146.会計識字力 資金を読む③

2013年12月25日

第23話 資金の読み方(3)

「月次B/Sで読む資金繰り」の最後は長期資金運用に問題はないかについてだ。

3.長期資金運用を読む
長期資金運用とは固定資産の運用のことだ。ご存知のとおり、通常、固定資産は5~6年は活用する。その活用によって会社は生産性を上げ、その結果の利益によって固定資産投資を回収することになる。したがって、その資金運用の問題は“固定資産”と“長期に返済すればよい資金”を比べることで確認できる。
(1)固定資産投資の適正度を資金から確認する
固定資産は何度も言うが、数年活用するものである。したがって出来れば、自己資金でその購入は賄いたいと考えられる。それは自家用車をお金があればキャッシュで購入したいと考えるのと同じだ。それには次のような形で見ることができる。
 固定資産の投資適正度=固定資産-自己資本(純資産)
固定資金の購入資金を全額、自己資本で賄うことは現実的には難しいが、しかしある程度おは賄いたいものだ。先ほどの自家用車購入を想像すれば容易に察しがつく。人それぞれによって若干違うが、しかし全額自動車ローンだけで購入する人はいないだろう。少なくとも何割かは自己資金で賄いたいものだ。それを比率で考えるともっと明確になる。
 固定資産÷自己資本×100=固定比率
この指標を“固定比率”と呼ぶが、100%以下であれば優秀、200%程度あればまずまず、300%以上であれば少し問と判断する。固定比率が異常に高ければ、不要な固しき定資産を処分を検討すべきである。
(2)固定資産投資の余力を確認する
次に新しい固定資産購入の余力を確認するには、次のような見方で確認できる。
 固定資産投資余力=固定資産-(自己資本+固定負債)
これがマイナスだと資金繰りはかなり厳しいと判断しなければならない。設備などの固定資産を短期間に返済しなければならない債務で一部購入していることになる。自家用車購入の話で言えば、自己資金と自動車ローンだけでは足りないので、その不足分を金利が高いカードローンなどで資金調達していることになるからだ。これを比率で考えると次のようになる。
 固定資産÷(自己資本+固定負債)×100=固定長期適合率
この“固定長期適合率”は必ず100%以下になるように常に経営管理(マネジメント)していかねばならない。必ず毎月チェックするべき項目だ。
(3)注意事項
これらの判断を誤らせないためには、流動負債/固定負債の債務区分を正しくする必要がある。特に銀行からの借入金と未払金だ。
①銀行借入は当期に完済するのが短期借入金、それ以上の期間で返済するのが長期借入金だが、長期借入金も毎月の返済額はある。その1年分は流動負債であり、1年以内返済長期借入金」として区分けする必要がある。
②未払金も同様で、その内容に応じて「未払金」と長期未払金に区分けをする必要がある。
※これらのことは税務申告に関係が無いので、意外と指導しない会計事務所も多いので要注意だ

このように会計は税務申告のためだけでなく、経営にも活かせるようにしようとすると正しい仕訳をしなければならない。すれば、月次B/Sで自社の経営を管理することができ、厳しい経営環境の中でも生き抜くことが出来る。