136.会計識字力 純資産読み方
2013年10月28日
第13話 貸借対照表の枝葉を見よう -純資産-
今回はいよいよ「貸借対照表の枝葉」の最後、『純資産』です。
1.純資産とは何か?
どうでしょうか、純資産って意外と軽く見ていませんか?「まっ、資本金のことだから別に見なくてもわかっている」とか。
ところが純資産は経営者にとって一番見なくてはならないところなのです。なぜならこれまでの経営活動の成果が現れているからです。あるいは今期の、または今月の経営活動の結論も現れているからです。
純資産とはあなたの会社の活動が、お客さま、取引先、あるいは社会から評価されているのかどうかを表わしています。
では、具体的に見ていきましょう。
(1)資本金
資本金とは基本的にはあなたが会社設立時に準備した自己資金のことです。これが最初の元であり純資産なので、資本金を含めた純資産が以後増えているかどうかが、これまでの事業の成功度を表わします。
(2)繰越利益剰余金
これが資本金を除いた、会社設立以後稼ぎ出した会社の利益の累計額です。これが実際のこれまでの事業成功のバロメータです。プラス(+)であれば度合いはともかく成功して来たことを示しています。マイナス(-)であればこれまでの会社の事業に問題があることを示しています。
(3)その他
そのほかにもいろいろな科目が純資産にはありますが、重要なのは上記の2点です。
純資産の合計が資本金より増えているかどうか、確認しましょう。試算表では貸方を見れば前月の成功度がわかります。プラス(+)であってもそれは予定通りのプラス(+)ですか?マイナス(-)あれば、必ずチェックしましょう。
2.純資産を経営判断にどう活かすか?
ではこの純資産をどのようにして経営判断に活かしましょうか?
それは総資本(=負債+純資産)、負債、銀行借入金などと比べることによって活かせるようになります。
(1)総資本と比べる
総資本と比べることによって事業で調達している資本の自己資本割合が分かります。
自己資本割合 = 純資産 ÷ 総資本(=負債+純資産) ×100
この自己資本割合は保守的に考えれば、高ければ高いほど事業の安全性は高いと言えます。なぜなら万が一のことがあっても自己資金だけで事業をやっているのですから、誰に迷惑をかけることもありません。なお、自己資本割合のことを『自己資本比率』と呼びます。
(2)対負債比率
負債と比べることによって他人資本の依存度(前向きに考えれば活用度)が分かります。
対負債比率 = 負債 ÷ 純資産 ×100
この対負債比率は保守的に考えれば、低ければ低いほど他人資本依存度は低いので、事業の安全性は高いと言えます。なぜなら万が一のことがあってもあまり借金はないということなので、あまり迷惑をかけることはありません。しかし一方、事業の積極性という観点から見れば問題があるかも分かりません。なぜならもっと資金を活用して事業を展開すれば事業はもっと発展する可能性があるとも考えられるからです。要はバランスが大切です。なお、対負債比率のことを『負債比率』とか『レバリッジ比率』と呼びます。
(3)対銀行借入金比率
銀行から融資を受けている短期借入金・長期借入金合計と比べることによって借入金依存度が分かります。
対銀行借入金比率 = 銀行借入金 ÷ 純資産 ×100
この対銀行借入金比率も保守的に考えれば、低ければ低いほど借入金依存度は低いので、事業の安全性は高いと言えます。しかし一方、中小企業にとって外部からの事業資金調達方法は銀行借入だけといって過言ではありません(大企業は市場から資金を募るという方法がありますが)。その観点から考えればある程度の銀行借入は必要だとも言えます。やはりこれもバランス感覚が大切です。 なお、対借入金比率のことを『キアリング比率』と呼びます。
(4)評価尺度
①自己資本比率 マイナス マイナスとは自己資本(純資産)が無いということです。
つまり『債務超過』の状況です。債務超過とは負債分も
資産が無い状況です。由々しき状況ですので至急に手を
打つ必要があります
15%前後 まだまだ自己資本の割合は低い状況です。
30%前後 低いとは言えませんが、もう少し高めましょう。
50%以上 目標とすべき状況です。この状況を維持しましょう。
②負債比率 500%超 他人資本に依存しすぎています。他人資本(負債)の状況
(レバリッジ比率) を確認し、数年かけて財務体質を改善しましょう。
200%前後 平均的ですが、低いとはいえません。もう少し低くしま
しょう。
100%前後 適正な他人資本依存度です。
③ギアリング比率 300%超 借入金依存度が高い状況です。返済やリスケなど見直し
ましょう。
200%前後 これ以上借入金依存度を上げないようにしましょう。
100%前後 比較的適正な銀行借入金状況です。
これまで流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産と枝葉を見てきましたが、かなり多くの経営状況計測機器が増えましたね。このように財務諸表の各機器を見るようにすると、「経営という航空機」をこれまでより安定させた航行が可能となります。 これが経営会計です。