70.2011年度経営課題 固定費

2011年3月10日

今回は「固定費を十分下げているか」です。固定費を下げるとは、経費を極力押さえて、利益が出やすい体質に改善するということです。固定費を下げることは単なる経費削減であり、あまりに当たり前すぎて、意外と重要視されないことが多いようですが、一番重要な『収益構造改善施策』です。今回は固定費抑制の考え方やその効果について説明します。

1.固定費抑制の考え方
固定費抑制の考え方には4つあります。それは、無駄・節約・倹約・削減です。
(1)無駄をなくす
「無駄」とは、余計に購入するということです。あなたが肉を買いに行くとしましょう。本来は500g必要だったけれども、あまりに安いので800g買ってしまった、というようなことです。
このようなことは会社経営の中ではよくあることです。もっとも多いのが事務用品やOA機器サプライ用品・切手などの買いだめです。それによって使い方が荒くなったり、不良品にしてしまったり、毀損させてしまったりしたことがありませんか。固定費を下げるには、一つ一つは小さなことであっても、その芽を摘んでいかなければできません。その積み重ねが資金繰りなども改善して行きます。同時に社内風土も変えて行きます。
(2)節約をする
「節約」とは、減らすということです。当初、肉は500g購入するつもりだったが、いざ買う時にそれを300gに減らすというようなことです。
これを会社の中で考えれば、水道光熱費や通信費などの節約があげられます。不要な電気はこまめに消す、暖冷房には気をつける、節水を心がける、長電話をやめるなどです。
(3)倹約をする
「倹約」とは、代替するということです。100g500円の肉を買うつもりだったが、100g300円の肉に変更するとか、国産牛から外国産牛に変えるとか、あるいは牛肉から豚肉・鶏肉にするなどのことをいいます。
このことを会社の中で考えれば、結構沢山あり、抑制効果も大きいものが多い。たとえば、郵送代・・。郵便をメールに切り替えればどうでしょうか。1通80円が0円になります。たとえば、契約書・・。書類から電磁的媒体に切り替えればどうですか。印紙は不要です。たとえば、長距離電話・・。スカイプに切り替えればどうでしょうか。無料になります。たとえば、高速代・・。少し余裕を持って出かけ、一般道路で行けばどうですか。高速利用料は大きく減ります。たとえば、交通費・・。少し早く出かけ、一番安い経路に切り替えればどうですか。何10円か安くなります。またグリーン、指定車両を普通車両に切り替えればどうですか。特別料金は要りません。たとえば、パンレットやカタログ・・。ウェブサイトで代用すればどうですか。内容は常に陳腐化せず、印刷代はかかりません。
まだまだあなたの周りにあろうかと思います。倹約は大きな抑制効果をもたらします。
(4)削減する
「削減」とは、やめるということです。肉を買うつもりだったが、ちょっと我慢して肉を買わないということです。これはゼロにするということですから、抑制効果は絶対です。
会社の中で考えれば、タクシー利用を禁止する、接待をやめる、接待ゴルフもやめる、いろいろな会員をやめるなどがあります。但し、これは両刀の面があります。あまり度が過ぎると、活力を削ぎ、萎縮した組織風土にしてしまいます。「うちもヤバイな」とか「窮屈だな」という雰囲気です。

このような4つの切り口から会社の経費を眺めると、まだまだ押さえられる固定費は多くあります。ただこれを実行するうえでのポイントは、例外や聖域を設けないことです。社員だけには要求して、社長・役員は例外にするという、そんあ時代ではありません。むしろ、社長・役員が率先垂範する時代です。そこに全社一丸態勢の機運が生じてきます。

2.固定費抑制の効果
(1)損益分岐点を下げる
固定費抑制効果は冒頭で申しあげたように、利益が出やすい企業体質に変貌させます。これまで固定費が3000万円であった会社が、2500万円に下がれば、粗利益が2500万円を超えた時点から、利益が出るようになります。なんと500万円も利益が出やすくなったわけです。そのことを「損益分岐点が下がった」といいます。
(2)資金繰りを改善する
固定費が3000万円から2500万円になったということは、それでけ支払いが減ることになります。この場合であれば、500万円支払が少なくなったわけです。つまり、500万円資金繰りが改善されたことになります。
(3)活力ある、やり遂げる組織にする
固定費はなぜ500万円も落とせたのでしょうか。それはトップをはじめ社員に至るまで全員が努力をし、実行したから落とせたのです。つまり「できた!」のです。これが大事です。これを全員で意識、共有する必要があります。社長さんが皆さんの前で「あとがとう!みんなのおかげで我が社はこれだけ利益が出やすい会社に変貌した」と発表されれば、みなさんも報われるでしょう。ここがポイントです。社長は最後まできちんとフォローします。それによってさらに活力ある組織に変貌させてくれます。プラス、少しでも報奨金が出せれば素晴らしいですね。

■経営分析指標に基づく経営改善は組織体質の改善を伴う
「経営分析指標に基づく経営改善」というと、単に数値が改善されるだけの「小手先の改善だけ」と思われている方が多いかもしれません。しかしそうではありません。経営分析指標を改善していくプロセスには、内部の協力と外部の協力(交渉・改善・理解)がないと達成できません。
例えば、「売掛金の回収サイトを短縮する」と考えても、社員全員がそのように動いてくれないとできません。また、いくら会社がそう思っても、得意先が協力・理解してくれないと早く回収はできません。早く支払いに応じてくれたということは、得意先側にそれだけこれまでの信用を持っていただけていたということであり、了承されたということは、今後もこれまで以上の信用を維持し続けることを期待されているということに他なりません。このように経営分析指標の改善は、社内意識と接客姿勢などが変革した、まさしく企業体質が変革した実証なのです。
ぜひ、経営分析指標に基づく経営改善をお勧めする次第です。

■決算対策では経営改善はできない
これまで「経営改善」というと決算対策が重要であるように言われてきましたが、実は決算対策で経営改善はできません。決算対策は決算書が対外報告書であるため、極力美しく見えるようにする化粧みないなものであり、単に科目を付替えただけのものです。したがって、会社の実態は変わっていません。
決算を美しく見せることは重要ではありますが、経営を改善するという側面から見ると、重要なのは通院治療をつづける月次対策です。月次対策を講じることによってのみ、会社は良くなります。そのことを「PDCAマネジメントサイクル」と呼ぶわけです。このようにPDCAマネジメントは身近なものです。
みなさん、PDCAを回しましょう!