148.会計識字力 資金を読む⑤

2014年1月8日

第25話 資金の読み方(5)
キャッシュフロー計算書は ①営業活動 ②投資活動 ③財務活動 の3つに分けて、現金及び現金同等物の増減額を説明していると前回で説明した。今回はその読み方だ。

2.キャッシュフロー計算書の読み方
(1)営業活動によるキャッシュフローの読み方
営業活動によるキャッシュフローとは、言い換えれば「売買活動による現預金収支」ということになる。これは必ずプラス(+)にし・な・け・れ・ば・な・ら・な・い。仕入して販売するのだから当然のことだ。この理屈はわかると思うが、現実にはこれがマイナス(-)になっている企業が数多くある。これでは『現預金持ち出し営業』である。では、なぜそうなることが起こるのだろうか?
①営業収支が赤字
これは一番最初の「税引前当期純利益」のところにマイナス表示で数字が表示されている場合だ。つまり、売上より仕入・経費のほうが多いと読む。
②売れたけれど売掛金回収ができていない
これは「売上債権の増減額」のところにマイナス表示で数字が表示されている場合だ。計算上の利益は出ているのかもわからないが、肝心のお金の回収ができていないと読む。これでは絵に描いた売上ということになる。
③在庫が増えている
これは「棚卸資産の増減額」のところにマイナス表示で数字が表示されている場合だ。在庫はモノだが、お金がかかっている。在庫が増えたということは、それだけお金を使ったということだ。
④仕入(金額)が増えた
これは「仕入債務の増減額」のところにマイナス表示で数字が表示されている場合だ。仕入量が増えたのか、仕入単価が上がったのか、それはわからないが、ともかく仕入金額が増えて現預金が減ったということだ。

基本的にこの4つが営業キャッシュを悪くする原因だ。逆を言えば、この4つさえしっかり管理すれば営業キャッシュはプラスにできるということだ。如何に日常のマネジメントが大切か、がわかる。

(2)投資活動によるキャッシュフローの読み方
①投資活動とは固定資産の購入のことだ。企業である以上、「定期的に投資活動によるキャッシュフローがマイナス(-)になることは正常」と言える。その場合は「有形固定資産等の取得による支出」という項目がマイナス表示されているはずだ。ただここでの問題は「いたずらな投資が多い」ということだ。いたずらな投資とは、売れないから新しい設備を導入するとか、単に古くなったから新しい設備と入れ替えるなど、採算を考えない設備投資がということだ。設備投資には必ず資金と金利がかかる。したがって『それらが回収できる計画』を持って設備投資しなければならない。一般的にそこのところが弱い。
②またこれがいつもプラス(+)になっているということは、固定資産を売却しているということになる。つまり、事業が縮小していることを意味する。したがってどこかで食い止めねばならない。この場合は「有形固定資産等の売却による収入」という項目がプラス表示されているはずだ。

ただ問題は固定資産購入の財源だ。以前、説明したように全額とは言わないが、ある程度自己資金で賄いたいものだ。

(3)財務活動によるキャッシュフローの読み方
財務活動とは基本的に金融機関からの借り入れと返済を表わす。したがって、借り入れを起こした事業年度ではプラス(+)になる。逆に借り入れを起こさないで返済している事業年度ではマイナス(-)になる。そのポイントは次のとおりだ。
①借り入れは投資活動とリンクしているか
企業として理想は少なくとも運転資金は自社で賄い、設備投資するときだけは不足分を借り入れするということになる。その意味で財務キャッシュフローのプラスと投資キャッシュフローのマイナスが同期していることが好ましい
②返済はきちんと減っているか
返済額はきちんと1年分減っているか確認すると同時に「現金及び現金同等物期末残高」をチェックしよう。それによって次年度も無理なく借入金返済できるかが事前に判断できる。

次回は資金の読み方の最後、「キャッシュフロー計算書で自社の状況を知る方法」を紹介する。