135.会計識字力 固負の読み方
2013年10月19日
第12話 貸借対照表の枝葉を見よう -固定負債-
1.固定負債とは何か?
固定負債とは基本的に1年以上をかけて返済してよい債務を表します。
要は銀行借入金と役員借入金です。具体的に見ていきましょう。
(1)長期借入金
長期借入金とは返済期限が決算日後1年を超えて到来する借入金のことです。つまり、金融機関からの融資は、運転資金であろうと設備資金であろうとそのほとんどが1年を超えて返済されると思われますので、長期借入金となります。
但し、ここで注意があります。それは、たとえ返済期限が決算日後1年を超えて到来しても、必ず、その1年間で返済しなければならない金額はあります。たとえば、600万円を5年の返済期間で借りれば、120万円がそれに該当します。その分は流動負債の1年以内返済長期借入金に計上します。手元の決算書あるいは試算表を見てください。ほとんどの会計事務所ではその区分をしていないと思います。
なぜならそんなことをしなくとも申告書作成には関係がないからです。しかし経営判断上では大きな影響を与えます。多くの会計事務所はいまだに会計を税務だけのものと考えています。そんな会計事務所に顧問を依頼されてることはちょっと問題です。多くの書籍にも書かれているように現代は会計を経営に活かす時代です。なのに経営のことを全く無視していることは大きな問題だと思います。
そしてもう一つ。借入金は口座管理していますか?口座管理とは融資ごとに管理されているかということです。たとえば借入金Aは2009年3月末に6年返済で300万円借りて、借入金Bは2012年3月末に7年返済で700万円借りたとします。すると2013年決算では次のようになっているはずです。
長期借入金 550万円 1年以内返済長期借入金150万円
借入金A(15年3月完済) 50万円 50万円
借入金B(19年3月完済) 500万円 100万円
このように管理されていれば現在の合計残高とそれぞれの残高、さらにいつ完済するのかが手に取るようにわかるようになります。それが長期借入金が1年以内返済長期借入金も含め700万円だけでは全く分かりません。さらに流動負債、固定負債も大きく変わってきます。それによって資金手当も資金手当の心づもりも大きく違ってきます。
(2)役員借入金
役員借入金とは経営者などが自ら会社に貸しているお金です。これは経営者からの借入金ではありますが、経営上の判断や金融機関の判断は自己資本と同様に扱います。
(3)その他
そのほかには長期預り金や長期預かり保証金、退職給付引当金などがあるのかもわかりません。なお、退職給付引当金とは社員の退職金の積立のことです。
これら固定負債はすべて1年以上後に支払う債務ですが、見方を変えれば流動負債と同様、資金を調達していることになります。
2.固定負債を経営判断にどう活かすか?
ではこの固定負債をどのようにして経営判断に活かしましょうか?
それは第10話でご紹介したように固定資産と比べることによって活かせるようになります。
(1)固定資産購入余力
固定資産と比べることによって固定資産の購入余力が分かります。
固定資産購入余力 = 固定資産 - (固定負債+純資産)
(2)固定資産購入余力の指標
固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (固定負債+純資産) ×100
※そのほかに固定比率も重要な指標です(固定比率については第10話参照)。
(4)評価尺度
何度も言いますが、大事なことは評価尺度を持つことです。
固定長期適合率 120%超 いまの資金力では購入しすぎです。早急に資金手当
をするか、固定資産を売却することを検討します。
90%前後 現在の資金力では現状で目一杯です。
60%前後以下 適正な設備投資状況です。
こういう風に財務諸表を見ると、財務諸表がまるで経営のコックピットのように思えてきませんか?
これが経営会計です。