62.総資産、総資本とは

2010年9月26日

これまで会計資料の活かし方について数多くコラムを書いてきましたが、ここで再度、「総集編」として会計資料の活かし方について書き直していきたいと思います。そこで第1回目は「総資産、総資本とは」です。

会計資料は一般的に『財務諸表』と言われます。財務諸表とは『貸借対照表(B/S)』、『損益計算書(P/L)』、『キャッシュフロー計算書(C/F)』の3種類のことを指しますが、会社の経営状況を一番示すのは『貸借対照表』です。では、貸借対照表は何を表すのでしょうか?一般的には「会社の財政状態を表す」と言われますが、いまひとつピンと来ませんが、皆さんいかがですか。

「会社の財政状態」とは何なのでしょうか?「お金がある、お金がない」ということなら、現金と預金だけでわかりそうなものです。なのに、何であんなにたくさん勘定科目がB/Sには並んでいるのでしょうか。だからそれだけではないようですね。では、何なのでしょうか。

それは、『総資産』、『総資本』を少し詳しく解れば解ってきます。
まず、『総資本』。総資本はB/Sの右側のことです。
そうです、『負債の部』と『純資産の部』のことです。では、総資本はいったい何を表しているのでしょうか。
それは「事業に費やしている資金」を表しています。会社を運営するためには資本を出したり、銀行借入をしたり、あるいは仕入をするために買掛という形で販売する商品を仕入れています。つまり、事業に費やしている資金を出所順に分けて表示されています。したがって、総資本は、『資金の源泉』『資金の調達』状況を表しています。
その資金を整理すると、自分で出している資金と、他人から調達している資金に分けられます。自分で出している資金を『純資産』と呼び、『自己資本』と言います。
他人から調達している資金を『負債』と呼び、『他人資本』と言います。
他人資本については長い期間(1年以上)をかけて返済する資金と、短い期間(1年以内)で返済する資金に分類します。長い期間で返済する他人資本を『固定負債』といい、短い期間で返済しなければならない他人資本を『流動負債』といいます。これらを返済期間が短い順に並べると、『流動負債』→『固定負債』→『純資産』という順になります。そうすると自ずとそれぞれの資金について使い方が決まってきます。

一方、『総資産』はB/Sの左側です。
そう、現金や預金が並んでいる方です。こちらは「事業で運用している資産」を表しています。
例えば、事業をするために事務所を構えたり、商品を仕入れたりするわけです。総資本で得た資金で、建物や自動車、倉庫、商品あるいは現預金として運用するわけです。したがって、総資産は、『資金の運用』、『資金の使途』状況を表しています。
その資産を整理すると、その運用期間で3つに分類できます。短い順に『流動資産』→『固定資産』→『繰延資産』です。さらに流動資産は、短い順に『当座資産』→『たな卸資産』→『その他流動資産』に分類されます。当座資産はさらに短い順に、『現預金』→『売上債権』→『その他当座資産』に分類されます。固定資産も短い順に、『有形固定資産』→『無形固定資産』→『投資等』に分類されます。

これらをまとめると次のようになります。
総資産:事業で運用している資産、資金の運用・使途を表す
総資産=流動資産+固定資産+繰延資産
流動資産=当座資産+たな卸資産+その他
当座資産=現預金+売上債権+その他
固定資産=有形+無形+投資等

総資本:事業に費やしている資金、資金の源泉、調達を表す
総資本=流動負債+固定負債+純資産
他人資本=流動負債+固定負債
流動負債=買入債務+短期借入+その他
自己資本=純資産

この構造を覚え、いろいろなものと比べると、さまざまな自社の経営診断ができ、問題点や課題が分かり、かつ改善するための考え方「処方箋」がわかってきます。それらについてはまた追々説明して行きます。

会計は「経営に活かす」のが目的
いまだに多くの中小企業経営者においては、会計の目的を「決算・申告だ」と固く信じ込んでいる方が多くいます。だから、事務員と会計事務所に丸投げをしてしまっていることが多いようです。少しマシな経営者は、結果の会計資料を見ようとします。しかし、見てもわからないので、結局はしまい込んでしまいます。でも、なぜ分からないのでしょうか。その理由は至極簡単なところにあります。それは、取引のグルーピングを知らないからです。そこのところを多くの経営者がわかっていません。会計資料を経営者がわかるようになるためには、経営者自ら会計処理をする必要はありませんが、「経営者が取引のグルーピング・ルールを知る必要がある」ただそれだけのことです。それを知ってれば、会計資料の変化が経営状況の変化として見え、会計で経営マネジメントが出来るようになります。

日々の会計処理が決算・申告のためだけであれば、毎日会計処理をする気にもなりませんが、日々刻々と変わる経営状況を伝えてくれると分かれば会計処理をする気になると思うのですが、如何でしょうか。