203.覚えなくとも読める財表-6
2015年1月12日
第5回 覚えなくとも読める財務諸表 -売掛金の読み方-
今回は売掛金の読み方です。
売掛金とは『売上債権』または『営業債権』の一つです。ですから手形を扱っている会社の場合は『受取手形』を含めて考えていただいてもかまいません。
しかしアドバイスを一つ言うならば、手形は極力使わないようされたほうが良いと思います。
なぜなら、売掛金が受取手形になったところで未回収であることには変わりはありません。またその間にその得意先で何が起こるかわかりません。であれば、分割回収でも変更し、少しでも早く現預金回収化できることを相手方と協議すべきです。
では、売掛金をどう読めばよいのでしょうか。
ヒントは何度もいいますが「日常の生活感覚で判断するればよい」という言葉です。 会社だから、事業だからといって特別なことはありません。それが私たちの商売です。 家計感覚でダメなものは商売でもダメなのです。
日常の生活でも、たとえ「返す、返す」と言われて、貸したお金がどんどん溜まるようでは困りますよね。 商売も同じです。
翌月支払で販売したのであれば、翌月に回収しなければなりません。
ここで一般的な尺度を2つご紹介しましょう。
1.平均日商と比べる
平均日商とは、1日の平均売上です。その何日分の売掛金あるいは売上債権があるかによって、自社の回収度がわかります。
何日分の売掛金あるいは売上債権があって良いのか悪いのかは、それぞれ会社の約定によって違います。
あなたの会社の約定が「原則、翌月回収」であるのであれば、30日分前後の売掛金あるいは売上債権しかあってはいけないことになります。それが50日分も60日分もあれば、売上債権が多くあると喜んでいる場合ではなく、回収が滞っていることになります。現金商売でなければ、基本的には売上高1ヶ月分程度の売掛金あるいは売上債権であれば回収状況は適正という評価になります。
なお、売掛金を滞留させない方法はカンタンです。期日になっても入金がなければ直ちに連絡をするということです。そしてあらためて約束した期日に入金がなければ、また直ちに連絡するということです。
たったこれだけのことで繰り返すことでほとんどの場合、売掛金は回収できます。
経営分析ではこのことを『売掛金回転期間又は日数』あるいは『売上債権回転期間又は日数』と呼んだりしています。
2.買掛金あるいは支払債務と比べる
売掛金と買掛金、売上債権と支払債務を比べることによってバランスがわかります。
売掛金、売上債権とはツケで売った販売商品です。買掛金、支払債務とは逆にツケで買った仕入商品です。
基本的には100%前後であれば問題ありませんが、ひどくバランスが悪い場合には確認が必要です。
例えば、売掛金、売上債権が異常に多い場合は、高付加価値商品の場合を除けば、支払条件に対して回収条件が悪いのかもわかりません。逆に、売掛金、売上債権が異常に少ない場合は、現金販売の場合を除けば、売れていないあるいは仕入れが多すぎることを示しているのかもわかりません。いずれにせよ、「チェックせよ」というサインが点灯していることを示しています。
経営分析ではこのことを『売掛仕入比率』とか『売上債権対仕入債務比率』と呼んだりしています。
このように売掛金を見れば、結果として資金繰りの悪化を未然に防ぐことにつながります。 他社と比べたり(TKCの事務所であればできます)、過去と比べたりして、自社の現況を判断することも大切ですが、 一番重要なことは経営者として『自社の指標』を持ち、常にそれを目指してインプルーブ(改善)することです。