676.やる気を醸し出すマーケティング④
2024年9月21日
小さな経営ほど、その経営の成否を握るのは、一人一人の「ヒト」、つまり『従業員』です。
従業員のやる気がないと生産性の向上も業務の高付加価値も出来ず、ひいては安定した経営も実現できない。
これまで、従業員のやる気を醸し出す原点は『給料・昇給』であると紹介し、成長のモデルとして『マズローの法則』を取り上げ、
さらにその成長意欲を動機付けるために『ハーズバーグの二要因理論』を紹介してきました。
従業員の”ヤル気”を醸し出すには・・
1.まず『給料引上げ』からスタートし、会社の本気度を従業員に示す。
2.従業員成長モデルとして『マズローの法則』を採用し、従業員のポジショニングを行う。
3.そこから各従業員に成長意欲を動機付け、高めるために「ハーズバーグの二要因理論』を参考にする。
今回は『やる気を醸し出すマーケティング』の四弾としてとして、『従業員幸福度』を取り上げます。
4番目のヤル気を醸し出す方法が『従業員幸福度の向上』です!
中小企業や零細企業でも、多くの企業で、経営理念や経営方針などの「企業ビジョン」が示されています。
が、しかし不思議なことに、従業員に対する「ビジョン」を示している企業が少ないことです。
あれほど「人材がいない」「人材が重要だ」と言いながら、従業員に対する「ビジョン」は示されていないのです。
これでは、従業員はこの小さな会社で頑張って行こうと思えるのでしょうか? どうでしょう。
経営の意義には「4つの側面」があると言われています。
その一つが「お客様」であり、その他に「事業継続」「取引先」」があり、そして「従業員」という4つの側面です。
この4つの側面のベースは、実は「従業員」であり、その上にお客様や事業、取引先などが成り立ちます。
経営の意義は「従業員」の上に成り立つ!
なのに、従業員のための経営理念や経営方針を掲げられている企業はほとんど見られません。
ほとんどが、お客様、事業の発展、取引先との交流で終わっている。
社会貢献の第一歩が従業員の幸せ、顧客満足度の第一歩が従業員満足度のはずなのですが・・。
企業が一番身近に接している社会とは『従業員』です。だから従業員の幸せを実現することが社会貢献の第一歩なのです。
お客様に対する満足度もその担い手は『従業員』です。さらに一番身近にいるお客様とは従業員のことです。
それなのに、ないがしろにしていいのでしょうか。
そんな大切な『従業員』に対するビジョンを掲げていない企業が社会貢献をできるのか?!
というテーマが、今回の『従業員幸福度』の根底に流れていることを理解してください。
1 従業員幸福度とは
『従業員幸福度』とは、従業員が仕事において感じる「充実感」や「満足感」、「働きがい」などを指します。
従業員は仕事での達成感や成長を実感して、それに対する努力が適正に評価されることで「幸福感」を得ると言われています。
従業員幸福度が向上すると、従業員の定着率は上がり、生産性の向上は高まり、顧客満足度も上がり、ひいては企業業績も向上する
という正の好循環をもたらすと言われています。
『従業員幸福度』を高めることは、企業にあらゆる正の好循環をもたらす!
よく似た用語に『従業員満足度』という言葉がありますが、従業員満足度は主に労働環境の充実度のことを言います。
たとえば、仕事の内容、福利厚生の充実、休暇制度の実行度、職場環境の改善、ある程度の給料水準の維持、あまり残業がない
労働時間など、それらがもたらす「満足度」です。
したがって「従業員満足度」は企業がやるかやらないかはコントロールできるものですので、企業によって従業員満足度は大きく
違ってきますので、採用や離職、生産性、高付加価値化、顧客満足度、取引先のファン化などに影響を与えます。
その意味では、従業員満足度は、『従業員幸福度』の一翼を担うものです。
従業員満足度は従業員幸福度の一翼を担うものである!
2 従業員幸福度を向上させる取り組み
では、どのようにすれば、『従業員幸福度』を高めることができるのでしょうか。
それにはいろいろな取り組みが考えられます。
(1)コミュニケーションを積極的に促す
よく言われる「挨拶の励行」なども含まれますが、中でも一番大切なことは、経営者と従業員とのコミュニケーション密度です。
経営者と従業員とのコミュニケーション密度は小さな会社ほどアドバンテージがあり、大きな企業には真似ができないことです。
あなたは従業員に日頃気軽に声掛けをしていますか?
(2)お互いに感謝を伝える
ありがとうね、お疲れさん、ご苦労さん、良かったよ、がんばったね、などなど、感謝を表す言葉はいろいろありますが、
それを経営者であるあなたが率先して発出し、社内に溢れださせることが大切です。
あなたは感謝や称賛が溢れる職場作りをしていますか?
(3)透明性の高い情報の共有化
情報の共有化とは経営の透明化であり、知ってもらわないとならない従業員に情報を開示することです。
たとえば、会社の経営状況を全員にわかるように説明し、その認識を共有化することは大切です。
たとえば、経営計画を全員に発表するだけでなく、その進捗状況を全員にフィードバックすることが大切です。
あなたは役職に応じた透明性の高い情報を共有化を心掛けていますか?
(4)キャリアパスの明確化
キャリアパスとは、目指す役職やポジション、役割を目指そうとした時、そこへ辿るためのポイントやクリアすべき基準、
あるいは身に付けるべきスキルや経験などを示したもののことを言います。
たとえば、店長になるはどういう経験を何年間し、どういう資格を取り、どの程度の業績を挙げることが大切かとか、
ある職種に就くためにはどういう経験をし、どういう社外資格を取らなければならないか、ということです。
あなたの会社は上を目指す従業員にその道筋を示していますか?
(5)従業員の成長をサポート
キャリアパスや成長を目指す従業員に、その成長をサポートすることが大切です。
たとえば、昇進・昇給査定時やボーナス支給時には影で査定するのではなく、かならず上司が面談する機会や経営者自らが
サゼッションする機会を設け、従業員に現状や期待することあるいは希望する道に進むためにはあるべきことや助言などを
することが本当に大事です。
それを行うことにより従業員はますますヤル気に目覚め、もし逆効果になっているなら面談者である上司の成長をサポート
する機会にもなります。
但し、これらを実施するには相当の時間がとられますが、それは時間をかけずに成長を促す方法などはないと知るべきです。
あなたの会社は上司面談や経営者面談を制度化していますか
(6)会社の理念の共有化
会社の理念を共有化する前に大切なことは、その理念の客観性を確認することです。
小さな会社はどうしても経営者の目的意識が強く反映されますので、経営者固有の理念が経営理念等にも反映されることに
なります。
それはある程度は仕方がないことではありますが、そのたたき台を従業員や顧客や取引先などの視点から見つめ見直してみて、
だれでもが納得できる経営理念にしないと、共有化できるはずがありません。
もし、経営者であるあなたがそれでもこれがどうしても良いと思われ、採用されるならば、あまり従業員等には期待されない
ことです。あなたはそういう道を選ばれたのですから・・。
理念の共有化の前に、経営理念の従業員・顧客・取引先の視点からその客観性を吟味する!
(7)福利厚生の充実
福利厚生の充実のポイントは職場と給湯室およびトイレなどの美麗化と就業規則の整備とその実行などです。
設備について大事なことは、過剰にすることではなく、無理のない範囲で、最善の充実を図り、図り続けるということです。
就業規則については働きやすいルールを整備し、大事なことはそれが気を使うことなく実施できる環境です。
福利厚生は現状での最善化と充実を図り続けることです!
(8)ありがとう、よくやったね制度の導入
ありがとう、よくやったね制度とは、一般的にはサンクスカード制度などとも呼ばれますが、
一番目、二番目のコミュニケーションを積極的に促す、お互いに感謝を伝えるの具体的な方法論でもあります。
あまり制度的にすると形式化してしまいますので、当初はそのことが伝えられる制度して準備することは大切ですが、
定着とともに自然に任せてくことが良いと思われます。
お互いの思いが相手に伝えられるコミュニケーション制度として始める程度が大切!
3 『従業員幸福度』を向上させる効果
最後に『従業員幸福度』が向上すると、どのような効果が職場に拡がるようになるのか、考えてみましょう。
(1)会社の内部実態が把握でき、課題解決に役立つ
人と人の人間模様は複雑とも言われます。
この『従業員幸福度』が高まり定着してくると、その人間模様がわかるようになり、ついては問題解決にも役立ちます。
(2)生産性が向上する
もっとも大きな『従業員幸福度」の成果の一つである、生産性が向上します。
従業員のヤル気が高まりますから、当然の結果とも言えます。
(3)従業員の満足度が向上する
冒頭にも言いましたように『従業員幸福度』の一翼である『従業員満足度』も向上します。
従業員満足度が向上すると、採用も改善し、離職の低下、生産性の向上、経営の高付加価値化、顧客満足度の向上、取引先の
ファン化など、さまざまな方面に好影響をもたらせます。
(4)従業員が前向きになる
『従業員幸福度』が向上すると、従業員は前向きになり、楽観的な気持ちを持つようになりますので、失敗を恐れずどんどん
仕事に挑戦するようになります。
それが前項で上げた、離職の低下、生産性の向上、経営の高付加価値化、顧客満足度の向上、取引先のファン化などに結び付き
ます。
(5)従業員の適応力が向上する
従業員が前向きになると、従業員の個性も発揮されて来ますので、結果として、従業員の適応力が向上してきます。
そうすると従業員一人一人の可能性も広がり、多様な人材が確保できるようになります。
『従業員幸福度』は小さな企業ほどそのアドバンテージがあり
小さな企業の人材力をアップさせる!