71.2011年度経営課題 変動費

2011年4月3日

前回のアップから3週間前・・、前回アップの翌日11日東日本大地震が起こりました。
この地震は大津波よりこれまでにはない広域の被災と、福島原発事故をともない日本のみならず世界に影響を及ぼし、戦後最大、未曾有の災害となりました。多くの犠牲者の方々にお悔やみを申しあげますとともに、被災者の方々にお見舞い申しあげます。
いま私たちにできることは義捐金や電気など節約すること、そして落ち着いた行動をすることと併せて、あまり過度な自粛などをせずに、むしろ普段とおりに生活をすることだと思います。それが被災地及び日本の復興に協力することだと思います。
皆さん、事業をがんばって行こうではありませんか。
したがってこのリポートも普段どおりに続けてまいります。

さて2011年度の経営課題として、次の5点を挙げました。
①手持ち資金は十分か②固定費を十分下げているか③変動費比率を十分下げられているか
④回転率をあげているか ⑤借入金依存度は適正か
今回はその3番目「変動費比率を十分下げられているか」です。

1.変動費比率の実状
変動費比率は売上原価率とは少し違い、直接原価率のことをいいます。売上原価には間接費も入っていますので、それを除外した正味原価の割合です。
各企業の変動費比率の実状を平成22年度版TKC経営指標でみれば次のとおりです。
(1)全企業平均 58.4% *全企業とはTKC経営指標に収録されている224,595社の平均
です。
(2)黒字企業平均59.5% *黒字企業とは全企業のうちの黒字決算企業90,730社の平均で
す。
(3)優良企業平均53.2% *優良企業とは黒字企業のうち上位10%~15%のエクセレント
カンパニー9,070社の平均です。
(4)企業別平均   年商0.5億円未満  (23,752社) 24.8%
0.5億円~1億円 (17,682社) 36.6%
1億円~2.5億円 (23,509社) 56.5%
2.5億円~5億円 (12,520社) 54.0%
5億円~10億円  (7,350社) 59.2%
10億円~20億円 (3,669社) 63.8%
20億円~30億円 (1,087社) 68.3%
30億円以上   (1,161社) 74.1%
こう見ると優良企業はさすがに変動費比率が低いことがわかります。黒字企業と全企業平均とはさほど変わらず、黒字企業の秘密は生産性にあることがわかります。規模別に見ると規模が大きくなるほど変動費比率は上がり、かつ生産性が高くなることが推測できます。
したがって優良企業の秘密は生産性もそれなりに上げ、かつ変動費比率が格段に低いこと、言い換えれば限界利益率が非常に高いことがわかります。

2.変動費比率を改善する方法
では、変動費比率を改善するにはどういう方法があるのでしょうか。ひとつは変動費比率を抑えるというアプローチです。もうひとつは限界利益率を高めるというアプローチです。
これによって課題として捉えるものはぜんぜん違ってきます。
(1)変動費比率を抑える
この考え方に立つ場合は仕入が課題となります。結果として在庫を圧縮することにつながります。大きく云えば4つになります。
①仕入数量を減らす。少なくとも1回当たりの仕入数量は減らし、仕入回数を増やします。
②仕入品目を見直す。見直して基本的には絞り込みます。
③倉庫を整理整頓する。それによって減損を抑えます。
④仕入単価を見直す。仕入単価について交渉する、あるいは相見積を取り、仕入先を変えることも視野に入れる。
(2)限界利益率を高める
限界利益率を高めるとは、販売している商品を見直す、あるいは価格改定をするということです。具体的には次のような考え方となります。
①プロダクトミックスによって商品ごとの加重平均を調べ、主力商品を検討しなおす。
②ターゲット顧客を見直して取扱い商品を見直す。
③マーケティングミックスによって価格政策を見直す。
このような考え方をもとに、自社の具体的な状況を重ねて具体的に検討します。

■同じことをやっていてもダメ
どんなに小さな事業であってもこれまでと同じことをやっていてもダメだということです。一般的にコモディティ化という言葉がありますが、自社の中にもコモディティ化、当たり前になっていることは多くあります。それを一つひとつ改めてお客さまに新しい価値を提供することが大事です。このことを「顧客価値の創造」といいますが、言葉は少し仰々しくて遠いところにあるような気がしますが、現実は身近なところにあります。
またマーケティングという言葉もあり、大企業の専売特許のように感じられているかも分かりませんが、平たく言えば、お客さまのことを考えて工夫をするということです。そう捉えれば、自社でもマーケティングアプローチできることは多くあります。ともかく時代は大きく変わってきました。その大きなものは成熟化と人口減少です。もうモノはあふれているのです。またこれから買う人は減ってくるのです。
この前提で自社が生き延びるために何をしなければならないのか、いまから考えましょう。
いまなら時間は十分あります。