695.事業の方向を探る ハフル(HAFL)分析
2025年2月21日
前回は、外部環境の『脅威』を分析する手法を紹介しました。
同様に多くの問合せをいただくのが、自社の『経営資産』に関する分析です。
意外と経営資産に関する分析手法は一般的に知られていませんが、マーケティングにはしっかりあります。
それがこれからご紹介する『ハフル分析』です。
1 ハフル(HAFL)分析とは
企業の資産としてよく「ヒト・モノ・カネ・情報」という言い方がされます。
しかし、経営に資する資産となると、人材であり、設備であり、資金力であり、そして企業としての能力です。
それらの頭文字をとって『ハフル(HAFL分析』という分析手法があります。
(1)H:Human resources
Hとは、ヒューマンリソースの頭文字です。
ヒューマン・リソースとは「人材」のことをいいますが、ポイントは自社の人材について表面的に分析するのではなく、
もう少し掘り下げて、自社の人材のポテンシャルというものを分析することです。
たとえば、「うちには営業力がない」、「うちはやる気がない」などという表面的で感覚的なことだけではなく、
「秘めたチャレンジ精神」とか、「容易には屈しない探求心、タフさ」とか、「固定観念に囚われない発想力」など、
表面に現れている氷山の下にある、海面下の氷の塊を見ようとする姿勢が大事です。
中小の企業はどこでも「人材」は限られています。それだけに従業員を丁寧に、こと細かく見る姿勢が重要です。
したがって、上辺だけで判断するのではなく、隠れた資質を掘り下げて人材を評価することが大切になります。
それには大企業ではできない、中小企業の経営陣と従業員との密着度を活かすことが大切です。
さらにそのような姿勢がまた、人材を活性化していくことにもつながっていくことになります。
(2)A:Assets
Aは、アセットの頭文字です。
アセットとは「資産」のことをいいますが、機械設備や情報設備はもちろん、ソフトウェアなどに加えて、技術力も含まれます。
これは比較的、分析しやすいと思われるかもわかりませんが、「何か別のことにも転用できないだろうか」という、別次元の発想を
持つことが大事です。
中小企業は資産も限られています。
その貴重な資産を型通りに活用するだけではなく、もっと別の角度からも見る習性を身につけ、かつ資産の中に必ず自社の技術力も
含まれますので、それを忘れずに多角的に資産分析することが大切です。
(3)F:Funds
Fとは、ファンドの頭文字です。
ファンドとは「資金」のことですが、これも中小企業の弱いところで、それが少ないから中小企業なのです。
しかしこのファンドも自己資金だけで捉えるのではなく、金融機関からの支援も含めて分析することが重要です。
そう考えると、日頃からの金融機関とのコミュニケーションや信用力アップなどを心掛けることが大切なことに気付きます。
金融機関を自社のファンドと捉えると、隠し立てすることなく、月次試算表や決算書あるいは経営計画書などで説明することや、
ときには重要な社内会議にも招待することなども大切です。
このように応対することで、一般的にはこのように金融機関を歓迎する中小企業は少ないこともあり、金融機関も親身になって、
あなたの事業の大きな味方になってくれるかもわかりません。
(4)L:Literacy
Lとは、リテラシーの頭文字です。
最近よく聞くようになった「リテラシー」という言葉ですが、本来は「読み書き能力」のことを指します。
つまり、識字とか、識字率という言葉と同義語です。
ここではそれをもう少し広く解釈し、「使いこなせる能力」という意味で使われています。
何を使いこなせる能力なのかといえば、それはITであり、英語です。
ITは、中小企業も使いこなせなくてはなりません。これは必須要件というよりも、もう常識と言っていいくらいです。
ソフトウェアはもちろんのこと、ウェブサイトやクラウドコンピューティングなど、それらを使いこなせれば使いこなせるほど
大きな武器となります。
また英語・英会話も必須となってきています。
商取引は国内だけではなく、海外にも広がることが日常的に起こって来ているからです。
さらに、会計やマーケティング、統計に基づく分析など、中小企業だからこそ、使えないといけないと考えることが重要です。
2 HAFL分析の必要性
中小の企業にとって「HAFL分析」の必要性はいうまでもありません。
それは「中小企業」という言葉が示すとおり、経営の資源が少ないからです。
このような分析になると、「大企業には必要だろうが、中小零細の我々には関係がない」と思考を閉じている中小企業経営者が
多い中で、それは全くの考え違いです。
少ない経営資源しかないからこそ、それらを逆に一つ一つ大切にして、大企業よりも活かすという考え方をしないと、
これからの時代は生き残っていけません。
企業調査会社などの調査結果を見ても、その傾向はハッキリと出ています。
したがって、中小企業だからこそ、自社の内部環境を詳細に把握し、ポテンシャルを活かすことが大切です。
このハフル分析は内部環境を網羅的に洗い出せる分析手法です。 是非とも実践されることをおススメします。
自社の内部環境や経営資源状況を分析してその強みを活かすことは、自社の競争力を高め、存在感を高めることにつながります。
中小零細企業は大企業とは違い、大変弱い存在です。
一説にはこれからの数年間に、中小零細企業の大淘汰時代がやってくるとも言われています。
そのような荒海を乗り越えて穏やかな内海の中で経営をしていくためにも、このような外部環境分析を行い、できる限り事前の
対策を講じることが大切です。
そのことが結果的に『環境適応適応戦略』といわれるものにつながっていきます。