78.改善の第一歩は経費見直し

2011年7月7日

赤字企業割合は4社に3社を超え、中小企業に限れば5社に4社になっている。これは決算に基づいた統計であり、期中では10社に9社が赤字だと云われている。つまり「中小企業総赤字時代」と云っても過言ではない。
実態を赤字体質から黒字体質に転換するためには決算対策ではなく、期中からの努力、月次対策が必要なのは云うまでもない。黒字化するためには4つの方法がある。①売上を増加させる。②限界利益を増加させる。③原価率(変動費比率)を下げる。④経費(固定費)を削減する。この4つの方法をミックスして黒字体質に変貌させるのである。
このことを『プロフィット・ミックス』と命名している。
『プロフィット・ミックス』効果の絶大さは①・②・③・④の順になるが、やり易さは④・③・②・①の順となる。つまり、大きな『プロフィット・ミックス』効果を得るためにはマーケットに働きかけなくてならず、それだけ困難さと時間が伴う。逆に『プロフィット・ミックス』効果はそれに比べると小さいが、着実にやればやっただけの効果が出るのは、社内努力で実現できるものである。
今回はすぐでき、効果がすぐに表われる『プロフィット・ミックス』、「経費の削減」について説明する。経費の削減は、その削減額がそのまま利益となる。自社でできる「削減策」はないか考えよう。

1.経費削減の考え方 MSKS
MSKSとはムダ・セツヤク・ケンヤク・サクゲンの略です。経費を削減する場合、この4つの観点からアプローチする。
(1)M:無駄をなくす
無駄をなくすとは「まとめ買い」「まとめ仕入」をやめるということです。
例えば、切手・・。多くの会社がいちいち買いに行くのが面倒だから100枚とか200枚とかまとめ買いをしている。そのことによって問題意識を持たずに郵送していたり、あるいは破ってしまって毀損を生じさせている。大変な無駄が生じている。また仕入・・。これも同様に在庫を切らしてはと思い、つい多めに仕入しがちである。その挙句が倉庫に売るにも売れない商品が一品では少ないが、合わせると大量のデッドストックとなって抱えていることになる。またロスも生じることになる。
これを実践しているのが天下のTOYOTAであって、Just in Time と呼ばれている。
(2)S:節約する
節約するとは、いまブームとも云えるほど注目を浴びている「節電」などである。その他にも電話時間を短縮するとか、事務用品を大切に扱うとか、コピーを減らすなど、意外と節約できることは多くある。
(3)K:倹約する
倹約するとは「代替する」ということである。例えば、コピー用紙の質を落として単価を下げるとか、移動経路を少し時間がかかることになるが最安経路で移動するとか、トナーカートリッジを再生品などに変えるなどである。
(4)S:削減する
削減するとは文字とおり「やめる」ということである。タクシー利用禁止、接待交際禁止などである。
このような経費削減を通じて利益を増やすためには、些細な金額でも削減するという積み重ねが大切である。また削減に聖域はなく、削減は社長以下全員で取り組むことも大切である。

2.具体的な経費削減策
(1)人件費
基本的にはいままでの給与支給額を下げないことが大切です。しかしこれまでのような「定期昇給」はよく考えてみる必要があるということである。デフレと言われ久しいが、物価は円高や内外価格差是正に向かって今後もしばらくは下がり続ける。いまの為替レートで人件費を換算すると(実感はともかく)いつのまにか日本は世界一人件費が高い国の一つとなっている。「実感はともかく」とは諸外国と比較してまだ物価は高すぎるのでその実感が伴わないということあり、ということは物価はまだ下がるということです。このような背景からは「右肩上がりの定期昇給時代は終わった」と言え、人件費は再検討する必要がある。経営状況が逼迫している場合は社員と相談して「下げる」という決断も必要といえる。
(2)旅費交通費
タクシーの使用頻度、高速道路利用頻度はどうか。少々時間がかかることになっても、一番安い経路で移動しよう。進め方のポイントは2点。社長の率先垂範と社員別管理の実施です。これで交通費は1割以上削減できる。
(3)広告宣伝費
定期的な情報発信をしている場合はそれをPDF化して、メール発信に切り替える。そうすれば送料は無料になり、制作費も下げられる。会社案内もホームページが当たり前の時代にまだ必要か検討の余地はある。さらにFAXもメールに置換えれば無料となる。インターネット(ICT)は情報伝達技術革新であって、広告宣伝費は劇的に削減可能となる。
(4)車両
いまの台数だけ必要か検討する。もし車両が1台減らせれば、駐車場代・ガソリン代・保険料などかなりの金額が削減できる。
(5)事務消耗品費
事務用品はすべて会社で支給している場合も多かったかもわからないが、封筒など以外の筆記用具などは個人負担にする。そうすれば物を大切にすることにもなる。さらにコピー・・。カラーコピーの使用を下げる、裏紙の有効利用も考える。決定打は複合機をコピー機能付パソコンプリンタに変更する。ランニングコスト(保守料0円)・維持コスト(数万円から数千円)を激変できる。細部検討すれば、1割以上の削減は可能。
(6)通信費
通信費は電話代・FAX通信料・郵便などだが、まず電話回線を減らすことを検討する。次にFAXと郵便はメールに切り替えることも検討する。メールに切り替えれば無料となる。電話回線の見直し、郵便のメール化などによって、これも1割以上の削減は可能。
(7)水道光熱費
特に電気代は削減可能。不要なときは電気を消す。退社時にはコンセントを抜く。暖房・冷房の温度に気をつける。冷暖房は扇風機との組み合わせでかなり循環はよくなる。電気代の削減はエコにも繋がり、時代の要請でもある。
(8)管理諸費
ホームページを長く利用している場合は維持管理費を確認する。早くからホームページを開設している場合は、昔からの維持管理費を支払っているため、非常に高額な場合がある。
その他にも自社のことを考えれば、もっと削減対象はあるかと思う。固定費の削減は、その削減額がそのまま“利益の増額”となる。中小企業の場合、月額7・8万円削減が年間100万円程度となり、100万円も利益が増えれば一気に赤字解消になるかもしれない。ぜひ、検討しよう。
大企業は驚くほどの努力をしているわれわれこそ、負けずに努力する必要があると思うのですが・・。

3.削減成功のポイント
削減成功のポイントは2つ。一つは、削減目標額を明示し、達成度合を全員で確認すること。二つめは、社長の“率先垂範”。これで必ず成果はあがる。