696.事業の方向を探る ポートフォリオ分析
2025年2月28日
今回は外部環境や内部環境から外れ、自社の商品や製品・サービスなどに関する分析手法を紹介します。
これらの分析手法として、『ポートフォリオ分析』や『ライフサイクル分析』などが挙げられます。
これらは、自社商品・製品・サービスなどに対する戦略の意思決定や経営資源投入についての意思決定をする場合に用いられます。
1 ポートフォリオ分析
《ポートフォリオ分析イメージ図》
「ポートフォリオ」とは、自社商品や製品・サービスの組み合わせを制御したり、コントロールをするという意味です。
したがってポートフォリオ分析は「最大の事業資金を生み出すために、自社の商品・製品・サービスの中でどれに営業力を傾注し、
事業資金を投じるのか?!」ということを意思決定するための分析手法です。
あまり難しく考えないで、まずは自社の商品等について、「金のなる木」「花形」「問題児」「負け犬」の4つのカテゴリーに
分けることから始めます。
(1)「金のなる木」
「金のなる木」とは、いま、それほど資金を注入しなくても売れる商品群のことです。
したがって、自社にとっては資金を稼げる商品群です。
いわゆる自社の定番商品とか、看板商品みたいなイメージであり、野球でたとえれば「レギュラー選手」にあたります。
(2)「花形」
「花形」とは、いま売り出し中の商品群のことです。
したがって、資金も投入はしますが、同時にそれなりの資金を稼いでくれる商品群です。
たとえば、売り出し中の商品であるとか、話題の商品みたいなイメージであり、野球でたとえれば「スター選手」にあたります。
(3)「問題児」
「問題児」とは、売り出そうとして考えて資金を投入しているが、なかなかそう思うようにまだ売れない商品群のことです。
いわゆる、将来を担う商品というイメージであり、野球でたとえれば、将来を嘱望されている「新人選手」にあたります。
(4)「負け犬」
「負け犬」とは、以前はよく売れたが、いまは流行も変わり、あまり売れなくなってしまった商品のことです。
これまでは売れては来たが売上が落てきた商品や、売れると思っていたが結局あまり売れなかった商品というイメージであり、
野球でたとえれば、「引退間近の選手」や、期待はされてはいたが結局は一軍ではあまり「活躍できなかった選手」にあたります。
ポートフォリオ分析の原則は、「金のなる木」から得た資金を「問題児」に投入し、「花形」に育てるという流れになります。
このポートフォリオ分析によって、自社の商品に対する「力の入れ具合」を意思決定します。
2 ライフサイクル分析
《ライフサイクル分析イメージ図》
ライフサイクルとは、「商品の需要生命段階」という意味です。
商品は一般的に、やがては需要の減少期を迎え、さらには需要が無くなってしまうというサイクルを繰り返します。
したがって、ライフサイクル分析とは「自社の商品・製品・サービスがどのステージにあるのか」を判断し、
次代の商品開発を考えていくことです。
商品等のライフサイクルは、売上または収益の軸と時間の軸によって、次の4つのステージに分けられます。
(1)導入期
導入期とは、最初の段階のことであり、まだ知名度や認知度も低く、市場の需要も低い段階のことです。
いわゆる「低成長時期」でもあります。
このとき、需要の低さが商品ポテンシャル自体にあるのか、それとも単に認知度が低いためにあるのかを見極めることが大切です。
この段階は、ポートフォリオ分析に置き換えると「問題児」に当たります。
(2)成長期
成長期とは、導入期の次の段階であり、このステージに入ると商品需要も喚起され、ニーズも高まり、また競合も増えてきます。
いわゆる「急成長時期」のことです。
この段階では、商品自体は放っておいても市場が拡大していきますので売れますが、一番の問題は「シェア獲得」です。
このシェア獲得が、次の段階での資金獲得の重要な要因になります。
この段階は、ポートフォリオ分析に置き換えると「花形」に当たります。
(4)成熟期
成熟期とは、マーケットシェアも安定して、もうこれ以上は新規の競合も現れて来ないという状況です。
したがって、ある程度、売上と利益が安定しますので、獲得できる資金も計算できる状況となります。
いわゆる「商品ピーク時期」のことです。
事業としては、獲得しているシェアを失わないように営業努力することが大切で、次に続く商品開発も考えねばなりません。
この段階は、ポートフォリオ分析に置き換えると「金の生る木」に当たります。
(4)衰退期
衰退期とは、成熟期の次に迎える、需要が衰えてくる状況のことです。
衰退期に入ると、商品に対するニーズが低下し始め、売上や利益、そして競争相手も無くなります。
もちろん、経営的には市場撤退時期も視野に入れておかねばなりません。
この衰退期では収益をなるべく減らさず、コストもあまりかけないという経営手腕が、資金流出入的には重要となります。
ある意味、一番、経営手腕が問われるところでもあります。
この段階は、ポートフォリオ分析に置き換えると「負け犬」に当たります。
ただ漠然と商品を売り続けるではなく、市場とのコミュニケーションを敏感にして、自社の商品状況を判断することが大切です。
それによって経営環境に負けない経営ができるようになります。
経営戦略を考えるにあたって重要なことは、まず市場の反応に敏感になり、市場の動きを察知することです。
そして、いつの間にか社内にはびこっている『思い込み』なるものを、打ち破る『勇気』が大切です。
われわれは思いのほか、思い込みに囚われながら生活や仕事をしているものです。そして結果が「いま」となって現れています。
したがって、いまと違う結果を得るためには、その『思い込み』を打ち破るしかありません。
マーケティング思考はそのデータと判断を与えてくれますので、あと必要なのは自らの『勇気』のみです。
そのことが結果的に、『環境適応適応戦略』といわれるものにつながっていきます。