682.信頼を高めるマーケティング③
2024年11月2日
取引先企業からあるいはお客様からの信頼を高めるには、これまで次のようなことを紹介してきました。
1.応対には「クイックレスポンス」を心掛ける
ポイントは少しお待ちくださいとか折返し連絡しますなどと、曖昧な時間約束をするのではなく、どのくらい待てばよいのかを
伝えることです。さらに、その時間までに対応できなければ、前もってあらためて時間を得るように連絡することです。
自分自身のことを考えればわかるように、人はしばらくお待ちくださいと言われれば、10分ほどもすれば連絡が来るだろうと
勝手な期待を持つものです。
2.お客様来店時や退店時などのあいさつなども、親しみを込めて相手の方を向いてする
よそ見をしてのあいさつは、自分に対してされていないことがわかります。
3.お客様の話や要望などは、まずはよく聞く
ただし、ただ黙って聞いているだけではなく、相槌や同意を示すなど、気持ちよくお話しいただく潤滑油を出すことが大切です。
4.自分の言葉でお客様の話の要点をまとめて、相手に確認する
そうすることでお客様が言わんとすることがシンプル化できます。
5.返答や回答はできるか、できないか(All or Nothing)ではなく、出来る方向での回答をする
100%は無理でも、少しでもお客様に沿える方向で考えることが大切です。それがコンサルティングです。
ものごとは発想して、ゼロで終わらせるのではなく、60%でも80%でも前へ進めることが大事です。
6.回答の幅を広げるプラスワン
言われたことだけに応えるのではなく、言われていないことにも応えることが大事です。それがコンサルティングです。
また、それが今回のテーマ『期待以上の期待に応える』につながって来ます。
顧客の信頼を得ることは永遠の課題ですが、ひとつのヒントがあります。
それは「顧客の期待以上の期待」に応えるということです。
顧客の信頼を得るには、期待以上の期待に応えることです!
1 顧客期待値の計算式
顧客期待値の計算式というものがあります。それは次のように表されます。
顧客の期待値(顧客満足)=顧客が感じた期待値ー顧客の事前期待値
つまり、仮に顧客の期待に100%応えたとしても、顧客の期待値である顧客満足度は「ゼロ」だということです。
顧客が感じた期待値が100であっても、顧客が事前に期待している期待値も100ですから、顧客の期待値である顧客満足は
ゼロになってしまいます。
計算式:顧客が感じた期待値100ー事前期待値100=顧客の期待(顧客満足)0
言い方を変えると、顧客の言いなりになった回答では、いくら頑張っても顧客の期待である顧客満足度はプラスにはならないと
言うことです。
冒頭の「6.回答の幅を広げる」コンサルティング(提案)がないと、顧客を満足させることはできないということです。
それは実は、私たちも良く経験していることなのです。
たとえば、携帯電話を買い替えにいったとします。
そしてその事前期待値とおり、携帯電話を買い替えたとしても、「ああよかった」と思うでしょうか?
そのことには思ったより費用が安くついたとか、こんな便利な機能を知ったとか、こんな新しい機能を使えるようになったなど、
事前期待値プラスワンがないと、この携帯ショップに来てよかったとか、次もここにしようとかは思いません。
それと同じことが私の仕事の中で生じているのです。
つまり、少なくともプラスワンがないとプラスの顧客満足度にならないのです。
ところが日常では、多くの場合が顧客満足度はマイナスになっています。
したがって、プラスワン思考は大きな差別化、信頼となります。
顧客の期待値をプラスに転換するには『プラスワン思考』が大切です!
2 コペルニクス的転回
『コペルニクス的転回』の正確な意味はいろいろ説明されていますが、ここでは強いていえば「逆転の発想」です。
たとえば、いまはAIを初めてとして、自動ばやりですが、果たして自動というものはそれほど便利なものなのでしょうか。
便利かどうかは、その運用者のスキルとか、使用者の状況によって、その判断は変わりますが、自動はノンストップです。
自動運転であれば、追尾しているときは問題ないのですが、追尾している自動車が赤信号ぎりぎりに道路を横断すれば、
自動運転車は赤信号でも突っ込んでしまう恐れがあります。
また直線の道であれば時速60キロでも安全に走行できますが、そのままカーブに入っても、時速60キロで走行しますので
危険が生じます。
このように自動は何パーセントかの割合で危険と隣り合わせになりますので、注意が必要です。
これはソフトウェアなどの場合でも同じです。
そのようなことを考えて、提案の幅を広げれば、お客様に対して期待以上の期待に沿える話ができるようになります。
もっと身近な例でいえば、お客様があるものを購入するつもりで来店され、「○○はありますか?」聞かれ、
「申し訳ございません、あいにく切らしております」と答えれば、もうそれでお客様は帰ることとなります。
しかしそうではなく、「どのような目的でお探しになっていますか」と幅を広げれば、「それであれば、このような商品も
お喜ばれいただいております」という提案ができます。
あるいは「いつ御入用ですか」と幅を広げれば、「それであれば、○○には入荷いたしておりますが」とお客様を食い止めることが
できるかもわかりません。
これらのことはコペルニクス的転回というほどのことではないかもわかりませんが、ただそういう意識を持つことで、
応対がより幅広くなり、チャンスを逃す機会を減らし、信頼を得る機会を増やすこととなります。
コペルニクス的転回はいろいろな場面で発揮できます!
3 ニーズ・シーズ・ウォンツ
最後によく聞く、ニーズ・シーズ・ウォンツについても紹介します。
顧客の事前期待値に応えても顧客からすれば当然のことであり、感動は引き起こさないことはすでに説明しました。
では、どうすればよいのでしょうか。
そのためには、顧客のニーズのほかに、シーズやウォンツを見つけ出すことが大切です。
これらの言葉も脳裏に置いておくと、幅が広がり、チャンスを掴みやすくさせます。
(1)ニーズ(needs):必要性
ニーズとは、取引先やお客様が満たされない状態にあり、そこで求めている必要性のことをいいます。
何かサービスや商品を求めるときには、必ずそこに必要性、つまりニーズが存在しています。
例えば、喉が渇いたなら飲み物が欲しいと思い、空腹なら食べ物が欲しいと思い、この必要性がニーズです。
そんな取引先やお客様の必要性を重視することを「ニーズ志向」と呼びます。
(2)シーズ(seeds):種子
ニーズとは顧客側の言葉ですが、シーズはその供給側の言葉です。
シーズはビジネスの種・ネタともいい、企業が持つ技術やノウハウ・企画・設備のことを指します。
そのような企業による技術やアイデアを重視すること「シーズ志向」と呼びます。
例えば、独自の技術力やアイデアから、類似商品がない世界初の商品を生み出したのなら、それはシーズ志向による商品です。
新しい商品を開発するにも、新しいニーズを生み出すにも、シーズは欠かせません。
(3)ウォンツ(wants):欲求
ウォンツとニーズの切り分けは難しいですが、ニーズが抽象的なものであれば、ウォンツはもっと具体的な商品やサービスを
求める欲求を意味します。
ニーズで紹介した、「喉が渇いた」→「飲み物が欲しい」はニーズですが、「喉が渇いた」→「○○が欲しい」(○○は商品)に
なるとウォンツになります。
またウォンツは、必要としていなくても、欲しいと思う欲望のことでもあります。
たとえば、お腹がすいているわけではないけれど「○○のイタリア料理が食べたい」と思ったり、いまは必要ないけれど、
「ブランド物の財布が欲しい」と思ったりは、そこにはウォンツが存在しています。
ニーズ・シーズ・ウォンツそれぞれ違いあるが、よい商品・サービスを生み出す上で欠かせない!