80.資金に強い経営①重要性

2011年7月16日

東日本大震災から4ヶ月が過ぎ、震災関連倒産が6月末までで173件となったという。この数字は阪神大震災1年間の関連倒産件数144件をすでに大きく上回っている。さらに中小企業金融円滑化法の支援を受けてきた企業の倒産件数も1~6月累計で50件を上回ったそうだ。
いまマネジメントの最重要課題は「資金を高める経営」だ。上場企業ではすでに、過去最高の211兆円を超える手元資金を蓄えている。中小企業だってやればできる。特に運転資金は努力した分だけ高められる。これはインプルーブ研究所の経験則だ。
売掛金、在庫、そして借入金を減らせば、確実に財務体質の強い会社に変身できる。これから中小企業金融円滑化法の延長期限も迫って来る。今からでも十分、資金を高めるマネジメントを実行する時間はある。
今回から暫くのあいだ、運転資金に強くなる経営について発信していきたい。

1.資金の重要性
皆さんは言うまでもなく、このことは十分にご承知のことだと思うが、再度確認をする。
まず経営学の権威であるドラッカーの言葉から紹介しよう。ドラッカーはピーター・ファーディナンド・ドラッカーといい、オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系経営学者・未来学者、いまや「もしドラ」の影響で誰でもが知っている存在となった。著書はいろいろあるが、その中の一冊『未来企業』326頁に次のようなことが書かれている。
「企業は十分なキャッシュ・フォローさえあれば、利益が出なくとも長い間何とかやっていけるということは、古くからの知恵である。しかし逆は真ではない。」
つまり、現金収支さえあれば会社は赤字でもやっていけるが、現金収支がなければ黒字経営であってもやっていけないということだ。いかに現金、つまり資金が企業経営に重要であるかということを示した格言だ。
また諺で「勘定合って銭足らず」という言葉もある。これは「理論と実際が一致しない」ことを指すが、転じて「利益は出ても金がない」という意味で使われている。つまり、黒字倒産ということだ。
いずれにしても、経営において如何に資金が大事かということを示している。

2.資金が足りなくなる理由
一般的に資金が回らなく理由としてあげられるのが ①納税資金 ②売掛金の滞留 ③大量の在庫 ④過大な設備投資 ⑤過剰な借入金返済 である。是非、気をつけたい。しかしよく見て欲しい。いずれもがマネジメント、つまり経営努力さえしっかりやっておれば、避けられるものばかりであることに気づく。そこに冒頭で申し上げた「運転資金は努力しただけ高められる。」所以がある。如何に運転資金を高めるためには、経営管理、マネジメントが重要かとお分かりいただけたかと思う。

3.上場企業の動向
震災以降の日経ニュースで取り上げてみる。
03.31 東芝、有利子負債削減のスピードを緩め、手元資金を確保する。
04.23 ホンダ、現預金1兆円超の強み。震災直後の部品代・固定費支払をやりくりする。
05.15 上場企業の手元資金が過去最高の52兆円となる。
05.26 3月決算企業のネットキャッシュが1年前より5兆円増える。
05.27 有利子負債依存度上位20社のうち、8社は1年前に比べ依存度を下げる。
06.03 上場企業の本年度3月期純現金収支は2年連続高水準となり、約13兆6千億円。
06.17 現金・預金残高、前年同月末比7.1%増の過去最高 211兆円となる。
最近の企業動向はこのように、如何に手元資金を厚くするかというものばかりである。
この傾向は2007年のリーマンショック以来であり、また先の東日本大震災でさらにクローズアップされている。