88.損益計算書のカンタンな見方
2012年3月28日
前回、PLの6つの評価を示していると申しあげました。
①自社のお客様・市場からの支持 ⇒売上高
②自社商品・製品・サービスの魅力度 ⇒売上総利益
③社内努力の成果 ⇒営業利益
④経営マネジメントの結果 ⇒経常利益
⑤自社の総合マネジメントの結果 ⇒税引前当期純利益
⑥自社の最終評価 ⇒当期純利益
※中小企業の場合は①~④までが重要であり、少し乱暴に言えば⑤⑥はどうでもよい。
また、経営成績の結論は③営業利益であり、営業利益が高くて経常利益が低いのであれば
金融費用に課題があることを示し、営業利益が低ければ経費の使い過ぎか、売上総利益が
低いということになる。さらに、売上総利益が低ければ売上原価が高いか、自社商品の
粗利の問題となる。両方とも問題なければ、根本的に売上が少ないことになる。
つまり、経営成績は営業利益を中心に検討すべきである。
そこで今回はそれらについての見方と評価の仕方をご紹介します。
1.売上高
(1)PLでの見方と評価の仕方
売上高の良し悪しは“前年比”で見ることになります。売上高が前年に比べて徐々に減ってきているのなら、景気や環境のせいにせず、「当社は徐々に時代に取り残されて来ている」と認識・評価する必要があります。
つまり「工夫をする必要がある」ということです。工夫とはこれまでにやって来なかった「新しい取り組みをする」という言い方ができます。そのことを経営革新とも言います。
検査値名:対前年売上高比率=当期売上高÷前年同期売上高 [評価基準]100%以上
《理屈》事業は継続させるべきものです。事業は年数を重ねるごとにコストは上がります。
したがって、少なくとも前年と同額の対前年売上高比100%、できれば105%程度は
伸ばしたいものです。
(2)BS総額と売上高を比較して見る
2つめはBSの総額と比較して見ます。BSは営業活動をして売上を上げるために資本を投下し設備等の資産を準備しているといえます。私たち中小企業は大企業のように大きな資本(資産)を投下しているわけではありません。したがって、中小企業は大企業以上に効率よく準備した資産を活かして、より多くの売上を上げたいものです。
つまり、大企業以上の操業度(回転率)を目指さなくてはなりません。
検査値名:総資本回転率=当期売上高÷総資本 [評価基準]2.0回以上
《理屈》中小企業は少ない資本・資産で事業しているわけですから、大企業と同じでは経営
は苦しくなってしまいます。したがって、最低でも投下している資本・資産の倍、
ないしは3回・4回と高回転させたいものです。
2.各利益
(1)PLでの見方と評価の仕方
各利益の良し悪しは“売上高比較と前年比”で見ることになります。売上高に対して利益率が低いということは、お客様にとって魅力的な商品やサービスを提供していない、利益を確保するための社内努力が足りない、融資を受け過ぎている、などということになります。一口でいえば、お客様にとって魅力のない事業であり、また事業としてもあまり魅力のない事業ということです。その各利益が前年に比べて減っているということは、それらの努力が年々落ちている、あるいは競合他社と比べて魅力がなくなっているということになります。
大切なことは、各利益は自然に増減するのではなく、管理・マネジメント・経営によって、ある程度「コントロールできる」と認識することです。
検査値名:売上総利益率=当期売上総利益÷当期売上高 [評価基準]業種で違う
営業利益率=当期営業利益÷当期売上高 [評価基準]10%以上
経常利益率=当期経常利益÷当期売上高 [評価基準] 5%以上
《理屈》売上総利益率は自社商品とサービス力に対する顧客評価です。顧客評価が高ければ
競合他社に対して高い売上総利益率が確保できます。営業利益率は本業の利益率で
す。顧客評価と社内努力の結果といえます。また営業利益は金利を除く費用を差し
引きしたあとの利益ですので業種特殊性はありません。したがって、どの業種でも
10%程度の営業利益率を目標にマネジメントしたいものです。最後に、経常利益は
営業利益から金融費用である金利を差し引きした利益ですので経営マネジメントの
結果といえます。最低でも売上高の5%以上は確保して借入金返済資金と翌期以降の
設備投資資金等に備えたいものです。
検査値名:対前年売上総利益比率=当期売上総利益÷前年同期売上総利益
[評価基準]100%以上
対前年営業利益比率=当期営業利益÷前年同期営業利益
[評価基準]100%以上
対前年経常利益比率=当期経常利益÷前年同期経常利益
[評価基準]100%以上
《理屈》売上総利益は販管費支払の原資であり、営業利益の源です。営業利益は金利支払の
原資であり経常利益の源です。経常利益は借入金返済額の原資であり設備投資等の
源です。原則、前年以上の利益を確保したい(前年比100%以上)ものです。
(2)BS総額と各利益を比較して見る
2つめのはやはりBSの総額と比較してみます。BSの究極的な目的は売上を上げて儲けるために、資本を投下し設備等の資産に投資しているわけです。また私たち中小企業は大企業のように大きな資本(資産)を投下・投資しているわけではありませんので、大企業以上に利益効率を上げなければならないともいえます。
つまり赤字なんてもってのほかで、大企業以上のリターン(利益率)を目指しましょう。
検査値名:総資本売上総利益率=当期売上総利益÷総資本 [評価基準]業種で違う
総資本営業利益率=当期営業利益÷総資本 [評価基準]20%以上
総資本経常利益率=当期経常利益÷総資本 [評価基準]10%以上
《理屈》中小企業は少ない資本・資産で事業しているわけですから、大企業と同じ利益率では
経営が苦しくなります。したがって、最低でも総資本営業利益率であれば20%、総資
本経常利益率であれば10%以上を目指します。
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