76.月次試算表のチェックポイント

2011年6月28日

これからは「どんぶり勘定」や「勘に頼った経営」では事業を継続していくことが難しくなっている。では、どうすれば良いのか?
それは「会計資料を活かした経営」に切り替えることだ。「会計資料を活かした経営」は緊急避難的な対処療法には無力だけれど、緊急避難的な対処療法が必要な場面を減らすことはできる。ぜひ、日常の経営に会計資料を活かそう。今回は「毎月見たい月次試算表のチェックポイント」をコンパクトにまとめた。
1.月次貸借対照表のどこを見る -毎月見たいチェックポイント-
(1)手元流動性
手元流動性とは何か緊急的に支払が起こったときの余力を示す。手元流動性とはすぐ現金化できるもの。一般的には現金そのものの外、当座預金・普通預金・定期預金・売却できる有価証券などをいう。その手元流動性の適正度を見るために「手元流動性比率」という指標がある。
計算式:手元流動性=(現預金+有価証券)÷月商 >2.0ヶ月程度で「◎」
計算式の分子は現預金+有価証券だが、他にもすぐ現金化できる資産があれば加えればよい。逆にすぐに現金化できないものは除外する。
大企業は比較的容易に資金調達ができるので手元流動性は売上1ヶ月分程度もあれば十分だといわれている。しかし、中小企業の場合はそうもいかないので2ヶ月程度あれば健全だといえる。
(2)売上債権(受取手形と売掛金)
事業の経常活動による資金の源泉は、売上債権、つまり受取手形と売掛金。しかし資金の源泉といっても多ければいいというものではない。多いということは滞留しているだけかもわからない。そこで売上債権については金額の多寡だけはなく次のようにみる。
①構成比をみる
金額ではなく、全体(総資産)に占める割合「構成比」を確認する。期首と比較して異常に増減していないか確認する。異常に増減している場合は、売上高や得意先別売上高実績、同売上債権残高などを調べる。TKC会計事務所であれば、毎月『月例経営分析表(要約貸借対照表)』が提供されているので、受取手形・売掛金・売上債権の構成比はわかる。
②回転期間を確認する
回転期間とは、何日分の売上高に相当する売上債権があるのかということ。短いほど資金繰りは楽になる。現状と前年比で比べ状況を理解する。TKC会計事務所からは毎月『月例経営分析表(要約貸借対照表)』が提供されているので、売上債権回転期間は表示されている。
③回収状況を確認する
四半期に一度程度は得意先別に売上債権の回収状況をチェックしたい。中小企業はどうしても得意先とのお付き合いがプライベートと重なりがちになることと、元来から回収業務が疎かになりがちであること、などから個別に確認することは必要。未回収を解消するためには次のことが大切。
1)注文書・納品書・請求書をしっかり揃える習慣をつける。
2)入金日に支払がない場合は、直ちに確認の連絡を入れる。
3)それでも支払がない場合は、再度、請求書を発送する。
4)それでもまだ支払いがない場合は訪問する。
5)さらにない場合はトップ自ら訪問する。
2.月次損益計算書のどこを見る -毎月、見たいチェックポイント-
(1)前年比をみる
売上高、原価(変動費)、粗利益(限界利益)、経費(固定費)、経常利益を前年比と比べて確認する。現在のように環境変化が激しい場合は、計画(予算)を立て計画(予算)値とも確認したい。
(2)構成比をみる
売上高を元にした原価(変動費)率、粗利益(限界利益)率、経費(固定費)率、経常利益率を確認する。前年度、予算値とも確認し、収益構造の変化を読み取る。
(3)売上-利益=経費と考える
ふつう、「売上-経費=利益」と考えるが、目標利益を達成するためには、また安定した経営をしていくためには、「売上-利益=経費」と考える。つまり、残ったものが利益ではなく、目標利益を達成するために経費をコントロールするという発想をする。

経理は経営管理の略、決して帳簿作成が目的ではない。さらに会計は経営情報のデータベース化でもある。ちょっと、会計・経理に対する考え方を変えて、経営者マインドを持った経営をしよう。あなたは社長であり、経営トップなのです・・。