701.人材力を高める 経営方針
2025年4月4日
中小企業には限られた人材しかいないので、何とかして、今の人材力を高めたいと経営者なら考えるものです。
その人材力を高める基本的な要件が、前回・前々回の「社是」の制定であり、「経営理念」の制定です。
なぜかといえば、それらが職場の士気を高める基本要件だからです。
しかしそれを浸透させていくためには、人は皆それぞれ違う人生を送り、違った価値観を持っていることということを
理解しなければなりません。
なぜなら、社是や経営理念はそういったいろいろな価値観を持った人たちに浸透させなければならないからです。
それぞれ違う価値観を持つ人に社是や経営理念の納得感を得るためには、経営者の経営哲学ともいえる社是や経営理念を
常に客観視して、全員が理解と納得感を持てるものにして行かねばなりません。
事業がうまくいけばいくほど従業員が増えてきますので、事業規模が大きくなればなるほど、そのような自問自答をすることが
大切なこととなって来ます。
そこのところを経営者自身がよく理解をして、全員が理解と納得ができる社是と経営理念にしようという姿勢を持たない限り、
結局は経営者だけが思い上がった身勝手な社是・経営理念となってしまいます。
しかしそのようなことを指摘やアドバイスしてくれる人は社内や身近にはいませんから、経営者自ら気づくしかありません。
だからこそ、経営者には「謙虚な姿勢」が強く求められるのです。
経営者には謙虚な姿勢が強く求められる!
そのような姿勢を持たない経営者に限って、自社の人材に対して、不満を口にする人が多いということも事実です。
今回は、社是や経営理念に基づいた「経営方針」について説明します。
1 よくありがちな経営方針
経営方針とは、社是や経営理念に基づいた「年間の具体的な経営の方向を示す宣言書」と言えます。
したがって、経営方針は社員や顧客、取引先や社会に向けた「1年間の具体的な活動方針」が述べられていなくてはなりません。
この1年間で、どう社員に貢献するのか、どうお客様に貢献するのかなど、具体的に語られていることが必要です。
経営方針によく欠落しているのは「社員」に対する貢献であり、約束事です!
よく経営者は自身と混同して、社員にも「自分と同じ思いを持ってほしい」を想いがちになります。
しかし、そもそもその考え方が間違っているのです(気持ちはわからないでもないですが)。
だから「社員はよく考えていない」などの愚痴が出ることになるのです。
経営者はそれなりの想いを持って起業しますが、社員は「この勤め先ならいいだろう」と判断して入社してくるのであって、
仕事の内容や自分の処遇、将来像などで選んで入社してくるわけです。
したがって、経営者と同じ想いにはならないわけです。
経営者と同じ創業の『想い』や『志』を持った社員が入社してくるわけではない!
この当たり前のことに気づけば、経営上、最も一番最初に貢献しなければならない社会とは「従業員とその家族」であることに
気づけます。 それなのに、経営方針で社員に対する思いが語られていない経営方針が多すぎます。
経営方針にあるのは社員に求めることばかり!
そのようなはありませんか? そこであらためて経営方針というものについて考えてみましょう。
2 経営方針とは
経営方針とは、事業を展開するための今期の目標であり、経営理念を実現するために取るべき行動や方向性を示すものだと
一般的には説明されています。
そして経営方針があると、経営戦略や従業員に求める行動に一貫性が持てるようになるとも言われます。
つまり、事業は考え方が異なる多数の人が集まって形成されていますので、そのままでは一致団結して事業展開に臨めず、
結果として生産性なども高めることはできません。
そこで、経営方針から共通の考えや目標を浸透させ、行動判断の基準に一貫性を持たせるようにすることで、従業員を同じ方向に
向けた行動をとらせられるようになると言われています。
しかし、このような一般的な経営方針の教義・理解が、浸透させられない経営方針になる原因となっているのです。
こんな経営方針の教義・理解が間違いの元!
そうではなく、経営方針とは冒頭で述べたとおり、「事業を展開するための今期の目標」なのです。
したがって、従業員・顧客・取引先・社会などに向けた今期の目標を明らかにし、結果として事業の発展につなが下ていくことが
経営方針の目的なのです。
3 経営方針の考え方
では、経営方針はどのように考えて作れば良いのでしょうか。
(1)企業理念に基づいて経営方針を検討する
経営方針は経営理念を実現するための具体的な行動目標ですから、経営理念をベースに考えることになります。
そのためにも、経営の軸が示された「経営理念がある」ということが前提となります。
経営の軸とは、価値観、将来像、使命などが挙げられます。
(2)5つの視点から経営方針を深掘りする
5つの視点とは、会社、商品、顧客、従業員、社会です。
この5つの視点から経営方針として落とし込むと良いと思われますが、この中で何と言っても重要なのは「従業員」です。
なぜなら、従業員の力がないと他の4つの視点は実現できないからです。
①会 社 会社が大切にする考え方、価値観とは何なのか
②商 品 どういった商品・サービスを開発・提供したいのか
③顧 客 会社が顧客にできること、提供したい価値は何のか
④従業員 従業員に求める行動・姿勢と会社が従業員に提供できる価値は何のか
⑤社 会(地域) 社会・地域に対してどのように貢献したいのか
経営は上記5つの要素から成り立つものであり、それらを明確にすると経営方針を考えやすくなります。
(3)課題と目標にリンクさせる
財務状況や従業員のパフォーマンスなどに着目し、現状を分析して、組織や事業における課題を把握します。
経営方針は企業をより良い方向へと進めていくためのものですから、課題を解決していくことでパフォーマンスの向上や利益の最大
化につながることが大切です。
従業員に期待する行動を示し、課題を解決していくことが重要であり、そのための指針となるのが経営方針なのです。
また、経営方針を具体化するにあたって、目標を明確にすることも大切です。
利益目標や生産目標、人事目標などテーマごとに目標を数値化し、その達成のための戦略を考え、経営方針に落とし込みます。
このとき、利益に直結する商品・サービスや顧客だけでなく、社会・取引先などへの姿勢も加えることがポイントです。
経営方針は課題と目標にリンクさせられれば理想的!
4.経営方針策定のポイント
わかりやすく、納得感がある経営方針を策定するには、次のようなことをポイントに策定すればよいかもわかりません。
(1)わかりやすく具体的に作る
経営理念は抽象的な場合が多いので、経営理念だけでは社員は具体的な行動につなげることができません。
そこで、経営理念で求める姿を具体化するのが、経営方針の役割なのです。
そのためには、自分の役割を発揮できるようにするためにも、当事者意識が持てる経営方針を策定することが重要になります。
具体的な行動がイメージできる経営方針は良いと思われますが、そのあまり、数が多くなり過ぎないように気をつけます。
あまりにも経営方針が多いと焦点がボケてしまい、何からすればよいのかわからなくなってしまいます。
経営方針があまりに多いと、方針でなくなる!
(2)ストーリー性を持たせる
5つの視点である、会社、商品、顧客、従業員、社会から、ストーリー性を持たせることができば理想的です。
ストーリー性があると、自ずと経営方針を頭に思い浮かべることがしやすくなります。
たとえば、経営理念が「お客様と地域の利便性向上に貢献し、従業員の幸せを実現する」であったなら、
経営方針の例として下記のようなものになります。
①商品・サービス 生活が便利で豊かになる、商品を開発・提供して
②顧客 お客様の豊かで便利な生活を実現し
③従業員 同時に自分の成長が感じられ、充実した未来が見え
④社会(地域) 地域社会に愛されながら、なくてはならない事業を目指し
⑤会社 お客様と地域の利便性向上に貢献し、従業員の幸せを実現できる企業に近づけて行きます。
経営方針にストーリーがあれば理想的!
(3)従業員の納得と共感を得る
従業員が納得・共感できない経営方針は画餅になってしまいます。
そのためには、経営方針は経営者としての意志や意図が伝わるよう、借り物ではなく、自らの言葉で策定することが大切です。
従業員は意外と、経営者に対ては大きな期待を持っているのです。
その経営者が心底考え、自分の言葉で語った経営方針は説得力があり、心に染み入るものがあります。
それなのに、たとえ良い内容であっても経営者の行動と矛盾しているとか、書籍からそのまま引用した経営方針では、
当事者意識が持てず、従業員の心には響きませんので、経営方針を実現しようと思えなくなってしまいます。
そのため、内容、文章に経営者として思いを込めた経営方針を策定することが大切です。
加えて、従業員だけでなく、顧客や取引先、取引金融機関などが読んでも、納得・共感できる内容であるとなお理想的です。
従業員も共感・納得できることが経営方針の第一要件!
中小零細企業には確かに限られた人材しかいませんが、しかしトップと従業員の距離が身近というアドバンテージがあります。
トップの真摯な姿勢が理解できれば、従業員の力もまとまります、その処方箋が「経営方針」です!