686.経営を高めるマーケティング②

2024年11月29日

 現在はこれまでの枠組みが変化しており(このようなことを「パラダイムシフト」という)、

その一番大きな影響を受ける中小・零細企業にこそ「マーケティング」が必要になっています。

そして前回684のコラムでは、そのポイントが「ニッチ」(小さな隙間市場で大手から見向きもされていない市場)と

「差別化」(自社の得意性を活かすこと)であると、説明しました。

 今回からはそのニッチと差別化をねらうマーケティング戦略のいくつかを、具体的に日常目線から紹介します。

 

1 ランチェスター戦略

 「ランチェスター戦略」は、これまで耳にされた人も多いかと思います。

ランチェスター戦略は弱者の戦略と強者の戦略として有名ですが、中小・零細企業にとっては大変参考になる経営戦略理論です。

 

(1)第一の法則「弱者の戦略」

 第一の法則は「弱者の戦略」と呼ばれ、一騎打ちの戦略であり、基本的には『数』の多い方が優勢になるということです。

つまり、弱者である中小・零細企業は一般的に商圏が狭いので、『数』を多くして競い合うことが有利ということです。

しかし、『数』にはいろいろな数があります。ここが大事なところです。

たとえば、店舗の数、品揃えの数、店舗の広さ、従業員の人数、営業の人数などが、一般的には思い浮かびますが、

それだけの発想では勝てない。 そこを考え抜いて戦略を立てることが大切です。

一般的に私たちはそのようなことを考えずに、ただやみくもに商売し、お客様の来店を待っていることが多いものです。

どうですか、一度、『数』というものについて、考え抜いてみませんか!?

自社にとって有利な『数』とは何にか? 考え抜いてみよう!

 

(2)第二の法則「強者の戦略」

 第二の法則は「強者の戦略」と呼ばれ、確率戦闘の法則や二乗の法則であり、『大量の武器』を持つ方が有利になる

ということです。

事業の経営資源とは「ヒト・モノ・カネ」でですが、ビジネスではこれらを圧倒的に多く持つ大企業が断然有利であり、

中小零細企業が同じ土俵に立って競い合っても太刀打ちはできません。

 大量の武器とは、広い売り場や圧倒的な品揃え数、多くの従業員、大量の広告・チラシ、多店舗などのことをいっています。

大企業と同じ土俵に立っても、中小・零細企業はかなわない!

 

 

2 具体的な「弱者の戦略」

 そんな状況下で、中小・零細企業が何も考えずに、同じ市場で大企業と競い合ったところで、かなうはずがありません。

そのような中で生き残るためには、局地戦に持ち込み、大量の武器があまり使えないようにし、中小・零細企業ならではの

土俵上で、大企業や他の競合店と競い合うことが大切になります。

中小・零細企業は中小・零細企業ならではの土俵で競い合うことが大切!

 

 そこでランチェスター戦略は『差別化』というものが大切だと説いており、局地戦や一騎打ち、接近戦などが重要だといって

います。

差別化とは、狭い地域で(局地)、お客様との密着(接近)、競合を絞り込み(一騎打ち)、これだけは負けないというモノ作り

(一点集中)、お客様の声を活用(陽動)、という考え方です。

 そこでランチェスター戦略では、次のようにいっています。

弱者の基本戦略は『差別化戦略』であり、

市場戦略は局地戦略、顧客戦略は接近戦略、競合戦略は一騎打ち戦略、

思考戦略は一点集中戦略、コミュニケーション戦略は陽動戦略が大事!

 

 以下にそれぞれについて、その考え方を紹介します。

 

(1)局地戦

 局地戦とは、広い地域や市場ではなく、狭い地域や市場で競い合うという考え方です。

また、一度にやろうとするのではなく、一つずつやっていく、そんなイメージです。

少ない経営資源を集中させて、強者である大企業や競合店が手を出せない『死角』や『ニッチ』を狙う戦略です。

つまり、

『局地戦』とは、限られた経営資源を集中投下することである!

 

(2)一騎打ち

 一騎打ちとは、文字通り1対1の戦いに持っていくことです。

1対1とは、「どこの」「だれに」「なにを」ということを掘り下げていくことです。

「どこ」とは、広いあいまいな地域ではなく、細分化した特定の地域ことです。

たとえば、出店は半径1キロ以内に同業他社が1店しかない場所を選ぶとか、なるべく近い場所に新規出店するとかなどです。

「だれ」とは、対象とするお客様の絞り込みです。

たとえば、顧客内のシェアの高い上顧客層や上得意先を優先する営業活動をするなどです。

これもついついボヤかしてしまいますが、絞り込んでもその波及効果は必ず隣接する顧客層にもありますので、

絞り込むぐらいの気持ちがちょうどいいと思われます。

「なに」とは、品揃えよりも、品目を絞り込むことです。

たとえば、品揃えを多くしようと考えても売り場が狭いので限界がありますので、むしろ商品を集中させて、

その代わりそのバリエーションに関しては他店に負けないという方向で考えることです。

つまり、

『一騎打ち』とは、小さな部分で規模の大小を消し去ることである!

 

(3)接近戦

 接近戦とは、お客様に対して遠くにいないで、近くにいるという考え方に徹することです。

また、間接販売より直接販売を考えます。

あるいは不特定多数販売より、継続性の高い贔屓客販売を志向する、顔がわかる顧客に育成するということなどがポイントです。

顧客と仲良くなることでコミュニケーションを密にし、さらにそれだけに甘えるのではなく、けじめは付けて信頼はきちんと得る

ことを目指します。

また、「お客様!」と二人称で呼ぶのではなく、「○○さん」と固有名詞で呼べるようにようにします。

顧客は『個客』です。

私たちはついつい、お客様と集合体で捉えがちですが、お客様が考えると、お客様はひとり一人独立しています。

ひとり一人のお客様と付き合う気持ちで接客することがポイントです。

ついつい、『one of them』と多くのお客様を集合体的に捉えていませんか?

しかし、お客様は一人ひとりがお客様『one of one』なのです。

つまり、

『接近戦』とは、お客様一人一人との親密性を持ち、寄り添って接客することである!

 

(4)一点集中主義

 一点集中主義とは、地域を絞る、顧客を絞る、製品を絞る、などということです。

 地域を絞るとは、営業地域を30分以内の地域に設定するとか、広い場合でも核となるお客様を中心点として

活動するということです。

 顧客を絞るとは、万人受けを考えず、一つの業種業態を特化するとか、ある客層に集中することをいいます。

 製品を絞るとは、売れている商品や流行の商品に特化する考え方のことをいいます。

つまり、

『一点集中』とは、逆に言えばやらないことを決めることである!

 

(5)陽動作戦

 陽動作戦とは、かく乱とか、その気にさせることを考えるということです。

たとえば、お客様のプライドをくすぐる、口コミを活用することなどが考えられます。

いま、飲食業ではインスタ映えするメニューとか、大盛りのメニューとか、驚くような看板メニューを持つところが増えています。

これも陽動作戦の一つです。

つまり、

『陽動作戦』とは、お客様をその気させることである!

 

(6)地域ナンバーワン

 ランチェスターでは、強い企業とは「売上ナンバーワン」ではなく、「占有率ナンバーワン」と定義しています。

それ以外は、すべて「弱者の企業」としています。

では、「強い企業はそれぞれの業界でたった1社だけか?」といえば、そうではありません。

そこで、ランチェスター戦略では、次のような思考を勧めています。

 

地元・分野・客層など、あらゆる分野の中でのナンバーワンとなろう!

 

 

3 ランチェスター戦略から学べること

(1)『数』の多い企業が断然有利

 われわれ中小・零細企業にとっては、少し悲しい結論ですが、現実は現実として直視する必要があります。

ヒトも、モノも、カネも、少ないのが私たち中小・零細企業であり、そもそも競い合うには不利な状況なのです。

だからこそ、中小・零細企業は「智慧」を絞って、活動する必要があります。

ここからも『経験』や『勘』だけに頼った経営では、もうダメだということが学べます。

 ヒト・モノ・カネが少ないからこそ、智慧と創意工夫、そしてスピードをもった経営が重要です。

「智慧」は少人数なので少し不利ですが、しかし「創意工夫」は小さな企業だからこそ、すぐにまとまるアドバンテージが

あります。「スピード」も同様です。

 そこで、ランチェスター戦略では次のように言っています。

 

『数』が少ない企業には、局地戦・接近戦・一騎打ちが基本戦略である!

 

(2)シェアナンバーワンが、なぜ、重要のなか?

 現在はいうまでもなく(特に日本は)「低成長」「市場縮小」の時代となっています。

したがって、われわれ中小・零細企業は、小さな何かでナンバーワンにならないと、その存在価値をお客様に示すことが

できなくなります。

そして、そのナンバーワンになるには『原理原則』があります。 それが『ランチェスター戦略』なのです。

 

 

ランチェスター戦略を参考に経営戦略を考え直すと、必ず何かヒントがある!