691.経営を高めるマーケティング⑦
2025年1月24日
さて、米国大統領としてトランプ大統領が再就任し、またまた世界の環境は大きく変わると言われている。
現実的にそのことがどこまで中小零細企業の経営に影響を及ぼすのかわからないが、こう大騒ぎされると、
不安を感じてしまうのが人間の心理というものです。
そうなると、そんな不安を払しょくするためにも、しっかりした経営手腕が求められてくる。
そこで大事なのが『経営を高めるマーケティング』だと思う。
このシリーズの最後して、SWOT分析に基づく『SWOTマトリクス』を紹介しよう。
SWOT分析は、単なる分析手法と理解されている場合が多いが、それはSWOTの前半部分に過ぎない。
その真髄は、そのSWOT分析に基づいて、経営戦略にまとめることにある。
そのことを『SWOTマトリクス』と言う。
1 SWOT分析とは
まずSWOT分析とは、内部環境である自社の強みと弱み、及び外部環境である自社の経営環境の機会と脅威という
4つの視点から、自社の経営環境を分析する手法だ。
大事なことは、分析することだけに終わるのではなく、この分析を基に経営戦略まで練ることだ。
この後半部分のことを『SWOTマトリクス』と呼び、それは次の4つの戦略に展開される。
(1)外部環境の機会(O)を内部環境の強み(S)で展開する戦略 ⇒機会を強みによって一層活かす戦略 ⇒OS戦略
(2)外部環境の機会(O)で内部環境の弱み(W)をカバーする戦略 ⇒機会で弱みを解消する戦略 ⇒OW戦略
(3)外部環境の脅威(T)を内部環境の強み(S)で抑える戦略 ⇒脅威を強みで最小化する戦略 ⇒TS戦略
(4)外部環境の脅威(T)と内部環境の弱み(W)を避ける戦略 ⇒脅威と弱みによる悪影響を避ける戦略 ⇒TW戦略
つまり、SWOTマトリクスとは、下図のようにSWOT分析を基に自社の経営戦略を構築する手法なのです。
なお、外部環境同志で、あるいは内部環境同志で戦略を構築することはあり得ない。
2 SWOT分析で内部環境と外部環境をまとめる
経営環境を分析する手法としては、組織分析、経験曲線効果分析、PPM分析、ライフサイクル分析、財務分析、情報装備分析、
PEST分析、5フォース分析、パレート分析など、多くの手法があるが、SWOT分析はそれらをまとめる手法として位置付ける
こともできる。
つまり、さまざまな手法で分析した結果を、強み・弱み・機会・脅威に分類し、漏れることなく、自社の経営環境を捉えることが
できる。
もちろん、いきなりSWOT分析をしてもいいわけだが、なかなか自社の経営環境を振り返る機会はないので、1年に1回くらいは
このように漏れることなく、SWOT分析をすることも有効だと思われる。
3 SWOTマトリクスで戦略を考える
(1)機会を強みによって一層活かす『OS戦略』
外部のさまざまな好機を自社の強みによって活かす戦略は、自社にとって第一優先の戦略だ。
この戦略の最大な点は、一気呵成にすばやく取り組む『スピード感』だ。
(2)機会で弱みを解消する『OW』戦略
機会を弱みで解消する戦略とは、自社の弱点をビジネスチャンスで補完するという戦略だ。
たとえば、飲食店でオーガニック料理を売りにしているためにどうしても料金が高めとなり集客に苦労している場合、
食品の安全や健康に消費者の関心が高いことを好機に、オーガニックというものをよりお客様にわかり易いように説明を加えるなど
試みることが考えられる。
(3)脅威を強みで最小化する『TS』戦略
外部環境の脅威を自社の強みで最小化する戦略とは、近く訪れるかもしれない経営環境の危機を自社の強みで前もって最小化する
努力をしたり、あるいはこの自社だけないピンチを逆にチャンスと捉える発想に転換する考え方だ。
まさにいま、トランプ大統領が再就任しいろいろと騒がれているが、その時世にあった考え方かもしれない。
たとえば、ガソリンスタンド店であれば、石油価格の再高騰やさらにはEV化の影響を受けることは必至だ。
そこで天気予報の如く、事前にガソリン価格動向予想などをお客様に事前に提供し、なるべく安く給油できる情報を与えたり、
EV化における対応を事前に知らせておくことなど、将来の安心を提供しておくなどが考えられる。
(4)脅威と弱みによる悪影響を回避する『TW』戦略
経営環境の脅威と自社の弱みによる悪影響を避ける戦略とは、単純には撤退するということになるが、いまひとつはシフト戦略も
考えられる。
シフト戦略とは、自社の経営資源の見方を変えて、他に置き換えられないかということを考えるということだ。
たとえばカラオケ店であれば、店の経営資源をアングルを変えて考えれば、それは快適なレンタルルームであり、
防音設備であり、マイク設備であり、軽食の提供などと見ることができる。
このように経営資源の見方を変えてバラらしていくと、これら経営資源を少し置き換えさえすれば、事業領域をシフトさせることが
可能となることに気づくことができる。
仮に、あとゲームや幼児向け音源などを加えれば幼児向けのルームにできたり、趣味のレンタルスペースやビジネス向けのレンタル
スペースなどにも転用できる。
撤退とは退くことばかりでなく、業態変更として捉えることもできる。
3 SWOTマトリクスで大切なこと
(1)他ではやっていないことからと避けてしまうこと
これらの戦略を発想する上でもっとも気をつけるべきことは、「そんなことは他ではやっていない!?」という疑問だ。
だから一般的には思いとどまってしまうのだが、実はそこに『チャンス』があるかもしれないということだ。
ほかでもやっているということは、確かに安心感はあるが、それでは独自性を拓けない。
「戦いのない青い海は、誰もいないところにある」というのが格言だ。
(2)機会×強み『OS戦略』が一番重要
SWOTマトリクスの中で最も重要な戦略は、機会を強みによって一層活かす『OS戦略』であることは言うまでもない。
つまり、4つの戦略をすべて、入念に考える必要はまったくない。
機会と強みを活かす戦略はじっくり考える必要がある。
(3)あり得ない戦略
外部環境同士の「機会によって脅威を消す戦略」や内部環境同士の「強みによって弱みをカバーする戦略」という考え方は、
一見ありそうだが、そんな戦略はない。
機会はあくまでの活かすものであり、脅威は避けるものだ。
強みで弱みを隠すことはできない。強みは伸ばしたりアピールするものであり、弱みは無くする努力をするものだ。
戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることだ。
われわれは思っている以上に、思い込みに囚われて生活や仕事をしている。その結果が「いま」であることを忘れてはいけない。
したがって、違う結果を得たいのであれば、その『思い込み』を打ち破るしかない。