3.管理会計とは経営管理資料

2009年4月13日

財務会計と管理会計
経営者にとって大切な会計資料には試算表、経営分析表、資金管理表の3種類があると説明しましたが、それとは違う次元の考え方で、会計には「財務会計」と「管理会計」があります。一般的に「会計」と呼ばれているのは財務会計を指します。
財務会計は法的に要求されている会計で、決算書(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)、仕訳帳、元帳があります。決算書はいずれも外部の利害関係者(税務署・株主等)に対する報告書で、その書式は定められており、企業外部者にとってはその企業全体の情報が判れば十分だといわれています。従って、その特性として正確性が大変重要で、記載内容はマクロ的で良いとされています。しかしそれでは企業内部者である経営者にとっては十分ではありませんし、経営に活かすこともできません。そこで「管理会計」という会計があります。
管理会計とは
管理会計とは一口で言えば、「経営に役立つ会計、会計資料」と表現できます。例えば、損益計算書の中に「売上高」という項目があります。財務会計的処理では、極論すれば「売上高」一つで十分です。しかし、経営サイドからいえば、せめて主要商品別に売上高は集計したいところです。また支店がある場合は支店別に売上集計したいところです。そのような考え方から会計処理する方法を管理会計といいます。
管理会計の基本は仕訳細分化から

管理会計資料にはいろいろありますが、さまざまな管理会計資料を作成するための基本は「仕訳の細分化」です。仕訳は細分化してこそ、さまざまな情報を与えてくれます。例えば現金売上では「現金で売った」としか判りませんが、現金A商品売上とすれば「現金でA商品を売った」と商品名が判ります。同様に水道光熱費だと、それが水道料なのか電気代なのかガス代なのか判りませんが、水道光熱費を水道・電気・ガスに分けて集計(科目設定)するとそれが判るようになります。経理事務の合理化と称して合計仕訳や合計入力を勧められたり、「これはそういうものですからこれで良いですよ」なんて会計事務所から言われたことがありませんか。それは前近代的な考え方といわざるを得ません。安穏とした時代には「いかに効率的に会計処理をするか」が命題であったかもわかりませんが、現在のような不確実な時代になると会計の位置付けも大きく変わっています。つまり、会計によって事前に自社の状況を察知し、問題点・課題があれば早急に対応し、また強みがあればその強みを活かし、より強い会社にする必要があります。そうでないと会社は生き残っていけません。管理会計の第一歩は必要に応じた仕訳データの細分化です。だから自社のパソコンで会計処理を行う自計化も必要となるのです。自計化は会計事務所の業務を軽くするために行うものではありません。自計化は自社の情報戦略とこれまでの会計事務所の役割を変えるために行うものです
管理会計のポイントは科目体系を変えないこと
科目体系とは単純に言えば、仕訳データを集計する体系です。これをコロコロ変えると、前月との比較や前年との比較などができなくなります。情報は同じアイテムで集計してこそ、価値が生じてきます。時代の流れが激しい時代ですから、科目体系を見直すことも必要だと思います。しかしながら最小限に止めておくべきです。またより重要なことは、最初の科目体系を決めるときには将来的なことまでも踏まえて慎重に決めることです。いま多くの会計事務所ではそのような観点を持ち合わせていませんから、いい加減に科目体系を決めたり、あるいは税務的な処理に都合がよいことをを考え決めたりする場合があるので注意が必要です。
税務会計は財務会計以前の問題
「税務的な処理」とは税務会計のことです。税務会計とは、財務会計・管理会計とはまったく次元の違う会計で、税法(特に法人税法)の規定に従って税金を楽に計算することを目的にした会計です。財務会計・管理会計を併せて「企業会計」といいますが、企業会計のように貸借対照表・損益計算書の作成や報告を目的としていません。税務調整のために益金算入・不算入、損金算入・不算入がすぐに判ればよいという考え方の会計です。そのためだけの会計指導であり、現在となってはそれだけの会計なんで「古い」と言わざるを得ません。
インプルーブ研究所に参加されている会計事務所は、いずれも経営に役立つ会計の提供を志向されており、「管理会計」による自計化指導をされています。いまの会計事務所からの会計指導に疑問がある場合にはお問い合わせください。
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