129.会計識字力 B/Sの森総覧

2013年9月17日

第6話 貸借対照表の森を見る

さて、これまでB/Sの幹を見てきました。「幹」とは純資産であり、負債であり、資産であり、そのバランスでした。
そして、そこでわかったことは次の4つでした。

(1) 純資産は“これまでの事業成否がわかる”
純資産が資本金より大きくなっているのであれば、ともかくあなたの事業は成功してきた
逆に純資産が資本金より小さくなっているのであれば、あなたの事業は問題を抱えている
純資産はこのことを示してくれます。

(2) 資金の調達状況を“負債と純資産に分けて見る”
負債は他人資本、純資産は自己資本。ふつうの事業は「なるべく自分・自社のお金、自己資本でやりたい。」と考える。世の中は東京オリンピックが2020年に来ようとも、やっぱり先行きは不透明だ。だから事業はできるなら自己資本だけでやりたい。あなたの事業の他人資本・自己資本割合はどうですか?
大きく他人資本に頼っているようであれば、やっぱり問題と言える

(3)同じ負債でも、“翌年返済他人資本と長期返済他人資本に分けて見る”
仮に負債が多くとも、翌年中に返済しなければならない流動負債が多い場合と、長期に渡って返済すればよい固定負債が多い場合では、全く事情が違ってくる。
流動負債に頼っている経営とは、毎年借金返済に追われている経営状況である。つまり、『自転車操業』という状況だ。この状況では結局、返済できない流動負債が徐々に溜まり、経営破綻に近づいていく。
しかし、固定負債に頼っている経営は支払金利の負担はあるが、まだ何とか改善して行く時間はある。
他人資本に頼っているうえに、翌年返済他人資本である流動負債の割合が長期返済他人資本である固定負債よりも多ければ、ますます問題だ

(4) 最後に“財産を見る”
事業の財産である資産が多くあっても、肝心なのは現預金、売上債権、棚卸資産の3点だ。

現預金は事業の生活費といえる「平均月商の何倍あるのか」を確認する必要がある。これが1ヵ月分もなければ心許ない。現代社会は何度も云うように、先行き不透明な時代である。急に売上が3分の1、2分の1に減ってしまうことがあってもおかしくない。なのに、現預金が売上1ヵ月分も無いとすれば、打開を図る時間もないということになる。

売上債権は多くあれば安心だと思ってはいませんか?一面そうであるところもあるが、それが滞留債権や不良債権ばかりだったらどうするのですか。売上債権は売上高とのバランスだ。たくさん抱えて喜んでいる経営者は失格ともいえます。売上債権には分相応の額というものがある。社長であるあなたが「当社の売上回収は翌月だ」と思っているのであれば、売上債権は1ヵ月分しかないはずだ。なのにそれより多くある場合はに腐っている売上債権を持っている可能性がある。それは売上代金が回収できないばかりか、税金だけを支払う羽目になったことを表わしている。 

最後に棚卸資産はどうであろうか?生鮮食料品に限らず、いまの世の中、移り変わりのスピードは早い。つい1ヶ月前の商品・製品なんて売れないと考えないといけない。なのに売上30日分を超える在庫を抱えている。また倉庫へ行けば、底のほうには腐った商品・製品がゴロゴロあることも気づく。あるいは売れ残っているはずの商品や製品が無くなっている。棚卸資産は多くとも2週間程度に抑えなくてはならない。さらに在庫はお金だ。お金であったら最低でも毎月1回は残高を確認しなくてはいけない。であるならば在庫も同じだ。少なくとも月1回は在庫管理をしなくてはいけない。なのにそれを期末だけ、しかも儀式のようにするなんて、おかしいとは思いませんか?

ざっと、こんなことが『B/Sの森』を見て気づけるわけです。
次回からはその幹から伸びている枝葉一つ一つについて会計が読めるように説明します。