207.覚えなくとも読める財表-10
2015年2月8日
第9回 覚えなくとも読める財務諸表 -純資産の読み方-
純資産とは自己資本のことです。
家計で言えば正味の自己財産です。例えば、外見上、広い土地に立派な持ち家風の住宅に住んでおり、自家用車も外車、生活も派手な人であっても、その人は自己財産を持っているとは限りません。ひょっとして、そのほとんどが借金で成り立っているのかもわかりません。
会社も同様です。立派な自社ビルに、多くの車両等があっても、その会社の財源は火の車かもわかりません。それを示すのが純資産なのです。
純資産には資本金の他に、資本準備金や利益準備金など数多くの勘定科目がありますが、私たち中小企業においての純資産は資本金と繰越利益剰余金だけです。自社ビルや車両等の資金の出どころが純資産であれば自社のものですが、そうではなく借入金であれば毎月相当の金額を返済していかねばなりません。
では、そんな純資産をどのように見ればよいのでしょうか。
1.純資産と資本金を比べる
まずもっとも基本的な見方は純資産が資本金よりも大きくなっているか、ということです。つまり、繰越利益剰余金があるかということです。これがいままでのあなたのビジネスの成果です。
もしあなたが資本金300万円で始めて、純資産が500万円あるのであれば、ともかく事業は成功してきたといえます。それに対して純資産が100万円になっているとか、あるいは赤字(このことを債務超過といいます)であれば、これまでの事業は成功していないということを示しています。うちはそんなことはないとお思われるかもしれませんが、いま実に7割の中小企業はそのような状況となっています。ですからまずは「純資産」をみてください。これがあなたのこれまでの商売の成績です。
ではどの程度の純資産になっていれば成功といえるのでしょうか。
それは 資本金+(資本金×10%×n)という式で求められます。nとは事業年度を表します。たとえば、資本金300万円で仕事を始め、8年経っているのであれば、純資産は540万円程度にはしておきたいところです。
2.純資産と総資本を比べる
総資本とはもうお分かりだと思いますが、会社で運用している資金の総額です。
その総資本と純資産を比べることで自己資本の割合が確認できます。せめて会社で運用している資金の半分くらいは自己資本で賄いたいものです。そのような会社は現実には少ないと思いますが、だからこそ目標として50%程度は持ちたいものです。
しかし家計であったなら、もっと思いませんか?家計で運用しているお金の半分が借金であったなら大変だと思われるはずです。
何度も言うようですが、会社も家計も同じです。
3.純資産と固定資産を比べる
固定資産とは事業にとって基盤となるものです。従って長く使用します。できるなら、そんな固定資産はすべて純資産で賄いたいものです。
家計で言えば、一番の固定資産は住宅です。なかなか大変なことですが、住宅ローンがなければ生活にかなりゆとりが生まれてきますよね。事業だって同じです。固定資産がすべて純資産で取得できていれば、事業にゆとりが生じるようになります。
したがって、固定資産と純資産を比較し、状況を把握することは大切です。
純資産はこれまであまり顧みられるものではなかったかもしれませんが、実はこれを見れば、ひと目で、これまでの事業評価をすることができます。あなたの事業はどうでしょうか? もし、純資産が資本金よりもあまり増えていない場合は、会計という羅針盤で経営状況を改善していきましょう。