119.借入金依存度に陥る原因2

2012年11月29日

6.借入依存になってしまう原因(2)
借入依存体質になってしまってい原因の2つ目は設備資金不足です。今回はそれについて説明します。

(2)設備資金不足
設備投資による借入依存体質に陥る原因は次の4つです。
①過大設備投資
会社は設備投資を本来どの範囲ですべきなのでしょうか?このことは資金的な側面から言えばハッキリしています。
第1の考え方:営業キャッシュフローの範囲内で行う
営業キャッシュフローとは「1年間の営業活動で得た現預金収入」ということです。営業キャッシュフローを知ることはむずかしいかもしれませんが、決算書と同時に一部の会計事務所(TKC会員会計事務所)からは「キャッシュフロー計算書」が提供されています。それを見ればわかります。
※多くの会計事務所ではまだ提供されていないかも知れませんが、TKC会計事務所であれば「キャッシュフロー計算書」は提供されています。
第2の考え方:手元資金の範囲内で行う
手元資金とは端的に云えば、現金と預金です。したがって、設備投資は現預金と相談しながら行うということが大事です。
第3の考え方:自己資本の範囲内で行う
自己資本とは、純資産のことです。したがって、繰越利益を溜めていくことが設備投資の前提条件となります。
第4の考え方:固定資本の範囲内で行う
固定資本とは、純資産と固定負債のことです。つまり、純資産(自己資本)だけでは設備投資資金が足らない場合には銀行から長期借入金を調達するということです。間違っても短期借入金に頼って設備投資を行ってはいけません。
当然のことながら第1の考え方から第4の考え方へ行くほど、投資額は大きくなります。
多くの中小零細企業では身の丈以上の設備投資をしている場合が多く、このことが借入依存症を招いています。

②借入すること自体がいつのまにか目的化してしまっている
設備投資の不足額は長期借入金として銀行から資金調達をするわけですが、ここで大きな問題が潜んでいます。つまり、借入すること自体に全神経を注ぎ、肝心の設備投資の採算計画が考えられていないことです。資金を調達し、設備が購入できれば「ホッ」としてしまう。忘れないでください!・・設備投資は利益を拡大するためにしていることを。

③設備投資による目指すべき効果が認識されていない
設備投資する目的はなんだったのでしょうか?動機はいろいろあったのでしょうが、目的はそれによって「売上高を伸ばす」ことにあった筈です。では、どの程度の売上増がなくてはならないのでしょうか。借入金を念頭に考えれば、少なくとも年間ベースで「年間借入返済額+年間支払金利」を粗利益率で割った売上高が伸びないと正しい借入金活動とはいえません。投資額総額で考えれば次のとおりとなります。
設備投資による年間増加目標売上高=(年間投資額+年間支払金利)÷粗利益率
例えば、5年償却で1000万円の設備投資をし、その借入金利は2%、粗利益率が40%であったなら、
(200万円+20万円)÷40%=550万円=年間増加目標売上高 となります。

④投資効果による目標利益が認識されていない
最終的には利益が増加しないと設備投資の意味はありません。その目標数値をハッキリと認識すべきです。投資はその稼動期間内にそれによる目標利益が出ないと正しい設備投資とはいえません。年間投資額と減価償却費はほぼ同じだと見なし、それを無視すれば、その目標利益の計算方法は次のとおりとなります。
設備投資による年間増加目標利益=年間支払金利÷(1-実効税率)
例えば、年間支払金利20万円、実効税率が40%であったならば、
20万円÷(1-40%)=33.3万円=年間増加目標利益 となります。

散見されるのは「売上を増やすため、設備を新しくしよう」と安直に設備投資を行い、ますます事業を悪化させるパターンです。

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