166.マーケティング 戦略的価格設定
2014年5月12日
第17話 戦略的な価格設定プライシング
商品やサービスの価格を決めることを価格設定という。通常は製造コストに利益を上乗せするコストプラス法で考えるため、
製造コストが最低価格となる。
しかし、ここでは戦略的な価格設定としての二つのプライシング政策を紹介する。
1.ペネトレーションプライシング(penetration pricing)
「ペネトレーションプライシング」とは、市場シェアを獲得するために、価格設定をコスト以下またはコストとほぼ同等に
抑えることで競合他社の追随を断念させる価格政策である。「市場浸透価格設定」とも言われ、新製品の導入期の価格戦略
の一つでもある。
この考え方は、「販売量が上がるにつれて単位コストが顕著に下がる」という仮定に基づいている。
つまり、経験を積むことによって生産プロセスはより効率的になり、従業員は熟練し、かつ原材料や部品の大量購入が行わ
れるようになることから変動費が低減する(経験曲線効果)。
また同時に、生産量増大に伴って固定費が分散されるようになり、単位当たりの固定費も低減する(規模の経済効果)。
この考え方は前回の「基本戦略マトリックス」でいうところのコストリーダーシップ戦略の一つであり、資金力豊富な企業
が取れるプライシング政策である。
2.スキミングプライシング(skimming pricing)
「スキミングプライシング」とは、新製品の導入期の価格戦略の一つだ。早期の資金回収を目的に、製品ライフサイクルの
初期段階で価格を高く設定するもので、上澄吸収価格設定ともいう。他社が簡単に市場に参入できない場合や高価格を設定
しても需要がある場合などに適用する。
この考え方は前回の「基本戦略マトリックス」でいうところの差別化戦略の一つであり、新規製品を最初に提供した企業が
取れるプライシング政策である。
3.プライシングのための損益計算書
価格設定するためには、製造コストを掴む必要がある。それで初めて、ベネトレーションあるいはスキミングによるプライ
シングが可能となる。
その製造コストをどうやって掴むのか、その資料となるのが「損益計算書」だ。しかし通常の損益計算書は全部原価による
損益計算書なので、商品仕入れや材料仕入れの直接原価に労務費や製造経費などの間接原価を加えて製造コストである売上
原価が計算されている。それでは売上原価の中に固定費が含まれているため、大胆な価格設定はできない。
そこで損益計算書を「変動損益計算書」(一般的な会計事務所では提供してくれない)に組み替える必要がある。
変動損益計算書とは、費用を変動費と固定費に分けた直接原価による損益計算書だ。売上高から変動費を引いたものが限界
利益となり、売上高限界利益率があとの固定費を回収するパワーとなる。限界利益率が高ければ高いほど、大胆な価格設定
が可能となり、会社の競争力を高める。
ぜひ、自社の競争力を高めるためにも、変動損益計算書で月々の損益は管理したいものだ。