は業界平均値で良しと考えるのではなく、自己資本比率は50%超を指針とする。

 ②負債をしっかり管理する。

  そのためには流動負債と固定負債を厳格に分ける。

 ③流動負債をしっかり管理する。

  負債の中でも特に支払期日が近い流動負債のマネージをしっかりし、手元資金とのバランスを確認する。

 ④負債改善の方法には次のようなことが考えられる。

  経常利益率は常に10%を目標とする。

  困ったときには金融機関に相談することを心掛け、コミュニケーションを図っておく。

  赤字の温床のひとつは在庫なので、在庫管理を適切に行いデッドストックを発生させない。

  不要な経費は削減する。

  業績不振を設備のせいにしない。

 

第9回 純資産の読み方

 ①新資産は総資産と負債の差額である。

 ②繰越利益剰余金の多寡はこれまでの経営成績のバロメーターである。

 ③手元資金と純資産を比較し、資金繰りの余裕度を知る。

 

 

 

経営状況を良くするためにはB/Sを改善することが大切だ。

逆に言えば、経営状況が良ければB/Sは必然的に改善される。

 

強い会社にするためにB/Sを改善して行こう!