84.資金に強い経営⑤いのち
2011年8月11日
前々回・前回と自社の運転資金の状況を知る6つの検査値を紹介した。
①運転資金要調達高 ②運転資金要調達率 ③手元流動性比率 ④売上債権回転期間 ⑤棚卸資産回転期間 ⑥買入債務回転期間 だ。
今回はこのシリーズ最後として「運転資金に強くなる経営」を説明する。
1.キャッシュフローこそ、会社の生命線
(1)キャッシュは商売の礎
キャッシュとは現金・預金、つまり手元流動性のことを指す。リーマンショックの影響を乗り越えた方と思えば、大震災に原発事故。海外では中東問題にギリシャショック、さらにはアメリカの債務上限問題と節電影響と続き、これらは中小企業金融円滑化法の延長期限が迫ってくる。まさに先行き不透明な時代だ。そんなときにはキャッシュを高める経営に舵を切る必要がある。
(2)預金は事業の保険
これまでは銀行から融資を受けないと事業ができないと考えてきた帰来がある。しかしこの常識を覆さなくてはならない時代に入っている。その意味では預金を増やすことが事業と保険となる。
(3)売掛金・在庫・借入金を減らす
①売掛金
売掛金に関しては「当社の回収サイトは何日か」問い直すといい。もし、社長が「翌月回収です」とおっしゃるなら、売上債権回転期間は30日前後である筈だ。それが50日も60日もあるようであれば、必ず滞留債権、不良債権があるはずだ。売掛金を期日とおり回収できてないということは、仕入代金を支払って、タダで納品しているのと同じだ。売掛金の滞留はキャッシュフローを悪くする病巣となる。
社長、我社は翌月回収と思っておられるなら、回転期間は約30日になるハズです!
②在庫
過大な在庫は売れ残りの宝庫となる。在庫には仕入代金がかかっている。その他保管料や金利などもかかっている。不良在庫はまさに現金を捨てているのと同じだ。
社長、在庫は歯垢と同じです。放っておくと虫歯になるように、商品も悪くなります!
③借入金
無駄な固定資産があれば、それを原資に少しでも借入金は減らす。あるいはそれが無理ならば、逆に返済額を減らし、返済の負担を軽減する。
社長、資産・総資本の大きさが、万一の場合のリスクの大きさを示しています。資産・総資本はなるべくスリムにしましょう。
2.リーマンショックで経営のモノサシは変わった
①リーマンショックで生き残った会社は現金を蓄えていた会社です。だからキャッシュを高める経営を志向することが大事です。
②キャッシュを増やすには、売掛金を減らす・在庫を減らす・買掛金はゆっくり期日に支払うことです。
③現代の経営のモノサシは『実質無借金経営』です。
3.在庫は本当に資金繰りを悪化させる
①在庫は現金の仮の姿です。
②在庫はリスクを抱えたお金です。売れ残れば現金に戻れない、しかも眠らせると価値は劣化する。
③在庫は保管コスト・減耗コスト・資金の金利など、多くのコストを産む。
ともかくそれぞれの会社なりにキャッシュを高める経営に舵を切りましょう。切れないことはありません。