679.信頼を高めるマーケティング①

2024年10月11日

 少子高齢化と言われて久しくなりますが、遠い将来は別にして、現在は少子高齢化が確実に進んでいます。

そうすると人口は減少するので市場は縮小化し、かつ高齢化によって購買力も落ちてきますので、必然的に寡占が進みます。

こうなると、経済環境の良し・悪しに関係なく、多くの中小零細企業にとってはきびしい経営環境が続くことになります。

したがって、体力がない中小零細企業や後継者がいない中小零細企業は、廃業や倒産していくことが予測されます。

 対策は、だから海外に市場を求めるとか、インターネットによって国内市場を拡げるとか、いろいろ言われますが、

何十年も経営して来ている老齢な中小企業ではなかなか対応できないことであり、またそのようなことは関係がない中小企業も

多くありますので、中小零細企業の対策としてはなかなか成り立ちにくいものがあります。

 

 そこで、いま私たちが誰でもできることで、もっとも大切なことは、現在の市場やお客様との信頼関係を高めていくことです。

信頼関係を高めるのに、年齢やネットスキルは関係ありません。要はやる気や事業を継続させていく意欲だけです。

信頼を高めることができれば、これまでの市場やお客様を守ることができ、その評判の広がりも期待できますので、

少しずつではありますが、新しい市場やお客様も同時に開拓できることにつながります。

 マーケティングではそのようなことも語られており、その一つが信頼やコミュニケーション力を高めるマーケティングです。

 

 

1 マーケティングの指導原理

 まず、本題に入る前に、マーケティングの考え方である『指導原理』を理解しましょう。

この指導原理を理解したうえでマーケティングを知ると、その理解の深さが違ってきます。

理解の深さが違ってきますと、発想も豊かになります。 ぜひ、理解してください。

 

(1)需要は創造できるという『需要創造の原理』

 「需要は創造できる」とは、需要は決して固定的なものではなく、働きかけによってより大きいものを作れるという考え方に

立つということです。

あらかじめある固定的な需要だけではなく、自ら作った需要のうえに事業を展開することで、事業はより強くなります。

 

(2)価格や値段だけで勝負しないという『非価格競争の原理』

 「価格や値段だけで勝負しない」とは、販売価格以外の手段でも、顧客の購入意欲は掻き立てることができるという考え方に

立つということです。

価格だけでお客様を掴むことは割にかんたんですが、それは必ず、同業他社との価格競争を誘発しますので、小さな事業では

体力負けとなってしまいます。

 

(3)売れるということを中心に置いて考えるという『販売中枢の原理』 

 「売れるということを中心に置いて考える」とは、作りたいもの作るとか、すでにある良さそうものを売るという考え方から、

売れるものとは何かを想定して作るとか、すでにある良さそうなものにさらに売れるような工夫をして売るという考え方に

立つということです。

一旦「これは売れる!」と思い込んでしまうと、冷静な逆転の発想ができず、事業は次第に顧客志向から外れてきます。

 

(4)流通経路を考えるという『流通経路変革の原理』 

 「流通経路を考える」とは、ただこれまでとおり、店だけで売るという染みついている固執した販売経路だけではなく、

もっとお客様の利便性やこうあって欲しいというお客様の希望を取り入れて、臨機応変に商品提供の仕方を作るという考え方に

立つということです

どんな販売形態であっても、いまよりお客様にとって便利な販売経路は存在します。

それに一歩でも近づこうと考える努力が大切です。

 

(5)お客様の言いなりにはならない主体性を持つという『主体性維持の原理』 

 「主体性を維持する」とは、顧客志向ではあるのですが、それはただただお客様のいうことに疑問も抱かないということでは

ありません。主体性をあくまで持って、市場やお客様とともに取り組むという考え方に立つということです。

主体性を常に維持できれば、ブームやお客様に振り回されることもなく、過剰在庫や過剰設備も避けられます。

 

(6)科学的に市場を把握するという『科学的市場認識の原理』 

 「科学的に市場を把握する」とは、直感や漠然に市場やお客様を捉えるという姿勢から、できる市場分析や顧客分析によって、

市場を数値的に把握するという考え方に立つということです。

なかなか顧客像を掴み切れないのが実情ですが、それでもこれだと自社の顧客を肚決めして、それに基づいて新商品や新サービスを

提供すると、売れた要因が掴め、さらに次の商品やサービス開発に結びついたり、逆に失敗であっても失敗の理由に気づけますので

改良することができます。

 

需要創造・非価格競争・販売中心・流通経路・主体性・科学的経営

この6点を根底にマーケティング志向をすると「新しい扉」を開くことができます!

 

 

2 市場・お客様から信頼を得るために大切なことは

 では、市場やお客様から「信頼」を得るために、大切なことは何なのでしょうか。

いま流行のAIに聞いてみると、次のように答えてくれました。

 ①約束を守る       当然ですね

 ②相手を理解する     ちょっと抽象的ですが、そのような気持ちは大切ですね

 ③正直な態度をとる    正直になるためには勇気もいるし難しいことですが、確かに”オネスト”は大事ですね

 ④相手の立場を考慮する  ”理解する”の延長上のような気もしますが、そうできれば素晴らしいですね

 ⑤相手のことを尊重する  ”立場を考慮”して、考慮だけではなく”認める”ということを言っているのですかね

 ⑥相手の意見を傾聴する  話をよく聞くという姿勢は、クレーム処理なんかのときにも大切ですね

 ⑦相手の気持ちに寄り添う ”寄り添う”とは、理解する・考慮する・尊重するを統合した気持ちですかね

 ⑧相手に強制しない    サプリメント業者やリフォーム業者、害虫駆除事業者など煽り営業をするところが多く、

              信頼を損なうどころか、詐欺まがいの事業に近づき、業界自体の信頼を損ねますよね

 ⑨相手の秘密を守る    個人情報に対する認識がまだ甘く、自分勝手な理解をする事業者が多くいますね

 ⑩自分の判断に責任を持つ 他人のせいにしないで、自分に責任を問う姿勢は大切なことですね

AIとはネット上の知見の寄せ集めたものですので、社内的な信頼と社外的な信頼、両方合わせた回答をしてくれたようですが、

約束を守り、相手を尊重し、責任を持つことは「信頼を得る」ためには確かに大切なことです。

約束・尊重・責任は信頼を得るためには大切なことです!

 

 

3 そのための前提条件

 約束を守る、相手を尊重する、責任を持つ、これらのことはいずれも「信頼」を得るために大切なことです。

しかし、その前に大切なことがあります。これができていないと「信頼」への道筋は途絶えてしまいます。

それは『クイックレスポンス』です。

約束・尊重・責任のためにもクイックレスポンス!

 

(1)クイックレスポンスとは

 クイックレスポンスというと電話応対だけの大切なポイントのように聞こえますが、実はいろいろな場面にクイックレスポンスは

存在します。

そのためには、クイックレスポンスを「迅速な応対」と理解すればよいかと思います。

 たとえば、電話応対で「折返しお電話差し上げます」と言ったとします。

そうするとお客様は自分なりの折返し時間を設定して、それを過ぎるとイライラし出します。

そんなときもクイックレスポンスが大事なのです。

 たとえば、お客様が店を出るとします。

タイミングよく「ありがとうございました」と添えると、お客様はいい気持になって、再来店確率があがります。

そんなときにもあいさつのクイックレスポンスが大事となります。

 

(2)クイックレスポンスにするには

 極端に言えば、クイックレスポンスはクイックレスポンスにできるものなのです

①少々お待ちください、折り返しご連絡します。

 「少々お待ちください、折り返しご連絡します」というセリフは電話応対などでよく使います。

しかし、お客の立場になると、なかなか折り返しが来ないということが多いものです。 私たちもよく経験することです。

 大事なことは2点です。

 ひとつはいつごろまでに折返しの連絡を入れるのか、相手に伝えておくことです。

そうしないと、お客は勝手に期待値を持ってしまい、いつまで待っても連絡が来ないと思ってしまいます。

 ふたつめは、その約束した時間までに必ず再度連絡を入れることです。

電話の後、急に忙しくなり、電話することを忘れてしまったりすることも、よくあることです。

そんなときでも、自ら時間を約束すると忘れずに電話できるようになります。

あるいは思ったより時間がかかり、その時間までに折返しが出来ないことも、よくあることです。

そんなときにも、時間までに連絡をし、もう少しお待ちいただくようにお願いします。

お願いできればクイックレスポンスは続きます。

 

 このような経験は、相手が大企業であっても、小規模企業であっても、よく経験することです。

なぜなら、これらの対応はすべて「人」がするものであり、企業規模の大小にあまり関係がないからです。

だから多くの企業で、日常的に、多くのお客様に、不満を感じさせています。

ということは、このようなことがない対応が出来れば、競合他社と差別化ができることになり、お客様を惹きつける力になります。

信頼を得る行動指針として「クイックレスポンス」は大切!

 

②上記は電話応答時の中でのクイックレスポンスを説明しましたが、他の状況でもあります。

 店に訪れても、気づいてくれているのか気づいていないのか、わからない

「いらっしゃいませ」「こんにちは」などと気さくに声掛けしてくれれば、何となく安心できるのに。

③店を出る時にあいさつもない

 お店で何かを購入したり食事をしても、帰り際にあいさつもない。

せめて「ありがとうございました」「またのご来店をおまちしています」と声掛けしてくれれば、気持ち良く外へ出られるのに。

④形式的なあいさつしかしない

 スーパーなどへ行くと、あまりにもマニュアルすぎる、心が無い丁寧なあいさつをされても違和感を感じるだけです。

マニュアルのごとくたとえ丁寧に「ありがとうございました」といわれても、単なる掛け声のように感じてしまいます。

あいさつで大事なことは、正面であれば、相手の胸元をみたり、後ろ姿であれば、相手の方を見て「ありがとうございました」と

いうことです。

言葉にはベクトルがあり、自分の方に言ってくれると、その言葉は自分の方に向かってきますので、たとえ後ろを向いていても

自分に言ってくれているのかどうか、わかりま。

 これらはすべて、クイックレスポンスがないのと同じなのです。

「クイックレスポンス」は電話応対だけではない!

 

 

4 クイックレスポンスをする

 では、クイックレスポンスはどうすればできるのでしょうか?

人間の「おそい」「はやい」は主観的な感覚ですので、その「おそい」を感じさせないためには客観的にすればよいのです。

つまり、あらかじめ相手が期待する時間を変更しておけばいいのです。

おそい・はやいは主観的な問題、その主観的な問題を客観的にする!

 

(1)折返しは「しばらくしたら」ではなく、具体的に時間伝えて時間を得る

 たとえば「折り返しご連絡いたします」ではなく、「(予測を立ててたとえば)30分後にご連絡します」といいます。

すると相手は勝手な期待値を創造することなく、30分程度は猶予がありますから、クイックレスポンスができることになります。

 しかし、現実はそう単純ではありません。

現場はさまざまな仕事を入り込みますので、30分後には往々として連絡できないことが、常時生じます。

問題はその時どういう対応をするかということです。

 そのときは手間ひまをかけて連絡を一本、「まだ対応中ですので、もう30分ほどお待ちいただけますか」と入れるだけです。

それでクイックレスポンスができます。

そうすると、連絡したとき「忙しい中をすみませんでしたね」と言葉を添えられるかもわかりません。

電話一本しなければ、同じ忙しい中で対応したのに、お客様は「なにしているの?おそいじゃない!」と苦情を言い、

担当者も気分良くはありません。

クイックレスポンスを実現するためにはちょっとした「手間ひま」も大事!

 

 直訳すれば「迅速な対応」ということなのでかんたんなことのようですが、結構むずかしいのがこのクイックレスポンスです。

したがって、実社会では多くの企業が出来ていません。

だからこそ、この『クイックレスポンス』は他社との大きな差別化となり、大きな信頼を得る入口になります。

クイックレスポンスは『信頼』の入り口!

 

(2)あいさつは明るい声で相手の胸辺りを見て

 お出迎えのあいさつも同様です。

それによって、大きな信頼を得られ、他社との差別化が図れます。

ポイントは明るさと目線です。

声はできるだけ明るく快活にします。

視線は相手の目を見るのではなく(目を見るとにらむことになります)、目を外して見ることがポイントです。

帰り際も同様ですが、視線は相手の後姿を捉えます。

お客様は見えなくとも、自分に向かってしてくれていることを感じるものです。

また、マナー教室で教えられるような不自然なあいさつは、お店が高級店やブランド店でない限り、場にそぐわないので、

心がこもったようなあいさつには聞こえません。

クイックレスポンスあいさつは、明るく快活に相手の方を向いておこなう

 

 

スモールビジネスの経営環境はきびしくなっていると言われますが、

それはいまの特別なことではなく、いつの時代であっても、経営環境は時とともに変わって来ているということです。

大事なことはいつの時代であっても真摯に経営し、お客様を大切にし、いまのお客様のファン化をすすめるとともに、

その結果、少しずつ新しいお客様を増やしていくことです。