199.覚えなくとも読める財表-2

2014年12月8日

「財務諸表は難しい」と思われている経営者が多いようです。

たしかに、財務諸表である『試算表』や『決算書』には、難しい用語が使われてはいますが、
それに惑わされず、要領さえ掴めば、かんたんなものなのです。

なぜなら、財務諸表を作成するにあたってしていることは、
①いろいろな取引を分類して(仕訳といいます)
②それを足し算・引き算で集計して
③一定の順番で並べている
だけ、なのですから。それをさも難しいように、あるいは専門的なようなものに見せているだけなのです。

そこで、今回から、そんなプロセスで作成された『財務諸表』を、かんたんに読める方法『覚えなくとも読める財務諸表』
紹介していきます。

とはいえ、『財務諸表』を読むためには、チョッとした「基本的な知識」が必要です。
最初はその基本的な知識から紹介しましょう。

 

第1回 覚えなくとも読める財務諸表 -基本知識-

 

1.財務諸表の構造を理解しましょう

財務諸表は『貸借対照表』と呼ばれるB/Sと、『損益計算書』と呼ばれるP/Lから成り立っています。

(1)B/S

①B/Sは『総資産』と『総資本』からなります。 (お手元に財務諸表があれば、確認してみてください)

②『総資本』は、会社で使っているおカネの出所を示しています。 (買掛金や借入金・資本金などです)
-1.『負債』は借金です。だから「他人資本」ともいいます。
-2.『純資産』は資本金とこれまで事業で貯めてきた利益です。だから「自己資本」ともいいます。

③『総資産』は会社の財産、資金の運用を示しています。 (現金、預金、売掛金、機械、建物、土地などです)
-1.『流動資産』は1年以内に現預金になるような財産です。
-2.『固定資産』は機械や自動車、建物や土地、何年間も使う財産です。売却しないかぎり現預金にはなりません。

④この『総資産』と『総資本』で、B/Sは「会社の財政状況」を表します。
-1.『総資産』は見えているもの、『総資本』はその財源ともいえます。
 同じ建物でも『総資本』でみると、他人資本で建てられた建物か、自己資本で建てられた建物かがわかります。
-2.あるいは『総資産』と『総資本』は、表舞台と裏舞台みたいな関係ともいえます。
 立派に派手に見える舞台も、裏に回れば、きちんとした整然としている舞台裏もあれば、
 ぐちゃぐちゃになっている雑な舞台裏もあります。

B/Sが読めるようになると、自社も他社についても、表面的ではなく、裏側からも理解できるようになります。

 

1-2.P/L

①P/Lは『収益』と『費用』とその差額の『利益』からなります。 (かんたんにいえば、売上と費用と儲けです)

②『収益』とは、「売上高」のことです。
 正確にいえば、受取利息や雑収入なども含みますが、それは余裕あれば理解してください。

③『費用』とは「売上原価」と「販売費および一般管理費(略:販管費)」と「支払利息」に分けられます。

④『売上原価』とは「商品を仕入れたり作ったりするためにかかった費用」のことです。

⑤『販売費および一般管理費』とは「商品を販売するためにかかった費用」のことです。

⑥『支払利息』とは「おカネを調達するためにかかった費用」ですので、営業外として区別します。

⑦この『収益』と『費用』で、P/Lは「会社の営業成績」を表します。
-1.「売上」から「売上原価」を引いたものが『売上総利益』
-2.「売上総利益」から「販管費」を引いたものが『営業利益』 (販管費のほうが多ければ『営業損失』)
-3.「営業利益」から「営業外損益」(利息と金利)を差し引きしたものが『経常利益』です。 (赤字であれば『経常損失』)

会社の営業成績はこの「3つの利益」で表わします
『売上総利益』は業種によってハンディキャップ(違い)がありますが、
『営業利益』と『経常利益』は業種によるハンディキャップ(違い)は
ありません。
営業利益と経常利益は、毎年の経営者としての成績・通信簿です。

 

この程度を、予備知識として理解しておけば、『財務諸表』が読めるようになります。
不思議なことに、一旦、読め出すとさらに深く読めることができます。 従って、この程度から始めましょう。