81.資金に強い経営②定義

2011年7月21日

日頃、何気なく使っている「運転資金」という言葉だが、意外と正確にはわかっていないものだ。資金に強い経営をマネジメントするためには、まずそのことを知る必要がある。

1.広義の運転資金と狭義の運転資金
(1)広義の運転資金
広義の運転資金とは会社を日々運営するために必要な資金をいう。調達している資金とは「流動負債」である。つまり、支払手形・買掛金・短期借入金・未払金・未払費用・預り金・割引手形などである。他方、使っているあるいは運用している資産は、現預金を除いた「流動資産」である。主なものには受取手形・売掛金・有価証券・棚卸資産・前払費用・仮払金などである。この差額が広義の運転資金であり、経常活動の「運転資金要調達高」という。つまり 経常活動の運転資金要調達高=現預金を除く流動資産-流動負債 となる。
(2)狭義の運転資金
これに対し、狭義の運転資金とは売買活動に必要な資金のことをいう。上記の広義の中でみると、調達している資金は支払手形・買掛金つまり、買入債務となる。使っている資産は受取手形・売掛金・棚卸資産つまり売上債権と棚卸資産となる。この差額が狭義の運転資金であり、売買活動の「運転資金要調達高」という。つまり 売買活動の運転資金要調達高=売上債権+棚卸資産-買入債務 となる。

2.運転資金要調達額が大きな会社と小さな会社
大事なことは計算して「当社はこのぐらいか」ではなく、どういう特長があるのかを掴むことである。一般的に「運転資金要調達高」が大きな会社は、売上の拡大が資金不足を招くことがある。なぜなら、売上債権や棚卸資産の拡大の方が買入債務の拡大よりも大きくなるからである。逆に「運転資金要調達高」が小さな会社あるいはマイナスの会社は、売上が拡大すると資金に余裕が出てくる。なぜなら、買入債務の拡大が売上債権や棚卸資産の拡大より大きくなるからである。ただし、運転資本がマイナスになるような会社の場合は、売上が減少し始めると、一気にキャッシュ不足となり破綻する可能性が高くなる。

3.自社の運転資金を知るポイント
(1)売買活動のために調達している資金額を知る
つまり「運転資金要調達高」がどれくらいか、だいたいの金額を把握しておくということである。
(2)売上が拡大して行ったなら、どのくらい運転資金が必要になるか知る
つまり「運転資金要調達率」を把握しておく。たとえば運転資金要調達率が20%であれば、新規出店して売上を2,000万円と見込むならば、設備投資資金の返済の他に、400万円程度(2,000×20%)の運転資金が必要になるということである。
(3)手元資金を知る
運転資金要調達高・運転資金要調達率に対して手元の資金、つまり「手元流動性」を知っておくことである。
(4)運転資金の細部を知る
つまり売上債権、棚卸資産、買入債務の回収期間・在庫期間・支払期間を知っておくということである。

次回はこれらについて、その求め方・処方箋について紹介する。