109.黒字経営 変動P/L
2012年10月16日
6.必要な黒字経営額を稼ぎ出すためには
必要な黒字経営額を考えるには損益計算書を変動損益計算書で考えることが有効です。皆さんも変動損益計算書は少しご存知かもしれません。まずここでは変動損益計算書と損益計算書の違いを最初に見てみましょう。
(1)変動損益計算書と損益計算書の違い
①売上高
売上高は変動損益計算書でも損益計算書は同じです。損益計算書で売上高が6000万であれば、変動損益計算書でも6000万です。
②売上原価と変動費
売上原価に当る概念は変動損益計算書では「変動費」といいます。
売上原価には商品仕入や材料費のほかに、労務費と呼ぶ製造原価にかかる人件費や製造経費と呼ぶ外注費や光熱費などが含まれます。ここで売上原価をよく観察すると、商品仕入や材料費、外注費などのように一つ一つの商品・製品にかかる費用と、労務費や外注費を除く製造経費のように一つ一つの商品・製品にどれだけかかったかわからない費用があることがわかります。
前者の一つ一つの商品・製品にかかる費用のことを直接原価と呼び、「変動費」といいます。つまり、その商品や製品を作らなければかからない費用です。
一方、後者のように一つ一つの商品・製品にどれだけかかったかわからない費用のことを間接原価と呼び、「固定費」といいます。つまり、その商品や製品を作らなくてもかからる費用です。もっとわかり易く言うと、変動費以外の費用はすべて「固定費」です。
したがって、売上原価が3000万であっても、直接原価が1800万であれば、変動費は1800万となります。
③売上総利益と限界利益
売上総利益に当る概念は変動損益計算書では「限界利益」といいます。
損益計算書では粗利益のことを 売上高-売上原価 で求め、売上総利益となります。この場合は 売上高6000万-売上原価3000万=売上総利益3000万となります。
変動損益計算書では 売上高-変動費 で求め、「限界利益」といいます。この場合は 売上高6000万-変動費1800万=限界利益4200万となります。損益計算書では粗利益と言いましたが、変動損益益計算書ではまさしく直接原価の上に各企業が付けた付加価値となります。
ここが変動損益計算書と損益計算書の大きな違いです。変動損益計算書では各企業が努力して付けた「付加価値」が求められます。
④販売費及び一般管理費(販管費)と固定費
損益計算書では間接原価のほかに、販売及び管理にかかる費用を販管費と呼び、売上総利益から販管費を差引したものを営業利益と呼びます。
変動損益計算書では間接原価も販管費もそして営業外損益も加えたものすべてを「固定費」と呼び、限界利益で賄わなわなければならない費用を一元化しています。そのため非常に単純化されることとなります。つまり、限界利益が固定費を上回れば「黒字」、限界利益が固定費を下回れば「赤字」ということです。
⑤営業利益と経常利益
損益計算書では 売上総利益-販管費=営業利益、営業利益±営業外損益=経常利益 という構造ですが、変動損益計算書では営業利益という概念はありません。
変動損益計算書は 限界利益-固定費=経常利益 というシンプルな構造です。
(2)変動損益計算書の特長
①販売価格の戦略的な設定に活用できる
損益計算書の売上原価は、直接原価+間接原価という全部原価計算であるため、戦略的な価格設定はできません。
ところが変動損益計算書の変動費は、直接原価という直接原価計算であるため、それ以下の販売単価をつければいくら売れても材料費などをカバーできませんから、売れば売るほど赤字になります。そのような価格のことを真正出血価格といいます。しかし 直接原価<販売価格<全部原価 という販売価格をつければ、一見「損をする」ように見えますが、販売数量によっては利益が出てきます。このような価格のことを疑似出血価格といいます。
例えば、これまでの例で1万個売れていれば、売価6000円、原価3000円(直接原価1800円・間接原価1200円)ということになりますので、売価3000円以上で売らなくとも1800円以上で売れば販売数量いかんでは利益が出ることとになります。
②売上シミュレーションに活用できる
先ほど、限界利益が固定費を上回れば「黒字」、限界利益が固定費を下回れば「赤字」といいました。つまり、 限界利益=固定費 が損益分岐点となります。これを展開すると次のようになります。
限界利益=固定費
損益分岐点売上高×限界利益率=固定費
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
となり、損益分岐点の売上高は固定費を限界利益率で割ると求められることになります。
さらにこれを応用し、下記のように計算すると目標売上高を求めることができます。
目標売上高=予定固定費÷目標限界利益率
少し難しかったでしょうか? その場合は読み返してみてください、ちょっと理解できれば意外とかんたんですよ!
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