687.経営を高めるマーケティング③
2024年12月7日
『バリュー・プロポジション』という用語はあまり聞かない言葉で難しそうな言葉ですが、ランチェスター戦略の「局地戦」や
「一転集中主義」の具体的な考え方とも言えます。
是非とも、この考え方を参考にして、他社にはない自社ならではの魅力をお客様に伝え、ブルーオーシャンを目指しましょう。
1 バリュープロポジションとは
バリュー(value)とは、価値とか値打ちという意味です。
プロポジション(proposition)とは、提案とか主張という意味です。
つまり、『バリュープロポジション』とは、お客様にこれまでとは違う価値感を訴求して、他社と競い合うことなく、業績を上げる
考え方です。
具体的には、まずお客様が望んでいる価値を考え抜き、他社がいま提供しているサービスを考え、それとは重ならない自社の資源
で提供できるサービスを考えることです。
そのことを図示すると、下図のようなイメージになります。
①まず、お客様が望んでいると思われる価値の円があります。
②そして先行している他社が提供しているサービス・価値の円があります。
③その重なっているところが先例となって多くの後発事業者が参入し、似たようなサービスを展開することとなります。
そうすると、3つの円が重なった部分で激しい競争を繰り広げることとなり、やがて過当競争を招き、強者の企業だけが
勝ち残ることになります。
このことを『レッドオーシャン』(血まみれの海)といいます。
④この『バリュープロポジション』はそうではなく、ちょっと競争の軸を他社とは外し、独自の価値路線を目指そうと考えます。
自社独自の付加価値路線を目指し、『ブルーオーシャン』といわれます。
どんな業界でもこのような競争が行われており、激しい競争のうえ、最終的には価格競争に向かいがちとなります。
なぜなら、すべて同じような価値感なので、差をつけるには提供価格でしたなくなるからです。
しかし、一部の企業では、既成の価値領域での競い合いを外した企業も多く存在します。
たとえば、創世記のマクドナルドがそうであり、理容業界のQBハウスもそうですし、レストランのサイデリアなどもそうです。
ではその中の1社である、ジャパネットたかたは、なぜ、あんなに売れるのでしょうか?
ジャパネットたかたが販売している家電製品などはどこにでも売っている家電製品であり、かつ品揃えも豊富ではありません。
しかし、ジャパネットにかかれば、飛ぶように売れるといわれています。
そこにはいろいろな『バリュープロポジション』が隠されているようです。
①たとえば、商品の説明。
ありきたりの商品の説明をするのではなく、視聴者にとってわかりやすく、納得感があり、かつ見える化を心掛けています。
②たとえば、品物を絞る代わりに大量仕入をし、ボリュームディスカウントをしています。
それも本体だけでなく、取付費用や搬入費用、下取りなどで値引きを行い、視聴者がディスカウントを肌で感じるように
しています。
③たとえば、実売店舗は持っていません。
その代わりに自社スタジオを持ち、空中戦に徹しています。そのため、ディカウントの原資も出てくるといわれています。
④たとえば、少人数経営を徹底しています。
企業で一番大きな費用と言えば「人件費」です。
ジャパネットはメディアを通じて販売しているだけなので、非常に少人数で運営されています。
そのほかはすべてアウトソーシングし、社員数が少ない分、ディカウントに資金を回すことができます。
⑤注文を受けたなら、スピード配送に徹しています。
お客様はいざ注文されると、すぐにでも商品を手にしたいと思うものです。
ジャパネットはそんな顧客ニーズにも応えています。
⑥電話のかかりにくさを見える化しています。
テレビ画面を通じてオペレータの稼働状況を見える化し、つながらないイライラ感をあらかじめ失くすととともに、
早くかけようという動機付けにも結びつけています。
これらのことで『バリュープロポジション』を築き、他社とは競合にならないようにしている!
2 バリュープロポジションを築く上でのポイント
では、バリュープロポジションを築く上でのポイントは何でしょうか?
一般的にはお客様が望んでいるポピュラーな価値感に対して、誰もが提供できる価値の枠の中で競い合うので「過当競争」が
生まれます。
そこでバリュープロポジションでは、そこを外し、自社だけが提供できるサービスで勝負に挑もうという考え方に徹します。
したがって、ある意味、いままで顧みられなかった価値感で勝負するわけですから、根気と勇気がいる戦略と言えます。
バリュープロポジションは勇気と根気がKFS!
そのポイントは次の4点です。
(1)顧客の視点で考える
顧客になり切って不便さはどこにあるのだろうか、隠れたニース・便利さはどこにあるのかを真剣に討論する必要があります。
ふと思い浮かぶ時もあれば、生む苦しみを味合うこともあるかと思います。
徹底的に仮設を立てることが大事です。
(2)顧客ニーズを絞り込む
一口に「顧客ニーズ」と言ってもたいへん多くあり、かつ小さな事業にならないニーズから大きなニーズまでいろいろあります。
その絞り込みが大変大事です。
また絞り込んだニーズが必ず受け入れられるとは限りませんから、そこに至った経緯などを記録しておくことも大事だし、
上がったその他のニーズも記録しておく小ことが大変大事です。
舵を切り替えるときことは度々あると思われるので、その時の貴重な資料となります。
(3)他社と同じことはやらない
バリューポロポジションの大きなポイントは他社との違いがお客様に理解できることです。
そのためには、他社と同じこと、よく似たことはやらないということが必須です。
いかに、他社との違いを明確にするか、これもたいへん大事なことです。
(4)根気強くやる
成功している企業を見ると、最初から成功しているように思ってしまいますが、
それは成功後の印象が強いのでそう錯覚しているだけで、実がそうではないことが多い。
まして、最初はだれも気付かないようなことをアピールピントにして販売促進するわけだけだから、
息の根が長い活動をすることが非常に大事になる。
えてして、中小零細企業の場合は朝令暮改も多いので、殊、バリュープロポジションの構築に関しては粘り強く行う必要がある。
このように考えてみると、バリュー・プロポジションはやってみる価値は大いにある!
3 街角の家電店に学ぶ
家電といえば、大型家電量販店やネット通販で購入するのが常識のようになっています。
量販店が提供できる「価値」は、廉価販売と豊富な品揃えです。
ネット通販が提供できる「価値」は、価格と販売員等のわずらわしさからの解放です。
ただ、両者とも販売量がカギを握っているので、広い商圏と幅広い顧客層を前提に成り立っています。
そこで一方、街角の家電屋さんは、それほどの廉価販売もできず、品揃えも乏しいのですが、
地域密着型のサービスができるという量販店やネット通販にはない「価値」を持っています。
特にこの価値が、狭い商圏とシニア層のうえで成り立っているということです。
シニア層が望んでいる価値は、購入後のアフターサービスであり、ちょっとしたことでもすぐに来てくれる気楽さであり、
すごい値引きは望んでいません。
街角家電店はお客様が望み、量販店やネット通販ではできない『サービス』で勝ち残っている!
どんな仕事や事業にもこのようなことがあるのではないのでしょうか。
バリュープロポジションは赤字経営が多い中小零細企業に対して大いなるヒントを与えてくれる。
私たちはあまりにも横並びの経営をし過ぎているのではないのでしょうか、それを常識とか固定観念といいます。
常識や固定観念という枠の外に出ることによって、初めてバリュープロポジションは実現可能となる。