684.経営を高めるマーケティング①
2024年11月15日
これまで、日本経済は「人口の増加」とそれによる「生産性の向上」という2つの軸を前提に成り立って来ました。
多くの中高年経営者はそのことを意識していたか、していなかったかはわかりませんが、人口は増え、作ればモノは売れるという
無意識の意識のもとで、これまで経営に携わって来ました。
しかしいまは、日本の人口は減り出し、これまでにない高齢化社会を迎え出し、日本が現代日本になって初めての未知の状況を
迎えています。
さらに長寿化も進んで「人生百年」と言われるようになり、同時に年金支給額が減額されて来ているので「将来不安」が広がり、
消費動向が減退するという事態になっています。そして輪をかけたのが、新型コロナ感染拡大による消費動向の大きな変革です。
したがって、現代は非常にきびしいパラダイムシフトが起こっており、これまでと同じように一生懸命経営さえしていれば、
経営は成り立つという時代は終わっています。
中小企業と言えども、事業を継続させていくにはそれなりの経営を工夫する「戦略」というものが必要となっています。
そこで今回から『経営を高めるマーケティング』と題し、経営の考え方である「戦略論」を日常目線から紹介します。
1 パラダイムシフトが起こっている
パラダイムシフトという言葉を使いましたが、パライムシフトとは経営を取り巻く枠組みが変わったことをいいます。
パラダイムとは常識とされる思考の枠組みのことであり、シフトとは移動することをいいます。
つまり、「これまで常識と思い込んでいた枠組みが変わってしまっている」ということです。
だから、それに対応する経営に変えていかなければなりません。
それが、中小と言えども少しは戦略論を学び、自社の経営に取り入れるということになります。
経営戦略論はこれからの中小企業経営に非常に重要!
2 中小の戦略の基本は”ニッチ”と”差別化”
中小企業の特徴はなんでしょうか?
それは「経営資源が少ない」ことです。 少ないから中小・零細企業と呼ばれるのです。
経営資源とは、ヒト・モノ・カネ・情報と言われますが、具体的には人員・人材と設備、そして資金のことを指します。
大手企業と比べ、それらが乏しい中小企業が大手と同じ土俵に上がって経営を競っても勝てるはずがありません。
小さな人が何十倍もある大きな人と相撲を取るようなものです。
そこで、戦う土俵と戦い方を工夫する必要があります。
表現に違いがあるかもわかりませんが、それは「土俵はニッチ」に、「戦い方は差別化(独自性)」です。
そのためには目標を客観的に再認識する必要があります。
私たちは一般的には、大企業のように何億円も何兆円も売上を目指しているわけではありません(但し、ゆくゆくは上場を目指して
いるとか、ビッグビジネスにするとかなどの野望を持っている場合は別です)。
そのことを認識すると、それほど大きな市場も必要なく、少人数でもコミュニケーション密着度や集中化などで差別化をすることは
十分可能であることに気づきます。
小さな市場でお客様と十分なスキンシップをとって差別化を図り
経営資源を集中するが大切!
品目数よりもラインナップ、間接販売よりも直接販売、そして小回りの利くサービスで、スピーディに、確実にサービスする・・
そんなイメージです。
戦略理論ではそんなことを「集中戦略」と呼び、地域一番店を目指すことを勧めています。
また、そのようなプロセスでたどり着く市場のことを「ブルーオーシャン」とも呼んでいます。
3 ニッチと差別化で”市場浸透”
ニッチと差別化でまず成すべきことは市場浸透であり、深堀りです。
一見さん(いちげんさん)ではなく、お得意さん、固定客にするということです。
その過程でくみ取った顧客ニーズで新たな商品開発やラインナップの充実を心がけることで、商売に深みが生まれてきます。
経営学者であったアンゾフは、それを「市場浸透 →新商品開発 →新市場開拓 →経営の多角化」とモデル化していますが、
中小企業にとってその中でも大切なことは「市場浸透」と「新商品開発」までです。
市場浸透とはお客様のニーズを満たすことです。
新商品開発とはお客様に常に新鮮味続けることです。
そしてここまでが中小企業が辿り着ける「ブルーオーシャン」でもあります。
それ以後の段階は、ごく一部の中小企業が中堅企業や大企業を目指してやっていくのでしょうが、その結果、リターンも大きく
なれば、リスクも大きくなり、さらに人材も必要になってきます。
中小企業経営で大事なのはニーズの充足感と新鮮味の提供!
4 いつまでも活力ある組織にするためには
小さなビジネスでも成功を重ね続けて行くと、経営も技術も現状の延長線上を辿ってしまうことが多くなってしまいます。
何とかうまく行っているのですから、変える必要がないからです。
しかし、それが続き続けると、それが強固な枠組みになってしまい、いつの間にか保守的で思考省略な体質にさせていきます。
そのことを「強み伝いの経営」といいますが、それがいつの間にか経営者からの指示待ち企業体質に変質させ、保守的な組織風土を
育ててしまいます。 そして、時代や社会との乖離が大きくなり、やがて事業は廃れていきます。
しかし事業にはたとえ少人数といえども、その従業員や家族の人生を預かっています。それが一番身近な社会貢献でもあります。
さらには、お客様や仕入先に対する責任もあります。
その意味で企業はゴーイングコンサーン(Going Concern)を目指さなくてはならず、強み伝いの経営だけに終始するのではなく、
経営者は常にお客様を見る経営をし、社内においても経営者ではなくお客様を見る組織風土にしていくことが大切です。
事業を継続させるには強み伝いの経営から常に脱皮を図ることが大切!