675.やる気を醸し出すマーケティング③
2024年9月13日
自社の従業員はマズローの5段階、いずれかに位置付けできますが、それ以後もそれぞれ成長してもらわなければなりません。
そのために必要なのが『モチベーション』であり、従業員のモチベーションを高め続けることが大切です。
何回も繰り返しますが、企業を成長させていくのは『ヒト』」です。
従業員の『ヤル気』で組織は活性化するのであり、企業は成長し続けます。
「仏作って魂入れず」という言葉がありますが、たとえ立派な仏像を作っても、そこに魂が宿らないとそれはただの人形です。
企業もまったく同じで、いくら良い会社を作ろうとしても、従業員の心がそこに向かないと、良い会社にはなりません。
そこで今回は、その『ヤル気』がテーマです。
1 ハーズバーグの二要因理論
ハーズバーグはアメリカの臨床心理学者なのですが、満足と不満足を引き起こす2つの要因についての理論を提唱しました。
そのハーズバーグの二要因理論によると、仕事でのヒトの満足度は特定の要因が満たされると上がり、不足すると下がるという、
満足と不満に関わる要因はそれぞれ別のものであり、『衛生要因』と『動機付け要因』の二要因に分けて提唱しました。
2 不満に結びつく『衛生要因(不満要因)』
ハーズバーグの二要因理論では不満に結びつく要因を『衛生要因』と名付け、
整備されていないと従業員が不満に感じるものでありながら、たとえ整備されても満足につながるとは限らないもののことで、
単に不満を予防するだけの要素を指します。
つまり、不満の要因を取り除いてもそれは満足にはつながらず、不満の要因と満足の要因は別物だと言っています。
不満の要因と満足の要因は別だ!
具体的な衛生要因として、給与・福利厚生・経営理念や経営方針・同僚との関係・上司との関係の5点が挙げられています。
《ハーズバーグの二要因理論の『衛生要因(不満要因)』》
1.給与
2.福利厚生
3.経営理念と経営方針
4.同僚との関係
5.上司との関係
意外な衛生要因として「経営理念と経営方針」が上げられている!
これらの『衛生要因』を解決すると、前回紹介したマズローが唱えた「マズローの欲求段階説」に置き換えて考えると、
「生理的欲求」「安全・安定欲求」「社会的欲求の一部」を満たす要素にもなります。
5つの『衛生要因』について詳しく説明すると、以下のようになります。
1.給与
給与は業務内容に見合ったものでなければいけません。
仮に、責任と権限が大きい業務なのに、給与が低いとモチベーションは下がってしまいます。
しかし、経営には「黒字化させるために人件費をおさえなければならない」とか、「内部留保を増やさないと経営が不定定になる」
とか、「年功序列になっているため急には中堅や若手の給与を上げられない」など、従業員の給与を上げられない事情が経営には
あることは事実です。
そこで重要なことは、それらの事情を従業員に説明するという、常日頃からのコミュニケーションです。
不満を和らげるには常日頃からのコミュニケーションが大切!
黙っているから不満要因となるのであり、それらを打ち明ければ理解あるいは我慢してもらえるかもわからない。
会社への貢献に見合うだけの給与がもらえないことは
衛生要因を解消できない要因の一つとして挙げられる!
2.福利厚生
福利厚生で企業として、従業員が「働きたい」と思う職場環境にしなければなりません。
逆に言えば、従業員が働きたいと思う職場環境の指標のひとつが福利厚生の充実となります。
たとえば、サービス残業や休日出勤が当たり前だったり、有給休暇が取りづらい環境では、従業員は「働かされている」と感じて
しまい、モチベーションが低下してしまいます。
『従業員満足度』を向上させ、従業員のモチベーションを高めるためには、有給休暇取得の奨励や資格取得の支援、あるいは各種
サービスの割引や社員食堂の充実など、小さな企業でも努力できる範疇で福利厚生を充実させることが大切です。
衛生要因の解消方法の一つとして福利厚生の充実を図ることが大事!
3.経営理念と経営方針
経営者が掲げる経営理念や経営方針は、ともすれば経営者が個人的に成し遂げたい想いだけを掲げる場合が多く、
従業員の立場から見れば、それで社長は満足かもしれないが、自分たちには何の関係性も利点も見いだせないことが多くあります。
これでは従業員は仕事の目的や意味が見い出せなくなってしまい、モチベーションが上がりません。
経営理念や経営方針で大事なことは、従業員が理念を「自分のこと化」にできることであり、経営理念の意図が社内で言語化
できていることであり、あるいは従業員の定着率が高く、長期にわたって活躍している人が多いという点などに着目することです。
経営理念や経営方針が曖昧であったり、経営者の個人的な想いからの自己実現であったりする企業では、
従業員が働く意義や目的を明確にできず、優秀な人材も逃してしまうことにつながってしまいます。
経営理念と経営方針は客観的であり
従業員・顧客・会社そぞれにとって意義のあるものとする!
4.同僚との関係
組織で仕事する以上、お互いの足りない部分を補完し合い、尊重し合うような関係づくりが欠かせません。
同僚との関係が円滑でないと、自分ばかり損しているとか周囲が理解してくれないなどの不満を従業員が抱いてしまうようになり、
モチベーションが下がってしまいます。
同僚との関係とは職場で同僚との関係を円滑にすることであり、相手のプライベートの深い部分に踏み込まないことであり、
悩みを1人で抱え込まずに周囲に相談できる職場にするなどのことです。
同僚との関係にストレスを感じない職場は衛生要因の除外に大きな役割を果たす!
5.上司との関係
自分を評価する立場の上司との関係が悪ければ、仕事がますますやりにくくなってしまい、モチベーションも低下させます。
上司は個人的な感情で部下を評価したり指導したりせずに、あくまで会社の成長に向かうための評価や指導が行える人であり、
上司と部下の間でお互いに尊重する気持ちも大事となります。
その上司との関係を改善するためには、実は「昇進の選定基準」が大切となります。
営業成績がいいだけで管理者に昇進させるとか、経営者のお気に入りだから昇進させるなどの、褒賞的・恣意的な昇進の仕組みを
改めなければなりません。
あくまでも上司には、部下を育成できる能力に長けていることがもっとも重要なコンピテンシーとなります。
昇進は褒賞的なものではなく、コンピテンシーを見極めて行うべきものです!
そうすると、仕事がスムーズに進むようになり、結果としてそれぞれの評価が高まり、ついては上司との信頼関係が深まって
キャリア形成するうえで上司との関係性を活かせるようになるとか、仕事のスキルを磨きつつ仕事の幅が広がるとかなどの効果が
生み出されるようになります。
自分を評価する権限を持つ上司との関係改善は衛生要因を取り除く大切なポイント!
3 満足に結びつく『動機付け要因(促進要因)』
『動機付け要因』とは、満足感が無いからといってすぐに不満が出るものではありませんが、あればあるほど、
仕事のモチベーションが高まるものであり、仕事の満足度に関わる要素を指します。
具体的には、達成すること、承認されること、仕事そのものへの興味、責任と権限、昇進や成長の5つが挙げられています。
《ハーズバーグの二要因理論の『動機付け要因(促進要因)』》
1.達成すること
2.承認されること
3.仕事そのものへの興味
4.責任と権限
5.昇進や成長
できた! 認められた! 仕事がおもしろい! やりがいと任せられた! 昇進と成長! が大事!
これらの『動機付け要因』ができると、「マズローの欲求段階説」の「自己実現欲求」「尊厳欲求」「社会的欲求の一部」を
満たす要素にもなります。
5つの『動機付け要因』について詳しく説明すると、以下のようになります。
1.達成すること
達成感を得ることは、従業員のモチベーション向上につながります。
そのためには「目標設定」が必要になり、その目標設定で大切なことは従業員の目標と会社の目標がつながっており、
会社目標の達成に対して従業員が共感できるものにすることです。
ノルマのように、会社から一方的に与えられた目標では、従業員のモチベーションは高まりません。
適切な目標設定をするためには、可能な限り目標を定量化すること、努力すれば達成可能なものにすること、チームに貢献する
実感が持てる目標にすること、目標達成の期限を明確にすることなどが大切です。
達成感を感じるためには、定量目標・達成可能性・貢献の共有・明確な期限、が大事!
2.承認されること
人はだれでも他人から認められたいとか、やったね!と言われたいなどの欲求を持ち合わせています。
マズローはそのことを『5段階欲求説』の中での4番目に位置付けた『承認欲求』の中で、「自分は組織にとって必要な存在であり
尊敬され優秀だと認められたい欲求」だと説明しています。
承認されると、モチベーションが高まったり、より成果が出やすくなったり、自己肯定感が高まったりなど、ポジティブな姿勢が
現れます。
会社として、従業員を承認する方法は、昇進や昇給・ボーナスなどがありますが、これらをうまく活用することが重要です。
しかし一方、承認欲求にはデメリットもあります。
承認欲求には、自分で自分を認める『自己承認欲求』と、他人から認められたいと思う『他者承認欲求』があり、他者承認欲求が
あまりに強すぎると、「誰も自分を評価してくれない」「認めてくれない」などと感じることになり、仕事へのモチベーションが
低下してしまうことがあります。
また、人から嫌われたくないと考えるあまり、他人から言われたことを断れなくなってしまうケースもあります。
人はだれでも 他人から認められたい、やったね と言われたいと思うものです!
3.仕事そのものへの興味
そもそも、仕事への興味が低ければ、モチベーションは高まりません。
仕事への興味が高ければ、上司から指示されなくても自発的に学んだり、業務の改善など、人は自然に成長します。
しかし、従業員によっては、どうしても仕事に興味を持てない場合もあります。
そんな場合には、自己分析をさせて自分の業務適性を見極めさせる、第三者の意見を聞かせて気づきを得させる、小さなことでも
目標設定をさせて仕事にやりがいを見付けさせる、向き・不向きを考える前にまずは仕事に取り組ませる、などが大切です。
さらに、管理者が部下に、部下の仕事が会社の目標達成にどんな役割を担っており、どのように影響するのかなどについて、
しっかりコミュニケーションすることも大切です。
仕事そのものの興味を持たせるには従業員としっかり話し込むことが大切!
4.責任と権限
「責任」とは、相当の注意を払い、起きた結果に対処する任務や義務と説明できます。
さらに「権限」とは、何かをする際に、自分自身で判断できる力や権利と説明できます。
つまり、責任とは任されたことであり、権限とは自分で判断・決定できる範囲における権利ことです。
小さな企業でよくある事象は、この責任と権限が曖昧であったり、責任は求められるが権限はない、ということです。
これでは「よし、やろう!」という気持ちにはなりません。
一方、動機付け要因での「責任と権限」が増えると、プレッシャーは感じるかもわかりませんが、やりがいが高まります。
従業員に責任と権限を与えることで、1つの仕事に対しての意思決定スピードが上がり競争力が高まる、ワンランク上の仕事をする
ことで部下の成長速度が高まる、失敗も含めて責任を負うので次回に向けての改善を自ら考えるようになるなどのメリットが
生じます。
『責任と権限』はモチベーションを高める!
5.昇進や成長
仕事で成長を実感することは、最もモチベーションの向上につながることです。
特に、仕事の報酬は「お金」ではなく、「自分の成長」と考える従業員にとっては、もっとも重要な項目になります。
従業員に成長を促す仕組みとして、昇進や昇給制度・表彰制度・資格取得制度などを、効果的に実施する企業が増えています。
従業員が成長を実感できる環境作りは「この会社で長く働きたい」と思わせることになり、動機付け要因を高める役割を担います。
昇進や自己成長が定着率の向上にもつながる!
4 小さな会社で実行したいこと
この『動機付け要因』の根底には、常に「従業員一人一人のことを見守る」という重要な姿勢が流れています。
つまり、『動機付け要因』は大企業には不利であって、小さな会社の方か有利であるということです。
そこで、経営者であるあなたは・・
▶従業員を褒めようといつも意識していますか?
▶従業員を大したものだといつも認めようと意識していますか?
▶その証として、褒賞や昇進・昇給などを公明正大にやっていますか?
ただ考えている、思っているだけでは伝わりません、それを従業員に直接伝え、理解させることが大切です。
動機付け要因の根底には、社長か従業員を褒める・認める・関心を持つということがある!
マーケティングには、企業と企業間のこと、企業と顧客間のことだけではなく、社内マネジメントについても多くの理論がある。
それが「マーケティングとは企業活動全般に関する理論である」と言われる所以だ。
時代の進展とともに社会は成熟化しており、小さな会社経営といえどもこれからはマーケティング戦略をもって挑むことが大切だ。