58.耐久力を知る①百分率BS
2010年7月30日
経営環境は改善方向にあるようですが、EU圏の経済不安定さ、米国経済復興の不確実さ、中国経済のバブル危機と政情不安、円高、日本政治の混迷、成熟社会、市場縮小、デフレ経済、中小企業金融円滑化法の返済猶予期間切れなど不安定な因子は多くあり、これから下半期に向けてまだまだ予断を許しません。
当研究所は中期的には日本経済は世界においてナンバーワンになると予測していますが、それまでにはいま一度厳しい局面を迎えると思っています。そのような中で最重要経営課題は、『売上の拡大』と『会社耐久力の強化』です。
しかし、何回も言いますが、仮に日本経済が回復するしても、それは以前のような戦後復興期のような日本全体がバブルに浮かれていたような高度経済成長時代に戻るわけではありません。しっかりした経営管理、経営マネジメントが求められます。
そこで今回は会計資料から、簡単な『自社の耐久力』を知る方法をご紹介します。ぜひ、月次試算表から、自社の耐久力についてご確認されることをお勧めいたします。
1.百分率および回転期間B/Sを作ってみる
例えば、次のようなB/Sで、年商が3650万円(日商10万円)であったら、総資産あるいは総資本を100%として各科目の構成比と日商10万円で割った回転期間を計算します。
現預金 100万円( 5.0%)( 10日) 買入債務 500万円( 25.0%)( 50日)
売上債権 500万円( 25.0%)( 50日) 短期借入金 150万円( 7.5%)( 15日)
有価証券 50万円( 2.5%)( 5日) 他流動負債 350万円( 17.5%)( 35日)
当座資産 650万円( 32.5%)( 65日) 流動負債 1000万円( 50.0%)(100日)
棚卸資産 350万円( 17.5%)( 35日) 長期借入金 500万円( 25.0%)( 50日)
流動資産1000万円( 50.0%)(100日) 役員借入金 200万円( 10.0%)( 20日)
固定資産1000万円( 50.0%)(100日) 負債 1700万円( 85.0%)(170日)
繰延資産 0万円( 0.0%)( 0日) 純資産 300万円( 15.0%)( 30日)
総資産 2000万円(100.0%)(200日) 総資本 2000万円(100.0%)(200日)
どうですか、こうして見ると、数字で見えなかったものが見えてきませんか?
2.資産と負債を比べて、見る
①当座資産(32.5%)と流動負債(50.0%)]を比べる
流動負債が50.0%あるのに、当座資産は32.5%しかない。流動負債は返済期間が短い借金です。それに対してすぐ資金化できる形で運用している資産が32.5%しかない。このことを『当座比率』と言うのでしたよね。計算すると当座比率は65%です。少し問題がありそうであることが読み取れます。
②流動資産(50.0%)と流動負債(50.0%)]を比べる
流動負債と流動資産が同額である。流動負債は返済期間が短い借金であることは先ほど言いました。それを比較的短期間で資金化見込みある資産での運用が丁度同じです。もし、売上債権や棚卸資産の中に、不良債権、不良在庫があれば足りません。まずは売上債権、棚卸資産の中に不良資産がないか、調査してみる必要があります。いずれにせよ、流動負債と流動資産が同額とは、少し資金運用に問題があるようだとわかります。なお、このことを『流動比率』と言うのでしたよね。
③固定資産(50.0%)と純資産(15.0%)を比べる
固定資産と純資産を比べると、固定資産の調達資金として純資産つまり自己資本が3割も満たないことがわかります。足らない分は他人資本から調達していることになりますから、ちょっと問題です。このことを『固定比率』と言うのでしたよね。
④固定資産(50.0%)と長期返済資本(純資産+固定負債)(50%)を比べる
固定資産と長期返済資本を比べると、固定資産と同額です。つまり、固定資産の調達資金は長期返済資本で全部まかなわれていることになります。家計で言えば、住宅を自己資金と住宅ローンで購入したことになります。その他の短期返済ローンを組まずに購入したのですから、なんとか合格というところですかね。しかし実際はもう少し「ゆとり」が欲しいですよね。それはどうすることですか? そうです、不要な固定資産を処分することです。そうすることがこの場合必要かと思います。なお、この比率のことを『固定長期適合率』と言いましたね、覚えていますか。
今回はここまでとします。この続きは次回、ご紹介します。
いかがですか、少し会計資料の読み方がお分かりいただけたでしょうか?
簿記・会計は税務署や金融機関に求められるからする事務ではありません。自社の経営状況を把握するためにやる『経営管理業務』です。また、だから毎日、会計処理をする必要があるわけです。そうすれば常に最新の経営状況が掴めることになります。
なお、インプルーブ研究所にお問合わせ(ココカラ)いただければ、簡単に自社の耐久力を診断できるシートをお送りいたします。