144.会計識字力 資金を読む①
2013年12月14日
第21話 資金の読み方(1)
いよいよ『会計識字力』も最後に入る。最後は資金繰りだ。「資金繰りを読むのはむずかしい」という声をよく聞くが、そんなことはない。要領さえわかればカンタンだ。資金繰りは『月次貸借対照表』からと決算書と同時に作成されている『キャッシュフロー計算書』から読み解くことが出来る。
なお、いまどき決算書と同時に『キャッシュフロー計算書』を提供していない会計事務所があるとすれば、それは会計事務所とは言えない。会計事務所に『キャッシュフロー計算書』提供を要求するか、できないとするならば会計事務所を検討するべきだと思う。
今回はその中で、月次B/Sでの資金の読み方を説明しよう。
月次B/Sで、資金はどこに表示されているか・・。そう、現金と預金の合計が自社の資金有り高だ。この資金有り高をどう読めば良いのか、一緒に考えてみよう。
100万円以上あればいいのか、それとも500万円以上あればいいのか、資金有り高は大いに越したことはないが、それでは「読む」とは言えない。
正解は「資金有り高だけでは判定できない」ということだ。何故なら、それぞれの会社で規模や状況が違うので、一概にいくら以上あれば良いとは判断できないからだ。家計でも少人数の家族と大人数の家族とでは当然のことながら必要なお金は違う。また家族構成でも違ってくる。そのことは会社でも同様だ。
1.月次B/Sで資金を判断するモノサシ
では、その判断するモノサシは何だろうか?
モノサシにはいくつかある。実際のモノサシにも10cmのモノサシもあれば、スタンダードな30㎝のモノサシがあるのと同様だ。
(1)短いモノサシ
それは手元にある請求書合計金額だ。これは次月には取引先に支払わなくてはならない金額だ。月次試算表では、B/Sの支払手形、買掛金、未払金、未払費用に表示されている。この合計が手元請求書の合計となる。最低限、手元現預金はそれよりも多くなくてはならない。算式で表わすと次のようになる。
現預金-(支払手形+買掛金+未払金+未払費用) > 0
ゼロでは心許ないということになる。
(2)標準のモノサシ
それは月額の総費用だ。手元の請求書だけでなく人件費等も加えた金額となる。月次試算表では、P/Lに表示されている売上原価、販売費及び一般管理費の合計となる。算式で表わすと次のようになる。
現預金-(売上原価+販売費及び一般管理費) > 0
これだけ手元資金があれば次月の資金繰りは回ることになる。
(3)長いモノサシ
それは総費用に月々の借入金返済額と毎月の貯蓄にあたる内部留保金を加えた金額となる。ふつうに言えば『月次売上高』になるが、最近では月次売上高で赤字を計上している場合も多い。そのことを考慮に入れればこのような言い方になる。それを算式で表わすと次のようになる。
現預金-(総費用+月次借入金返済額+月次内部留保) > 0
これだけ毎月手元資金があれば安心して経営できる。
このように「モノサシ」にはいろいろある。他にもっと自社に合ったモノサシがあれば、そのモノサシで手元資金(現預金)を測ればよい。ただ私たちは慎重な人種なので、それらのモノサシと同じだけの現預金では安心できず、余裕が欲しくなる。したがって、その2倍の現預金を持っておきたいとか、3倍は持っておきたいとかになるので、それで判断すればよいだけである。