61.耐久力を知る④改善処方箋
2010年9月20日
さて、「会計で自社の耐久力を知る」の最終回は、自社耐久力の改善の仕方です。何度もいいますが、状況を確認しただけでは会社は良くなりません。状況を確認し、問題を発見したなら治療をしなければなりません。
では、自社の耐久力を良くするにはどのような治療方法があるのでしょうか。
1.基本的な考え方
会社耐久力を高めるには、総資産(上から流動資産、固定資産、繰延資産)は上を厚くするということです。逆に総資本(上から流動負債、固定負債、純資産)は下を厚くするということです。
総資産は固定資産、繰延資産をなるべく少なくし、流動資産を厚くするということです。さらに流動資産は棚卸資産よりも当座資産、特に現預金を厚くするという経営管理が重要です。
総資本については流動負債をなるべく少なくし、固定負債や純資産(特に純資産)を厚くするという経営管理が重要です。
では、それらについて具体的に見て行きましょう。
2.具体的処方箋
(1)固定資産を減らす
固定資産には土地・建物のほか、設備や車両などがあります。設備や車両の稼働率はどうですか。動いていないもの、稼働率が低いものがあれば処分します。特に車両は維持費が多くかかります。思い切って必要最小限の車両は置いとくとして、それ以外は処分できませんか。
(2)棚卸資産を減らす
棚卸、つまり在庫については、まず実地調査をします。売れ残った在庫や在庫そのものが多くありませんか。売れ残っている在庫は処分します。在庫そのものが多い場合は1回の仕入数量を少なくする、あるいは仕入回数を増やし、なるべく在庫を持たないようにします。さらに品揃えも考え直します。いま一度、自社の本当の顧客を考え、その顧客に合わせた品種は豊富にし、それ以外のものは無くします。そうすることによって、会社の特長が市場にアピールできるようになります。また同業者と一括仕入れをすることなどにより、仕入単価を下げることができないか考えます。「そんなこと簡単にできないよ。」と思われるかもしれません。しかし、いままでと同じことをしていれば、時代は大きく激しく早く変化して行っているのに、『ジリ貧』に向かうだけとなることは明白です。
(3)売上債権の早期回収
まず、売掛金台帳を見て、回収状況を確認してください。中小企業の場合、それほど新しい得意先は増えませんから、比較的常連の得意先ばかりのことが多いのではないのでしょうか。したがって、どうしても回収チェックが甘くなりがちです。あるいは売れたら、これでお金が入ってくると思われている場合もあります。しかし、お互いにビジネスですから、約定は守らなければなりません。また未回収が増えてくるということは、1度で支払うには金額が多くなりすぎ、未収が常態化する原因となり、それは不良債権の芽になるとも云えます。
そこでまず、未回収となっている債権は早急に回収する必要があります。まず督促状を出し、それでもだめなら、営業担当が訪問し、それでもだけなら社長が訪問するという「3段構え」の回収活動をする必要があります。
次に今後はそのような債権を増やさないということが重要です。回収しても次から次へと新しい未回収先が生じるようであれば、イタチごっことなってしまいます。支払期限が来る前に支払い確認をする、期限がきても支払がない場合はすぐに電話をする、それがダメなら書面を送る、それもだめなら担当が訪問する、そして最後は社長が訪問する。この『5段構え』の回収活動をすれば、得意先も約定とおりにしはらうことになってきます。何事にも真剣な会社には真剣な対応をしてくれるものです。
さらに、約定を短くする努力が必要です。数日でもいいので回収期限を早める。あるいは一括ではなく、分割支払をしていただく。さらには得意先にも有利な条件をつけて、現金売上化するなどです。運転資金が不足する場合には短期借入を起こすことがあります。それぞれによって違いはありますが、そのためにそれ相当の金利を負担しなければなりません。しかし現金売上にしていただくことによって、少々割引したとしても、金利負担より安い場合があります。
(4)流動負債を減らす
流動負債の主なものは買入債務と短期借入金です。買入債務については仕入数量を減らすことによって金額を減らすことができますし、仕入回数を増やすことで支払サイトを長くすることができます。またグループなどで一括仕入れをすることによって仕入単価を交渉することも可能になってきます。
短期借入金については、長期借入金にリスケするということです。なかなか難しいことかもわかりませんが、金融情勢も変化していますので、一度交渉してみる価値はあります。またそのような交渉をしやすくするためには、日頃からの金融機関との交際(信頼関係の構築)が肝心で、決算書や試算表を渡すなどの努力も重要です。また会計事務所に協力してもらうことも良いと思います。金融機関も第三者からの説明があれば安心されますので。特にTKC全国会に所属している会計事務所は金融機関とパイプが強いものがあります。
(5)固定負債を減らす
固定負債の主なものは長期借入金です。つまり、銀行からの借金です。これに関しては先ほどの遊休資産の処分や在庫の処分などでなるべく返済しておく必要があります。ひとつの目標は借入金額を月商の6カ月分以内(できれば3ヵ月以内)にしておくことです。
(6)純資産を増やす
最後に純資産を増やすということです。純資産を増やすとは資本金を増やすことを連想されるかもわかりませんが、ともかく繰越利益剰余金を増やすということです。つまり、「黒字経営」をすることです。この時代に黒字経営をすることは難しいと思われるかもしれませんが、意外と容易く出来るのかもわかりません。そのためには、延長線上の経営ではなく、これまでとは違う経営をすることです。またマネージメントしては月次決算を行い、月次決算対策を立て、PDCAマネジメントを回していくことです。
これまでと同じ経営をしているだけでは『ジリ貧』になっていくことは理解いただけると思います。それを打破するためには『新しい取り組み』を取り入れることです。そのベーシックな取り組みが『会計で経営マネジメントを行う』ことです。何回も言いますが、簿記・会計は税務署や金融機関に求められるからする事務処理ではありません。自社の経営状況を把握するためにやる『経営管理業務』です。また、だから毎日、会計処理をする必要があるわけです。そうすれば常に最新の経営状況が掴めることになります。
なお、インプルーブ研究所にお問合わせ(ココカラ)いただければ、簡単に自社の耐久力を診断できるシートをお送りいたします。